センターの品質向上を目指す

住友銀行

ビッグバンへ向けたテレホンバンキングへの取り組み

 金融業界の規制緩和にともない、業種の自由化、商品・価格の自由化などが進み、今まで以上に取扱商品の品揃え、料金、サービスが競われる時代がやってきた。
 銀行業界では日本版金融ビッグバンへの対応策として、テレホンバンキングへの取り組みが開始されている。住友銀行でも昨年、テレホンバンキング・サービスを開始。現在、業界一の会員数を誇っている。

【テレホンバンキング】
さまざまな改善を加え、30万人の会員を獲得

 住友銀行では、お客様との接点の回復、および、銀行機能充実のために、1997年6月より「住友のテレホンバンキング ハローダイレクト」を開始した。「ハローダイレクト」は同行に口座を開設している個人を対象としたテレホンバンキング・サービス。受け付けには、フリーダイヤルを利用している。
 サービスの開始当初、告知は営業店の店頭のみで行っていたが、東京・豊島区のコールセンターの受付体制が整ったところで、本格的なPR活動を開始。まずはじめに、同年11月中旬からはじまった冬のボーナス商戦での定期預金キャンペーンに「ハローダイレクト」を加え、定期預金と「ハローダイレクト」のセット販売を行った。次に、新規口座開設の申込用紙と「ハローダイレクト」の申込用紙を一体化。「ハローダイレクト」の申込欄にまるを付けるだけで申し込みができる「ワンライティング」方式に変更した。さらに、従来は申込後にATMで登録が必要だった2つの暗証番号を、第一暗証については申込用紙へ記入。第二暗証については、センター内にあるホストコンピュータで自動出力し、配達記録郵便で送付するという方法に切り替えた。暗証番号を変更したい時には従来通り、ATMで手続きを行うことができる。これらにより、お客様の負担と営業店窓口の事務負担が軽減、結果、1日に寄せられる申込件数は約5,000件に上るようになり、サービス開始当時に約2万人だった会員数は、1998年1月には約20万人に増加。その後も増え続け、現在では約30万人に達している。この勢いはまだまだ続くものと見られる。
 一方で、サービス内容の充実にも力を入れている。今年1月から外貨預金「ステートメント式外貨口座」の取り扱いと併せて、トラベラーズチェックの販売を開始。2月からは、自動音声による残高照会と都度振込の24時間受付をスタート。残高照会の1日当たりの利用件数は、約1,000件。都度振込へのニーズは非常に高かったと見られ、現在、全体の取り引きの約半分を占めるまでになっている。
 「ハローダイレクト」の利用者は会員数の1〜2割にすぎないのが現状で、1カ月間の利用件数は3万〜4万件ほど。同行では、会員数に比べて利用件数が少ないのは、サービス内容がお客様に十分に理解されていないことが一因であると考え、3月から利用方法を説明するアウトバウンド・コールを開始した。さらに、説明機能を高めるために、自動音声による取り引きの応答フローを改めた。取り引きの途中でお客様が操作に戸惑っていると思われる場合、ある一定の時間が経過したところで、オペレータへ転送。操作手順を一通り説明してから再度、自動音声に戻すという仕組みを取り入れた。

商品説明と申込用紙がセットになった「ハローダイレクト」のパンフレット

商品説明と申込用紙がセットになった「ハローダイレクト」のパンフレット

【アウトバウンド】
利用促進を目的としたアウトバウンド・コールを実施

 「ハローダイレクト」の利用促進を目的としたアウトバウンド・コールは、「ハローダイレクト」のインバウンド業務を担当するオペレータが、コールが比較的少ない時間帯を利用して行ってきた。しかし、それだけでは、申し込んだまま利用していない約26万〜27万人のお客様全員にアクセスするのは難しい。そこで同行では、アウトバウンド業務を専門に行う別のセクションへもコールを振り分けて対処している。これらを合わせ、日中は高年齢層を対象に、夜間、および、土・日曜日は若者を中心に、1日約3,000件の架電を行っている。アウトバウンドではヒット率を高めることが最大の課題であるが、同行では、お客様のライフスタイルに合わせて架電時間帯を変えるといった工夫により、アウトバウンドの効果を最大化するよう努めているわけだ。
 その昔、キャッシュカードが導入された時も、普及には時間がかかった。しかし現在では、口座を持つほぼ全員のお客様がキャッシュカードを利用している。今後、テレホンバンキングがどの銀行でも実施しているごく当たり前のサービスになった時に、利用は大きく拡大するだろう。同行では、今はまず会員数を増やすことに注力し、ベースをしっかり堅めて、市場の成熟を待つ方針である。

さらなるサービス内容の拡充とインフラ整備への取り組み

 同行では、1998年6月から自動音声による振込・振替、出入照会の24時間受付、およびリアルタイム処理を開始する予定だ。また12月には、投資信託の販売を開始するなど、さらなるサービス内容の充実を図っている。
 また、利用促進には、付加価値の提供が不可欠だ。付加価値には、たとえば機械対応の場合は手数料がディスカウントされるような仕組み作りと、振込先が学校であれば、「ご入学ですか。おめでとうございます」といったあたたかい一言を添える人間的な気配りの2種類がある。同行では、オペレータの資質に依存しがちな後者の付加価値についても、OJTをひとつひとつ積み重ねて、マニュアル化していくことを試みている。また、優良顧客の囲い込み策として、クレジットカード会社のゴールドデスクのような専用窓口を設け、たとえば、ファイナンシャルプランナーによる資産運用相談など、特別なサービスを提供することを検討しているという。
 同行では、6月からはじまる自動音声による24時間受付サービスによって、有人窓口へのコール数が減少すると見ている。そこで、アウトバウンド業務で使用しているシステムを改善。5月初旬を目途にインバウンドとアウトバウンドのオペレータ数を業務量に応じてリアルタイムで変更できる体制を整えていく。引き続き、10月には情報系システムとテレホンバンキングシステムを統合。利用率の伸びに応じてオペレータを増員するとともに、顧客データを分析し、それぞれの顧客に応じた提案・アドバイス、お客様の立場に立ったオペレーションの実現を目指している。
 現在同行では「銀行業務はサービス業」であることをオペレータにどのように教え、質の向上を図っていくかという点に重点を置いて、教育に力を注いでいる。日本ではオペレータという職種が高度なスキルを要求される専門職だということが、まだきちんと理解されていないのが現状である。オペレータの質の向上に取り組みながら、一方でフルタイムでの勤務、専門職としての雇用を実現するなど、雇用形態の改善も進めていきたいとしている。
 各行がこぞってテレホンバンキングへの取り組みを開始する中、これからは「センターの品質」が他行との差別化ポイントになるだろう。同行では、「センターの品質」を向上させるための“人”への取り組み、および、インフラ整備に余念がないといったところだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年5月号の記事