CTIを活用し、受注業務の効率・効果を追求

OAサプライ用品販売A社

顧客を待たせず、確実に注文をキャッチ

 札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、広島、福岡の全国9カ所に受注センター、およびデリバリー・センターを構え、コピー用紙やトナーなどの販売を行っているA社では、94年にオムロンアルファテック(株)のCTI専用交換機「omnet(オムネット)」を導入し、スムーズな顧客対応を実現している。
 「omnet」を導入したのは9カ所のうち、東京、横浜の2センター。ここで紹介する東京のセンターでは、26人のコミュニケータが平日の午前8時30分から午後6時30分まで、シフトを組んで業務に当たっている。
 「omnet」導入以前の受注業務は、電話を受けたコミュニケータが、まず顧客の社名を聞いてメモし、電話を保留にしてお客様カードを取りに行き、席に戻って注文内容をうかがうという手順で行われていた。このため対応に時間がかかり、とれる電話の数も限られ、結果として受注損失が多く発生していた。また、電話が一斉に鳴るので、件数をこなすコミュニケータとあまり電話をとらないコミュニケータの間に不公平が生じるという問題もあった。
 導入後は、ACD機能によって均等に電話が分配され、また、顧客情報をデータベース化したために、席を立たずに顧客情報を画面に呼び出せるようになり、顧客を待たせず、しかも短時間で受注を完了できる仕組みが整った。
 さらに同社では、注文頻度の高い優良顧客にきめの細かいサービスを提供するために、ユニークなシステムを組んだ。これは、約230社の優良顧客それぞれに専用ダイヤルイン番号を設け、この番号にかかってきた電話を、顧客情報とともにコミュニケータに転送するというもの。つまり「ナンバー・ディスプレイ」の「スクリーン・ポップアップ」と同様の機能を、独自のシステムで実現したわけだ。
 「ナンバー・ディスプレイ」提供開始後は、この方式を同サービスに置き換え、月に1回線当たり900円、合計20万円以上の利用料金がかかっていたダイヤルインを廃止。不要になった料金を顧客に還元しようと、代わりに受注窓口にフリーダイヤルを導入した。しかし同社の顧客は多くの枝番号を持っていたり、交換台を経由して電話を発信する大企業が多いこともあって、通知される電話番号と顧客データベースとのヒット率は25%程度。ヒットしないものは、自社開発の顧客情報検索機能を使い、社名を入力して情報を呼び出す方法で対応している。

“効率”と“パーソナル化”を同時に追求

 東京センターが担当する顧客は、東京都内の約2万5,000社。注文が約600件、問い合わせが約200件、合わせて1日平均800件の電話を効率的に処理しながら、なおかつ個々の顧客にきめ細かなサービスを提供するために、同社ではコミュニケータを担当地区ごとに5グループに分け、さらに顧客ごとに担当者を決めている。
 顧客からの電話はフリーダイヤルの機能によって発信局番ごとに振り分けられ、担当グループにルーティングされる。そのグループの回線がふさがっていれば、次候補のグループに転送される仕組みだ。いつも同じ担当者が電話を受けるわけにはいかないが、事情に精通したコミュニケータに着信する確率は高くなる。請求・入金確認には個別の担当者が当たる。主に入金督促のために行う発信の件数は、1日平均300件である。
 また、コミュニケータが少ない時間帯などには、人数に応じた数を残して回線を閉塞し、電話が鳴りっぱなしになるのを防いでいる。、これはCTIサーバの特殊な応用例と言える。
 受注経路はインバウンドの電話によるものが約40%、FAXが約40%、注文書の郵送によるものが約5%。残りの約15%は、アウトバウンドによる受注や、毎月定期的に納品する契約を取り交わしている顧客の注文だ。同社では単に注文を待つのではなく、この同社サイドからの積極的なアプローチに基づく受注を、現在の15%から、将来は50%にまで拡大したいと考えている。督促業務も含め、今後はアウトバウンドに「omnet」のプレディクティブ・ダイヤリング機能を活用することも検討中。
 また、コミュニケータの教育・評価には、「omnet」の管理ツールが活用されている。がみがみ小言を言わなくとも、集計したデータを見るだけで、コミュニケータは自分の業務成績を理解し、自らスキルアップを図ることができる。同社が評価基準として重視しているのは、受付件数や通話時間よりも、むしろ「離席」や「拒否」を除く「受付可能時間」。1日当たり8時間20分間の拘束時間のうち360分間、1カ月の実働日数20日間で合計6,000分間をボーダーラインに据えている。離席するのも、基本的には自由。ただし、グループ全員が席をはずすことのないよう、CTIのサーバ機能を用い、最後のひとりが離席ボタンを押すとアラームが鳴る仕掛けになっている。
 同社が目指しているのは、“人にやさしい”システムの構築。CTIは、コミュニケータの自己啓発を促し、やる気を引き出すという効果も生んでいるのだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年7月号の記事