クリスマスをまるごと楽しむための夢いっぱいの1冊 Santa Book(サンタブック)

(株)フェリシモ

毎月1回の自分へのプレゼント

 (株)フェリシモの設立は 1965 年。カタログ「はいせんす絵本」を柱に、通信販売を展開している企業だ。同社は通常の通信販売と異なり、毎月 1 回、色やデザインを変えてシリーズの商品を届ける「コレクション」(頒布会)システムを主軸に据えている。カタログには、ひとつの生活風景やコンセプトで提案されているそのシリーズ商品が、有効期限内に届くいくつかのデザイン(商品写真)とともに提示されている。
 顧客は単品ではなく、そのシリーズ商品を注文する。毎月少しずつ商品が届くことによって、顧客自身が「憧れの自分、憧れの生活に近づいていくことを楽しんでもらいたい」(同社 広報室)という気持ちが、コレクションという独自のシステムになっている。その楽しさを、同社では「自分へのプレゼント」「毎月 1 回のサンタクロース」という言葉で表現する。
 「はいせんす絵本」は現在、毎年 3 月と 9 月の発行。それぞれ有効期限は約半年間だ。昨年まで「家庭雑貨編」「ファッション編」「こども編」の 3 分冊だったものを、今年からは「ボディー&ビューティー編」を加えて 4 分冊にした。各 100 万部を発行し、顧客に無料で配布するとともに、全国の書店で 1 冊 500円で販売している。
 同社の中心顧客層は 25 〜 35 歳の女性だが、顧客層は年々広がっている。中には、「はいせんす絵本」の子ども服で育った女性がハイティーンになり、今度は自分のものを自分で選んで購入しているというケースもある。
 今年 3 月に発行された 4 冊の「はいせんす絵本」には合計 2,488 のコレクション・アイテムが掲載されているが、その 95%弱が同社のオリジナル商品。商品開発に携わっているのは、ターゲットと同じ 20 〜 30 代の女性スタッフ。自分がほしいと思い、なおかつフェリシモらしい商品を、とことんこだわって選んでいる。
 “フェリシモらしい”商品とは、「独創性」「事業性」、そして「社会性」があること。この「社会性」は、物品販売の枠を超えてさまざまな試みにつながっている。たとえば世界の森の植林資金に当てるために毎月100円の寄付をする「フェリシモの森基金」や、同じく毎月100円の阪神大震災の被災者への義捐金など。これらもコレクションの1メニューとして、カタログの誌面に紹介されている。

3月と9月、年2回発行の「はいせんす絵本」。真は「生活雑貨編」

3月と9月、年2回発行の「はいせんす絵本」。写真は「生活雑貨編」

1996 年発行の「Santa Book」第10号。“フェリシモらしい”楽しい企画が盛り沢山

1996 年発行の「Santa Book」第10号。“フェリシモらしい”楽しい企画が盛り沢山

ワクワクする気持ちをあなたに

 「毎月 1 回のサンタクロース」のコンセプトを広げ、もっとワクワクできる、皆で楽しめる企画として、同社は 1987 年、「Santa Book」を発刊。1996 年で第 10 号を数えた。
 クリスマスをまるごと楽しむことを提案しよう、と、発刊時には商品を同社のサンタクロースのキャラクターが届けたり、東京タワーをレーザー光線でデコレーションするといった試みも行った。クリスマスというキーワードを通じて、顧客に夢を届けたいという同社の姿勢は現在も引き継がれ、第 10 号では 12 月 25 日をもじった 1,225 本のバラの花束や、イラストレーターの原田治氏のキャラクターをペイントしたダイハツのひとり乗り軽自動車「ミゼット」なども販売した。
 また、クリスマスの持つ社会的意味から、皆が誰かのサンタクロースになれることを提案しようと、 1989 年より「Santa Book」の売り上げの 0.3%をユニセフや WWF をはじめとする各種団体に寄付する「ラブ・タックス」制度を導入。第 10 号からは、その考え方をベースに、ユネスコ本部の協力を得て 21 世紀を担う子どもたちに寄付を行う「フェリシモ・クリスマス基金」を設立。その象徴企画として、ロバート・ラウシェンバーグやポール・サイモン、クリスティ・ターリントンなど、世界各国で活躍中のアーティスト、ミュージシャン、学者などのデザインやメッセージの入ったミニプレートを制作。このプレートの売り上げのうち、実費を除くすべての利益を、その基金とした。
 第 10 号の掲載商品は約 1,200 点で、そのうち約半数がオリジナル商品。クリスマスカラーの雑貨、クリスマスやパーティーのためのファッション・グッズのページや、世界のクリスマスの特集などを掲載した。オリジナルラベルが付いたワインや、手書きメッセージが入るフォトタイルカードなど、パーソナル・オーダーの商品も 10 種類以上用意されている。
 同社のクリスマスに対する思い入れは深く、1991 年、英国のマリア・フォン・スタウファー伯爵夫人からアーカイブス・コレクションを譲り受けた。これはクリスマスカードやツリー、オーナメント、ポスター、書籍など、ヨーロッパを中心とした世界各国から集めた、約 10 万点に上る世界最大のクリスマス・コレクションと言われるもの。1992 年には「クリスマス文化研究所」を設立。1994 年 4 月には、函館に「フェリシモ クリスマス アーカイブス ミュージアム」を開設している。
 「Santa Book」は「日本で一番早くクリスマスを告げる」(同社 広報室)媒体。春から企画を進め、9 月初旬に書店にならぶ。11 月中旬頃まで注文を受け付け、品物はクリスマス・シーズンまでに届ける仕組み。カタログは約 70 万部を発行。書店で 1 冊 500 円で販売するほか、一部顧客に無料で配布する。また、シーズン中は同社のインターネットのホームページに、「Santa Book」の商品の一部を紹介するページが登場する。
 注文は綴じ込みハガキ、電話、FAX と、インターネットで受け付ける。ハガキは受取人払いで、割引適用期間の申込用、別送商品用、パーソナル・オーダーなど特別な記入事項が必要なものには商品別と、何種類ものパターンが用意されている。FAX 注文用紙や、カタログについてのアンケートハガキも綴じ込まれている。ハガキでの注文の場合、一定額以上の申し込みで 500 円の割り引きが受けられるほか、オリジナルプレゼントなどのインセンティブが付いている。受注はハガキが最も多く、次いで電話、FAX、インターネットの順だ。
 電話注文の受付時間は平日の午前 9 時から午後 9 時までと、土曜日の午前 9 時から午後 5 時まで。それ以外の時間帯は留守番電話で対応。ほかに問い合わせ専用の電話窓口があり、こちらは平日の午前 9 時から午後 6 時までと、土曜日の午前 9 時から午後 5 時までの受け付けだ。電話窓口は企業の顔。アウトソーシングは一切考えていないという。
 発刊当初、「Santa Book」はギフトとして利用されることを想定したマーチャンダイジング、サービス設定を行っていた。現在では特にギフト用のサービスは提供していないが、自宅に配送された後にラッピングをし、相手に届けるといった使われ方はかなり多いだろうと同社では見ている。
 クリスマスの準備を整える楽しさ、ギフトを贈る楽しさ、贈られる楽しさ…。「サンタしちゃうウキウキと、サンタされちゃうドキドキ」とイントロダクションのコピーにあるように、「Santa Book」は顧客からその友人へ、顧客が自分自身に、また、同社から顧客へのプレゼントの気持ちがぎっしり詰まったカタログなのだ。

パーソナル・オーダーで“とっておきの贈り物”

 「はいせんす絵本」の発行は春と秋。その間、主に商品お届けの機会を活用して、同社では顧客に毎月、おすすめ商品などを掲載した情報誌を送る。ある時はタブロイド判、ある時は小冊子と、掲載商品だけでなく体裁もバラエティに富んでいる。
 その中のひとつに、アルファベットやオリジナルのメッセージなどを入れられるパーソナル・オーダー商品ばかりを掲載した「とっておきの贈り物カタログ」がある。昨年秋に引き続いて発行し、目下注文受付中の VOL.2 は、A4 判 16 ページ。22 点の商品を掲載している。これまで「Santa Book」で紹介してきた商品にアレンジを加え、バラエティを広げてギフトとして提案しているもので、届け先の指定は自由。母の日・父の日のギフト用としても、同様の企画を展開している。
 自分のほしいものを、相手にも贈りたい。「幸せ社会の創造」を企業理念に掲げる同社は、贈り、贈られる楽しさや喜びを、さまざまな商品やサービスに託して顧客に贈り続けている。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年4月号の記事