コンタクトセンター最前線(第149回): CSマインドに基づいた構造改革で応対の効率と品質の向上を実現

スカパーJSAT(株)

有料多チャンネル放送「スカパー!」に関する問い合わせや各種手続きの受付業務などを担うスカパー!カスタマーセンターでは、“お客さまの快適なスカパー!ライフをサポートする”をミッションに掲げ、大規模な構造改革に乗り出した。複雑だった窓口を集約するとともにCSRのスキル体系を見直し、応対における効率と品質の向上を追求した結果、一定の効果を上げることに成功した。2014年度は、センター運営の中心に顧客満足を据え、顧客との真の関係を築くコミュニケーションづくりの年とすることを基本方針に掲げている。

CSマインドに基づきカスタマーセンターの構造改革に乗り出す

 日本で唯一、アジア最大の有料多チャンネル放送・衛星通信事業者であるスカパーJSAT(株)(以下、SJC)。SJCは、(株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズとJSAT(株)、そして宇宙通信(株)という国内における通信と放送の分野のパイオニアたちがひとつになって2008年10月に誕生し、現在、有料多チャンネル放送の「スカパー!」を展開する有料多チャンネル事業と、そのバックボーンにあるアジア最大の16機の通信衛星を保有する宇宙・衛星事業の2つの事業を展開している。
 今回紹介するスカパー! カスタマーセンター(以下、カスタマーセンター)は、有料多チャンネル放送「ススカパー!」と370万5, 900世帯(2013年12月末)の視聴者、および一般のお客さまを結ぶ総合窓口である。カスタマーセンターは、「スカパー!」の前身である「PerfecTV!」のサービス放送開始に先駆け、1996年4月に開設された仮設コールセンターからスタート。以降、有料放送の開始、通信環境の変化、「スカパー! e2」「スカパー!光」といったサービスの追加に応じて、さらにはリテンションとアクイジションの別に窓口の開設・移設・増床を行ってきたという経緯から、窓口が複雑でわかりにくく、かつワンストップで用件を解決することができないという状況が多発。加えて、有料多チャンネル放送の創世記は加入に関する問い合わせや加入申込への対応が中心だったことから、事務処理センターとしての意味合いが強く、CSマインドの醸成を課題として認識していた。こうした状況下で、視聴者および一般のお客さまのニーズや期待に応えることは難しい。そこでカスタマーセンターでは、CSマインドに基づき“お客さまの快適なスカパー!ライフをサポートする”をミッションに掲げるとともに行動指針を定め(図表1)、2012年に大規模な構造改革に着手。複雑だった電話による受付窓口の集約とCSR(Customer Service Representatives)のスキル体系の見直しに取り組み、カスタマーセンター運営の両輪である効率と品質の向上を追求している。

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スキル体系を見直してCSRのマルチスキル化を推進

 カスタマーセンターの構造改革で特に注目したのが、CSRのスキル体系の見直しである。具体的には、従前はサービス別、業務別、キャンペーン別などにより膨大な数に上っていたスキルを整理し、主要なコールを入電動機と難易度で3つのClassに分類。Class1はチャンネル変更とお試し体験の受け付けから本登録までのフォローコール、Class2は住所や電話番号などの顧客基本情報の変更受付、Class3は料金滞納者への相談とし、Class1から3までの業務を担当するCSRたちを共同で使用する、負担する、出資するという意味から、プーリング・チームと名付けた。また、入電件数は少ないが対応に専門知識を要するアンテナなどの機器、光サービス、ハイビジョン放送への移行に関する問い合わせや、長期契約者を対象としたサンキューコールと1チャンネル無料視聴キャンペーンDMのフォローコールなどを行うロイヤルティプログラムについては別チームを作り、専任のCSRが対応に当たることとした(図表2)。

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 CSRの研修体系もこれに沿ったかたちに改めた。最も難易度の低いClass1のチャンネル変更からスタートし、次にお試し体験から本登録までのフォローコール、続いてClass2、Class3の順にステップアップしていくことで、無理なく着実にマルチスキルCSRへと成長していく仕組みとしている。プーリング・チームのClass別CSRの割合は、Class1が21.8 %、Class2が17.1%、Class3が61.1%で、Class1から3の全スキルを備えたCSRが約7割に達しており、CSRのマルチスキル化が着実に進んでいることがうかがえる。
 CSRの評価指標となるKPIも、図表1の行動指針に沿って再検討。実質稼動時間、平均応答時間、お試し体験受付率、本登録受付率など計19項目を設定し、常にチェックしながら改善を繰り返しているという。
 スキル体系のシンプル化と、CSRのマルチスキル化によって得られる効果は非常に大きい。
 例えば、視聴方法をチューナーからB-CASカードに変更する際には、チューナー視聴の解約とB-CASカード視聴への加入の2つの手続きが必要になる。従前は、加入と解約の窓口が分かれていたことから、視聴方法の変更に当たっては双方の窓口に連絡せねばならなかったが、こうした複雑かつCSマインドに乏しい業務フローが改善されることになった。このほか、お試し体験の申し込みを受け付けたCSRが本登録に至るフォローコールまで担当することで一貫した対応を実現。また、インバウンドコール業務全般において、効率と品質の双方に寄与する一次解決率を高めることに成功したことで、大幅なコスト削減も実現した。加えて、カスタマーセンターの運営形態を問わず同一のKPIによるコントロールが可能となり、全センターでの均一なオペレーションが可能となった。
 現在、カスタマーセンターは札幌センター、札幌eZoセンター、沖縄センター おもろまちブランチ/壺川ブランチ、みなとみらいセンター、目黒サポートセンターの6拠点で構成されており、目黒サポートセンターを除く5拠点で、加入申し込み受付および各種問い合わせへの対応といったインバウンド業務や加入促進などのアウトバウンド業務といったいわゆるコールセンター業務のほか、加入申込や視聴料金の請求・収納に関する事務処理業務を担当。目黒サポートセンターで、CMS(Call Management System)により全拠点のコールのタイプと量を管理するとともに、イレギュラーな問い合わせや複雑な案件へのエスカレーションに対応し、各センターをフォローしている。センターの拠点は札幌から沖縄まで広範囲にわたって点在しているが、目黒サポートセンターを核に全センターが一丸となって有料多チャンネル事業をパワフルに支えているのだ(図表3)。

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1,200ブースで年間526万件のコールと232万件の事務処理に対応

 カスタマーセンターの運営を衛星放送の創世記から一手に担っているのが、グループ企業でSJCが100%出資する(株)スカパー・カスタマーリレーションズ(以下、SPCC)である。カスタマーセンターの運営形態は拠点ごとに異なり、目黒サポートセンターと札幌センターはインハウスセンター、札幌eZoセンターと沖縄センターの2ブランチ、みなとみらいセンターはテレマーケティング・サービス・エージェンシーに業務委託している。
 2014年1月現在の各センターの規模を見ると、コールブースは目黒サポートセンター60ブース、札幌センター312ブース、札幌eZoセンター280ブース、沖縄センターが2ブランチ合わせて210ブース、みなとみらいセンター160ブースで合計1,022ブース。事務ブースは、札幌eZoセンターが70ブース、沖縄センターが2ブランチ合わせて128ブースで、合計198ブース。両方合わせて1,200ブースを超える大規模なセンターだ。
 受付チャネルには、電話とWebメールを用意している。コールセンター関連システムを見ると、PBXにはAvaya Aura™ Communication Manager、eメール対応システムにはOracle RightNow Email Management Cloud Service、テクマトリックスのFastAnswer、そして顧客管理システムには独自のSMS(Subscriber Management System)を使用している。
 電話回線には、NTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルとフリーダイヤルを採用。前者は、カスタマーセンターの窓口として使用。後者は、加入促進を目的としたキャンペーン時に媒体ごとに複数の電話番号を使い分け、マーケティング・データを取得している。電話窓口の受付時間帯は、年中無休で午前10時から午後8時までと比較的長い。これはサービス業のカスタマーセンターの特徴と言えよう。
 カスタマーセンターの告知媒体は、Webサイトやサービスごとに発行している情報誌など。Webサイトでは、カスタマーセンターのナビダイヤル番号と併せて、1カ月間の電話の混み具合や自動音声ガイダンスの流れも紹介。長時間に及ぶ対応と相まって、視聴者および一般のお客さまのストレスを軽減するとともに利便性を高めている(図表4)。さらに、外国語放送の加入者対応として、日本語のほか中国語と英語でも対応している。

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【図表4】告知媒体の例(Webサイト)

 インバウンドコール数は、2013年度見込みで526万件。内訳は、プーリング・チームが対応する業務が70%、チューナーなどの機器系が10%、光サービス系が5%、ハイビジョン化への移行系が6%、ロイヤルティプログラム系が9%。
 一方、事務処理件数は、同じく2013年度見込みで232万件。内訳は登録・変更が41%、申込書などの書類受け処理が26%、入金・返金処理が9%、法人・ICカード(SJCから視聴者に貸与する視聴に必要なICカード)の処理が22%などとなっている。
 衛星放送の創世記より、“「スカパー!」の耳”として視聴者および一般のお客さまの声に耳を傾けてきたのがカスタマーセンターだ。カスタマーセンターでは、視聴者や一般のお客さまの声を肌で感じているCSR自身が応対履歴の中から視聴者や一般のお客さまの困りごとを取り集め、SJC内で開催される「お客さまと向き合う委員会」へ情報を提供している。このほか、要望や苦情といったホットボイスは、SJCの主導の下、グループ全体で改善すべきことと、カスタマーセンター内で改善すべきことに分類。それぞれがPDCAサイクルに則って実際の取り組みに当たっている。

2014年度は顧客満足をセンター運営の中心に据えた取り組みを推進

 2014年度は企業経営の中心に顧客満足を据えるSJCとともに、SPCCでもセンター運営の中心に顧客満足を据え、テクニックや戦略ではない顧客との真の関係を築くコミュニケーションづくりの年とすることを基本方針に掲げ、“ お客さまとスカパー!を話そう”をスローガンに3つの取り組みを推進していくという。
 1つ目は、入電動機の詳細把握である。顧客ニーズを把握した適切なコミュニケーションを推進すると同時に、コール数の予測精度の向上を図っていくという。
 2つ目は、業務知識を得るための仕組みの高度化である。日々のオペレーションにおいてCSR向けFAQと顧客向けFAQの連動により検索性を高める一方、SPCCの専任トレーナーによる効率良くわかりやすい研修の仕組みを構築していくという。
 3つ目は、1本の電話で用事が済む仕組みづくりの推進である。現在、一部稼働にとどまっている目黒センターをフル稼働させ、コールバックではなくエスカレーションで対応できる件数を増やすという。さらに、SJCと連携して顧客視点に基づいた業務設計を行い、キャンペーンの重複やわかりにくさを解消していきたいとしている。
 約3年にわたり取り組んできた構造改革により一定の効果を得たカスタマーセンターでは、高品質を実現しつつどこまで効率を追求することができるか、真の効率アップを志向していく構えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2014年4月号の記事