業界に先駆けてテレマーケティングを導入

第一勧業銀行

テレマーケティングへの積極的な取り組み

 第一勧業銀行では、業界に先駆けて1994年1月からテレマーケティングを開始。非対面のチャネルにより営業店をサポートすること、顧客のニーズを把握し、疑問や不満を解消することが目的であった。現在では、アウトバウンド業務を行う6カ所のダイレクトマーケティングセンターと、インバウンド業務を行う1カ所のコールセンターを持つ。全国の営業店をサポートする体制を整え、定期預金の満期日やキャンペーンなどの案内、インフォメーション・照会業務のほか、今話題のテレホンバンキングなど、幅広い分野にテレマーケティングを導入。日々、銀行サービスの拡充に努めている。

【アウトバウンド】
営業店主導型マーケティングにより業績をアップ

 第一勧業銀行では1994年1月より営業店のサポートを目的としたアウトバウンド・テレマーケティングを開始した。当初は千葉、柏、長津田、長岡天神の4カ所にダイレクトマーケティングセンターを開設し、平日の午前10時から午後4時まで架電を行っていた。しかし、昼間のみの架電では、独身の勤労者らにアクセスすることが難しい。そこで、1997年9月から、4年間の実績をもとに、平日の昼間は自宅にいないお客様をセグメントし、架電時間を平日の午前10時から夜9時までと、土・日曜日の午前10時から午後4時までに拡大、延長し、テストマーケティングを重ねている。加えて、1998年1月に吹田、同年3月には追浜にダイレクトマーケティングセンターを新設。全国の営業店をサポートする体制を整備した。現在、合計6カ所のダイレクトマーケティングセンターで、約500名のオペレータがアウトバウンド業務に当たっている。
 架電対象は、取引状況に応じてポイントが加算され、各種手数料などの割り引きが受けられるポイントサービス「ハートのエース」ですでに20ポイント以上を獲得しているお客様、および年金受給予定者を中心とした約200万人のお客様。センターでは、各営業店の情報システムから目的に応じてリストアップされる顧客情報をもとに架電を行う。1日の架電件数は約2万7,000件。そのうち実際に通話ができるのは75%に当たる約2万件。オペレータは、端末にポップアップされた顧客情報を見ながらオペレーションを行い、会話の内容や結果を入力していく。これらの履歴はすべて営業店へフィードバックされ、サービス改善や経営方針見直しの判断材料として役立てられている。このような営業店主導型のテレマーケティングにより、それぞれの顧客に応じたきめ細やかなマーケティングが可能となり、業績も上がっている。たとえば、同一属性の顧客で、電話をかけた場合とかけなかった場合とを比べると、定期預金の伸び率に約15%の差が出ているという。また、数値的な効果だけでなく、センターと営業店の連携が密になり、情報の共有化が実現したことも大きい。
 お客様から見れば、営業店の窓口も電話をかけてくるのも同じ第一勧銀である。目的別に担当者が分かれているのは、必ずしも望ましいことではない。そこで今後同行では、アウトバウンドと各種相談、照会業務を行う「ハートダイヤル」のインバウンド業務をシームレスに統合し、架電時に商品の申し込みや諸届けの変更などを受け付けられる、お客様にとって利便性の高い体制を整えていく意向だ。

【テレホンバンキング】
受付体制とサービスの改善で利便性を向上

 同行では、近年のATM化により減少した営業店窓口でのお客様との接点の回復、およびサービス内容の充実と利便性の向上を目的に、1997年10月よりテレホンバンキング・サービス「ハートのテレフォンバンク」を開始。サービス開始後わずか3カ月間で、会員数は5万人を突破した。サービス内容は、残高照会、振込、振替、定期預金入金、振込入金照会、振込・振替依頼照会、商品案内、各種相談、商品資料や申込書の請求受付。営業時間は、平日の午前9時から午後9時までと、土・日曜日の午前9時から午後5時まで。このうち商品案内、各種相談、商品資料や申込書の請求受付には約50名のオペレータが対応。それ以外の資金移動をともなう取り引きには、安全性確保のため自動音声で対応し、残高照会と振込入金照会については自動音声とオペレータによる対応を併用。1カ月の利用件数は約5万件と、全会員が毎月1回利用している計算となり、まずまずのスタートを切った。
 その後、1998年3月末には、新たに定期預金の満期解約、外貨定期預金の新約、都度振込、新規口座開設のメニューを追加し、外為などの専門員による財務相談の24時間受付を開始。商品案内や資料請求についてもオペレータによる24時間の受け付けを可能にした。また、安全性確保のため自動音声のみで受け付けていた振込・振替などの資金移動をともなう取り引きにおいても、オペレータが対応できるようシステムを改善。利用口座コードと9桁の暗証番号から2桁の可変番号で本人であることを確認する仕組みとした。併せて、営業時間も午前6時から深夜2時までに延長。オペレータ数も年金や外為の専門員を含め、約80名に増員した。

各種パンフレットには人気キャラクター「ハローキティ」を起用 各種パンフレットには人気キャラクター「ハローキティ」を起用

各種パンフレットには人気キャラクター「ハローキティ」を起用

望まれる顧客接点のあり方とは

 同行がオペレータによる受付業務、および営業時間の拡大に踏み切ったのは、「人」と話がしたいというお客様からの要望と、お客様に商品やサービスを充分に理解していただいたり、お客様の相談に対応するには「人」による対応が最も望ましいとの判断からである。業務を機械化し、合理性を追求することが、必ずしもサービス向上につながるとは限らない。同行がコストの大きいライブ・オペレーションに力を入れているのは、真の顧客サービス、望まれる顧客接点のあり方を考えた結果であると言えよう。
 受付時間の延長に当たっては、新聞広告と店頭案内のみで告知を行ったが、振込・振替の午後10時以降の利用が予想以上に多かった。そこで、今後の状況に応じて、深夜2時以降の受け付けも検討していきたいとしている。ちなみに、自動音声による各種サービスの操作方法、受付時間は両者ともに従来通りである。
 現在の会員数は約7万件。1カ月の利用件数も約7万件だという。このように、会員数と利用件数が比例して伸びている例は他行には見ることができない。この理由について同行では、来店して窓口を利用したお客様など、ニーズが高いと思われるお客様に重点的に利用を勧めているためと見ている。新サービス開始以降、1日に寄せられる申込件数は約1,300件。この調子で増え続けた場合、年内には30万人まで会員が拡大する見込みだ。つまり、1カ月の利用件数も30万件に増えることが予測できる。
 利用を促進するためには、はじめが肝心だ。初回の利用で、お客様が「面倒だ」「難しい」などマイナスのイメージを持ってしまったら、その後の利用は期待できない。同行では、少なくとも2〜3回利用する間に、これは便利なサービスだとお客様に実感していただけるよう、システムに改善を加えてきた。これも利用件数の伸びに大きく寄与していると考えられる。たとえば、お客様が操作に戸惑った場合、ある一定時間が過ぎると自動的にオペレータにつながり、操作手順を説明できるようにした。さらにその時点からオペレータが取り引きを引き継ぐことも可能になっている。これにより、機械操作が苦手な高齢者などの抵抗感も柔らげることができた。
 これからも同行では、有人による接点を大切にし、より良いサービスが提供できるよう、さらなるサービス内容の充実、システムの改善、および、オペレータの教育に力を入れていく意向である。
 「電話」は、私たちが慣れ親しんできたコミュニケーションツール。同行では、今後もお客様との良い関係を築くために「電話」を活用。お客様を知り、また、お客様に同行を知っていただき、信頼関係を築いていきたいと考えている。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年5月号の記事