ユーザーの利便性をアップする通信販売の展開で文具店を活性化

プラス(株)

 文具・オフィス家具メーカーのプラス(株)は、1993年3月に文具店と共同でカタログ通信販売事業「ASKUL (アスクル)」をスタートした。事業名の由来は「明日来る」。その名のとおりオフィス用品を注文の翌日に届けるという、ユーザーにとっては便利なサービスである。
 酒販店同様、文具店の数は大幅に減少している。とはいえ、メーカーにとっては文具店ルートでの販売が売り上げの大部分を占めていることに変わりはなく、いかにその営業を支援していくかが課題となっていた。そこで同社は文具店と共同で、新事業「ASKUL」を開始したわけである。
 同社の製品を扱っている文具店は全国に約1万5,000店。このうち約2,000店が同事業に参加している。これら 2,000店が開拓したユーザーのデータを同社のコンピュータに登録し、同社から直接カタログを送付、注文・問い合わせ、商品配送が同社とユーザーの間で直接行われる。しかしユーザーはあくまでも「文具店の顧客」として位置付けられており、請求書は同社から文具店名で、ユーザーへ送られ、文具店経由で決済業務が行われている。
 カタログ『ASKUL』に掲載されているのはおよそ1,600アイテム。ユーザーの使い勝手の良さを優先した結果、自社商品に加えて競合他社の文具、またお茶やゴミ袋など文具用品以外の商品も多数取り扱っている。注文はペン1本でもOKだが、 3,000円以上注文すると送料が無料となるため、一定量をまとめて注文するケースが大半。ユーザー数は当初見込みを大きく上回る 7万3,000社に上っている。

文具以外のアイテムも豊富に品揃え

文具以外のアイテムも豊富に品揃え

 文具店の外商が出入りしている大手企業は別として、中小企業の多くは文具の購入に不便を感じている。買い物に行く手間や時間、そして購入の度に発生する出納事務の手間は結構面倒なものなのだ。
 「ASKUL」は、文具店の支援事業であると同時に、こうした中小企業の潜在ニーズにうまく合致したサービスであったといえる。
 オーダーの方法はいたって簡単。カタログに同封されている FAXシートに注文内容を記入して、 ASKUL事業部のフリー ダイヤルFAXに送信するだけだ。受け付けたFAXシートはFAX-OCRで読みとられ、ホストコンピュータから自動的に物流センターに送られる。午後1時までの受注については、翌営業日に宅配便で商品を届けている 。
 カタログは年2回の発行だが、月に一度、FAXで「お買い得キャンベーン」の案内を送っているほか、年に 1 回アンケートシートを送り、掲載商品の品揃えや価格などについての意見を収集している 。


月刊『アイ・エム・プレス』1996年2月号の記事