顧客情報を分析し、最適な情報を発信

(株)サンルートホテルシステム

予約システムとホームページをドッキング

 国内84店、海外7店、合わせて91店のホテルを展開する(株)サンルートホテルシステムは、97年12月からインターネットのホームページ上での宿泊予約受付を開始した。
 日常的にパソコンを使用するビジネスマンを主なターゲットとするホテルの予約にはインターネットが適していると言われ、成果が上がっている事例も多いようだが、これはほとんどがE-mailのやり取りによるもの。折り返し連絡することで、いたずらなどのリスクを避けるためだ。希望を申し入れてから予約が確定するまでには数時間、あるいは半日ほどのタイムラグがあるのが普通である。
 ホームページでの予約受付実施に当たって、同社ではリスクを最小限にとどめるために、予約を3カ月先まで、3連泊までに限定した。その上で、全91店、1万2,000室のうちの約10%に当たる約1,300室の予約状況、利用料金、各店の外観や施設、地図、周辺情報などをホームページで公開。利用者が自由に情報を検索し、納得のいくまで検討して、その場で予約のエントリーができる環境を整えた。91店のうち直営は9店、残りの82店はFCで運営されており、予約状況が公開されているのは、本部に予約獲得を任された、いわゆる“預かり部屋”。空室が少なくなると、本部が各店と連絡をとり、空室を提供するように要請する。
 同社ではこれに先立って、本部やそれぞれのホテルから全店の空室情報を把握できる予約システム「サンネット」を構築しており、ホームページでの予約にも同じ情報が活用されている。予約は各店のほかに、東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、福岡の6カ所の予約センターで平日の午前9時30分から午後6時まで受け付けている。ホームページを利用するメリットは、休日や夜間にかかわらず、いつでも全国のホテル情報にアクセスできることと、より詳細な情報を得られること。たとえば同じシングルでも仕様や料金の異なるタイプの客室がある場合には、その違いを表や写真で確認して、最も希望に合った部屋を選ぶことができる。
 現在、ホームページによる予約は月間約400件で、1件当たり平均1.3泊。予約全体に占める比率はまだ低いが、利用件数は順調に伸びている。

ホームページで自由に情報を検索し、その場で予約も行える
ホームページで自由に情報を検索し、その場で予約も行える

ホームページで自由に情報を検索し、その場で予約を行える

18万人の会員とリレーションを結ぶ「サンルートクラブ」

 一方同社では、96年8月、顧客組織である「サンルートクラブ」の見直しを図り、クラブ運営専門の子会社、(株)サンルートコミュニケーションズを設立して、顧客とのリレーションシップ強化に努めている。
 会員特典として、従来から提供してきた客室料金10%割引に加え、ポイントシステムを導入。客室やレストランの利用100円ごとに1ポイントを付加し、1,000ポイントで5,000円、1,500ポイントで1万円、2,000ポイントで1万5,000円分のホテル利用券をプレゼントする。利用券との引き換えを希望する場合には、各店の端末でポイントを精算。この情報が(株)サンルートコミュニケーションズのホスト・コンピュータに送られ、数日以内に本部から会員に、情報誌や利用した店舗のイベント案内などとともに利用券が郵送される。
 スタート当初は1,000ポイントを獲得した時点でポイントを精算する会員が多かったが、現在では2,000ポイントまで貯める会員が増えており、期待通りの販促効果が上がっていると同社では評価している。すでに過去4回行ってきた会員獲得キャンペーンの成果もあって、現在の会員数は約18万2,500人。1日平均約20人が、ポイントを利用券に引き換えているという。入会金は1,000円。有効期間は2年間で更新ごとに500円がかかるが、それまでに貯めたポイントはそのまま持ち越せる。
 会員特典はこのほか、JASの国内線やゴルフ場、スキー場での割引サービス、チェックインからチェックアウトまでの事故に対する障害保険などさまざま。また、各店は会員専用の客室を設け、優先予約を実施している。この予約はホームページでもOK。会員番号をパスワードにして、会員専用客室情報にアクセスすることができる。障害保険などは本人のみにしか適用されないが、家族や友人同士でのカードの貸し借りは基本的に自由だ。
 ホームページ上でも「サンルートクラブ」の案内を行っており、入会予約も受け付けている。客室の予約と同時に入会予約をしておけば、宿泊の際にホテルのフロントで即、会員カードが発行され、初回から会員料金で利用できる仕組みだ。
 会員データベースには住所、氏名、電話番号などのほかに利用歴が蓄積されているが、同社ではこの情報を分析し、マーケティングに生かしている。「サンルートクラブ」会員の男女比は約8:2。20?50代のビジネスマンが中心だが、会員属性を分析したところ、20代の女性も約5%いることがわかった。そこで同社ではこの春、30店と連携をとり、女性と家族連れに的を定めた「夏休みファミリー3名宿泊プラン」を企画。ツインとシングルを抱き合わせた特別料金をセールス・ポイントに、新しい顧客層の開拓を狙っている。
 会員のデータは、ホテル単位で企画する催し物の案内などにも活用される。たとえばあるホテルがファミリー向けのイベントを企画すれば、その地域に住む、小さな子どもがいる可能性が高い30?40代の会員をセグメントして、ダイレクトメールを発送するといった具合だ。
 各店がつかんだ顧客の情報を本部が集約して管理・分析し、その顧客に最適な情報を継続的に発信することで、“サンルート”のファンを育てていく。各店と本部との連携を深め、サンルート共通の“顔”や“イメージ”を作り上げていくという点でも、「サンルートクラブ」の役割は大きいと言えるだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年7月号の記事