生活者とビジネス、それぞれの需要に対応するフリーダイヤル

(株)日立製作所

 (株)目立製作所では情報メディア事業本部内に 「目立お買物相談センター」を設け、フリーダイヤルでパソコンを除く家電製品に関する相談に対応している。
 お買物相談センター設立以前には、全国 8カ所のお客様相談センターで各販売地域ごとに相談を受け付けていたが、ここでの業務目的はあくまでも個別の問題解決。生活者のニーズを把握してマーケテイング戦略に反映させるという側面での相談窓口設置が望まれていた。
 センターが設立された 1988年当時は、まだフリーダイヤルの認知度が低く、電話料金をわざわざ企業側が負担して相談を受けるということについて、社内でもさまざまな議論があった。しかしふたを開けてみればフリーダイヤル導入の効果は上々。一般生活者向けの「お買物相談センター」発足の3年後に当たる 1991 年には、ビジネス・ユースに対応したフリーダイヤル「家電ビジネス情報センター」を設置している。

一般生活者向けの 「お買物相談センター」 、ビジネス・ユースに対応した「家電ビジネス情報センター」の2 つのフリーダイヤル窓口を設置

一般生活者向けの 「お買物相談センター」 、ビジネス・ユースに対応した「家電ビジネス情報センター」の2 つのフリーダイヤル窓口を設置

 ビジネス・ユースに対応する「家電ビジネス情報センター」 では、家電製品の寸法図や性能特性の算出、見積書の作成など、技術的側面から企業の担当者を全面的にサポート。この相談を機に大口の取引に結び付くケースが多いため、スタッフには営業センスも要求される。電話による問い合わせが中心だが、 FAXによる相談も全体の 15 %ほどに上っている。現在、 5 台のワークステーションで、月に約 2,000件の相談に応じている。
 一方、一般生活者に対応する「お買物相談センター」では、女性オペレーター(テレコミュニケーター) 16名と、全国の各工場から派遣された男性スタッフ、 SEを合わせて総勢35 名が業務に当たっている。ワークステーション 38台、フリーダイヤル 12 回線をフル稼働し、特にコール数の多い夏には月に約2 万件の相談に応じる。
 受付時間は月~土曜日の午前9 時から午後5 時半まで。 1995年 10 月から日曜日と祭日の受付業務を取りやめたが、修理など急を要する用件は販売店などで解決できるため、特に問題にはなっていないという。
 1 日のうちコールが集中するのは、午前9 時過ぎの始業直後、昼休み、そして午後4 時以降の時間帯である 。同社では、およそ 450点を数える家電製品に関する相談をひとつのフリーダイヤル番号で受け付けているが、コンピュータに商品情報を蓄積し、これを随時検索することで、正確・迅速な対応を実現している。
 相談内容も各オペレーターがその場でコンピュータ端末に入力するシステムだ。なお、フリーダイヤル番号は、新聞、雑誌に掲載される広告や、カタログ、パンフレットで告知している 。
 一般生活者から寄せられる相談は電話によるものがおよそ 98%、残りが郵便や FAXといった構成比になっている。約半数が購入前相談であるが、その内容は、商品カタログ請求、機種選択に関する相談、最寄りの販売店の紹介が中心である。
 購入後相談では、量販店などで詳しい説明を受けずに商品を購入するケースが増えているため、商品の設置方法や据付方法についての問い合わせが目立っているという。例えば、「BS 衛星放送アンテナを購入したが、いざ取り付けようと思うとアンテナの設置角度がわからない」といったことである。この情報が事業部ごとに設けている取扱説明書向上委員会にフィードバックされ、協議された結果、テレビ、ビデオなどの取扱説明書に「ご自分で設置するには」という項目が加えられることになった。
 商品別では洗濯機に関する相談が最も多く、次いでテレビ、ビデオ、冷蔵庫の順になっている。
 相談者は男性40%、女性60%となっており、年齢は商品ごとにバラつきがあるものの、全体ではほぼ平均している。最近はシルバ一層や男性からの問い合わせが増加している。
 「最近のお客様は、豊富な商品知識をお持ちのようだ」と情報メディア事業本部・お買物相談センター副センター長・氏家伸治氏は言う。これも企業側の努力によって、商品情報が生活者に浸透してきたためだろう。
 相談内容は、受け付け翌日の午前中にはコンピュータ集計され、関連する事業部に報告される。さらにこれらの相談内容は、月ごとにレポートにまとめられ、全国 100 ケ所以上の関連部署、工場などの関連機関へ送られると同時に、幹部会にも報告される。特に、新商品やキャンペーン商品、その時々の事案(例えばPL法など)については、より迅速に重点的に検討がなされる。
 ①スピーディー(待たせない)、②正確、③親切がお買物相談センターの基本姿勢。スタッフは新製品発表など折あるごとに勉強会を開き、商品知識の会得、スキルの向上に努めている。また、新人は 180時間の研修を終了しなければ、相談の電話に出ることができない。
 「PL法施行後も業務内容に特別の変化はなかった」(氏家氏)という言葉に、同社の 8年の実績と自信がのぞく。


月刊『アイ・エム・プレス』1996年6月号の記事