事業者を対象としたカタログ通信販売には、メーカーが小売店支援を目的に行っているものもある。
(株)サントリーショッピングクラブ(サントリー SC)は個人消費者を対象とする通信販売の展開で知られているが、その前身はサントリーグループ初の販売促進支援企業、(株)洋酒サービスであり、酒販店向け通販業務の営業権を引き継ぐかたちで 1979年IO月に設立された。
現在、酒販店は全国に約 13万軒あるといわれているが、同社ではこのうち約7万軒に対して、カタログ『リカーショップガイド』を年2回、ダイレクトメールを年6回送付。この7万軒は、親会社であるサントリーが全国 13万軒の酒販店に送付している
『月刊リカーショップ』という情報誌にサントリー SCが通信販売広告を出稿し、反応を得た顧客だ。取扱商品は店頭装飾品やノベルティ、包装用品、営業用備品など酒販店営業に欠かせない商品のほか、酒販店にとっての大口顧客である料飲店向けグラス・器具類にも及んでいる。
『リカーショップガイド』の注文件数は、年間延べ10万件に上るという。これは、取扱商品の中に包装用品などの消耗品が多くリピート・オーダーを獲得しやすいことに加え、「サントリー」というメーカーが築いてきた販売店との信頼関係がベースにあるためといえよう。
しかしご存じのとおり、酒販店を取り巻く状況は年々厳しいものとなってきている。消費の最大のインパクトが「安さ」であるこの時代に、価格破壊は酒の世界とも無関係ではなかった。デイスカウンターの台頭、規制緩和などが、街の酒販店の存在そのものを脅かしているのである。
こうした苦境を受けて、同社の酒販店向け通販の売り上げは2期連続で前年を割り込み(95年度見込み・20億8,000万円)、通販事業部全体の売り上げに占める比率も年々低下し、 50%を割り込む結果となった。
近い将来、その数が半分にまで減少するとすらいわれる酒販店を対象としたビジネスである以上、拡大が見込めないのはいたしかたない。ただ「酒販店の営業支援」はグループ全体としての命題であることには変わりないわけで、今後は商品というハードに加え、経営改善の方策といったソフトの提供を一層強化していくとしている。
この一環として、95年秋からアップ・トゥ・デートな情報提供を目的に「リカーショップFAX ネット」サービスを開始、新たなインターフェースとして機能させることを目指している。
料飲店向けのグラスなども扱っている
また BtoB通販の新たなターゲットとして考えられているのは、「酒」というラインでつながる料飲店。例えば、これまで扱ってきたグラス・器具類に加えて、料飲店に必要な業務用品を幅広く取り揃え、同社が直接、料飲店に向けてカタログ販売を行うといった事業だ。もちろん、酒販店が希望する場合は、その店を通して販売を行うというように、酒販店の領域を侵さず、むしろバックアップしていけるような策を講じたいとしている。