コンタクトセンター最前線(第120回):受付チャネル別のチーム編成で迅速・確実な対応を推進

(株)MonotaRO

カタログやECサイトを介して、現場や工場で必要とされる各種工具や用品を販売している(株)MonotaROのコールセンターでは、チャネルと業務内容別にチームを編成して迅速・確実な対応を推進。また、ユーザーの声を取扱商品やプライベートブランドのラインナップに反映させる取り組みを継続的に実施することにより、ビジネスの成長を下支えしている。

通販事業の成長を支えるコールセンター

 手袋やマスク、切削や研磨などの各種工具類、自動車関連商品、工事用品、事務用品に至るまで、現場や工場で必要とされる製品をカタログやECサイトを介して販売している(株)MonotaRO。2000年に創業し、B to B用ECサイト「MonotaRO.com」を開設した後、顧客のニーズに応じてベアリング専門サイト「ベアリングタロウ」、切削工具サイト「刃MonotaRO」を開設したほか、一般生活者向けにプロ仕様の商品を業務用価格で提供するB to C用ECサイト「IHC.MonotaRO」を開設。全サイトを合わせて150万アイテムを販売している。
 事業開始以降、ユーザー数は増加の一途をたどっており、2011年9月5日には約65万9,000人に達した。業績も右肩上がりで伸びており、2010年12月期の売上高は約177億円。2011年12月期には約218億円を見込んでいる(図表1)。

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 創業から今日に至るまで、目覚ましい成長を遂げている同社。これは、顧客のニーズに対応したカタログおよびサイト作りと品揃えの結果であることは間違いないが、もうひとつ、忘れてはならない存在がある。同社カスタマーサポート部に属するコールセンターだ。

2008年8月からチャット対応をスタート

 同社コールセンターは、兵庫県尼崎市の本社内に設置されており、人材の確保から運営までのすべてを自社で行うインハウス・コールセンターとなっている。
 受付チャネルには、電話、eメール、ファクス、Webサイトの問い合わせフォームといった既存チャネルのほかに、チャットも利用している。
 チャットは対面での接客に近い対応が可能であり、従来であれば問い合わせや注文に至らずにWebサイトから離脱していた顧客からの問い合わせも受けることができるようになると言われている。また、ひとりのオペレータが複数の顧客に対応できるといった特性があることから、近年、オペレーションの効率アップとともに顧客満足度の向上を目的として導入されるケースが増えているツールだ。
 同社では、2008年8月から登録ユーザーを対象にチャットサポートをスタート。「電話するほどでもないが、ちょっと聞いておきたい」といったニーズに応えるとともに、「eメールでは、やり取りが長くなって時間がかかる」など、既存チャネルに何らかの不満を持っているユーザーの問い合わせ方法の選択肢を広げた。
 チャットサポートの開始に当たり、あいさつなどの文例を用意したが、ユーザーによって問い合わせ内容や聞き方がさまざまであることから、実際に使用しているのはオープニングとクロージングのメッセージのみにとどまっているという。
 なお、チャットでの受け付けは商品やサービスに関する問い合わせに特化しており、注文の場合はWebサイト、電話、ファクスの利用を案内しているという。

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MonotaRO.comでは、チャットサポートの利用方法を丁寧に案内している

チャネルと業務内容別にチームを編成

 コールセンターのスタッフ数は計52名。このうち正社員の10名は実務をこなしながら管理に当たるプレイングマネージャーという位置付けで、残る42名はパートと派遣スタッフで構成されている。
 同社のユーザーへの対応におけるモットーは、「迅速・確実な対応」をすることにある。これを実現するべく、コールセンターでは受付チャネルと業務内容に応じて4つのチームを作っている。
 「コールセンターチーム」は16名で構成されており、電話での問い合わせと注文に対応している。同社のコールセンターの中で一番大きなチームだ。
 「オーダーマネージャーチーム」は12名で構成されており、返品や不良など顧客や仕入先との相談や調整が必要となる問い合わせに電話で対応している。
 「メディアチーム」は4名で構成されており、eメール、ファクス、チャットでの問い合わせと注文に対応。ただし、前述の通りチャットでは、問い合わせのみに対応している。
 「代行登録チーム」は、10名で構成されている。前出の3チームがフロント業務を担っていたのに対して、代行登録チームが担っているのはバックヤード業務である。具体的には、ファクス注文の際に記入されている情報が古いカタログに準じたもので最新の商品情報と相違があったり、登録されている会員情報との間に相違があったりした際に、顧客に電話をかけて注文内容や会員情報を確認。その上で、正しい情報を入力し直すといった作業を担っている。
 受付時間帯は、電話が平日の午前8時から午後6時までで、土日・祝日は休業となっている。同社では、“顔の見えない通販への不安を払拭し、聞きたいことや注文したい商品があれば、すぐに無料でアクセスできる利便性の提供”を目指し、電話回線にはNTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤルを導入。ひとつのフリーダイヤル番号で問い合わせも、注文も受け付ける、ユーザーにとってわかりやすい窓口となっている。
 チャットの受付時間帯は、平日の午前9時から午後6時までで、電話と同様、土日・祝日は休業となっている。使用しているチャットシステムは「Live800」である。Live800は、GoldArmor Technology社が中国で開発したASP型のメッセージングソフトウエアで、日本でのサービス販売は(株)アメニティコーポレーションが行っている。
 eメールとファクスについては24時間受け付けているが、対応は営業時間内に行っている。

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本社内に設置されているコールセンター。雇用形態はさまざまだが、スタッフはすべて直雇用のインハウス・コールセンターだ

IVRは使わずコールセンターチームが一次受付を担う

 電話応対の流れは次のようになっている。
 まず、用件を問わず、すべてのコールはコールセンターチームにつながる。用件が問い合わせと注文の場合は、コールセンターチームの中で、用件に応じたスキルを持つオペレータが対応。返品や不良品に関する問い合わせの場合は、オーダーマネージャーチームにエスカレーションするといったかたちで対応している。
 IVRを使わずに、コールをストレートにオペレータにつなぐと同時に、明確なチーム構成により用件に適したオペレータが対応することで、ワンストップ対応を実現している点へのユーザーの評価は高い。迅速かつ確実な対応が、ユーザーの満足度を高める大きな要因であることがうかがえる。
 コールセンターチームおよびオーダーマネージャーチームが対応した履歴はもちろんのこと、そのほかのチームが対応したインバウンドおよびアウトバウンドによるコンタクト履歴は、すべて自社開発の「社内基幹システム」に蓄積している。同システムにはこのほか、コールセンター業務に必要な顧客プロファイル、受注履歴、キャンペーン履歴なども蓄積されており、これらの情報は、関係者であれば誰もが随時、閲覧することができる。

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毎年10月に繁忙期を迎える

 受付件数は月ごとに異なるが、1カ月当たりの平均受付件数は、問い合わせが約4万件、注文が約12万3,000件。
 問い合わせ対応の内訳をチャネル別に見ると、電話が1カ月当たり約2万5,000件、eメールが約2,000件、ファクスが約5,700件、ホームページの問い合わせフォームが約7,000件、チャットが約350件。
 同じく受注は、「MonotaRO.com」「ベアリングタロウ」「刃MonotaRO」のWebサイト上からのアクセスが7割と大半を占め、残りの2割がファクス、1割が電話となっている。
 全体のコンタクト数は月によって波があるが、毎年10月にカタログを発行して会員に配付することから、10〜12月のコンタクト量が年間で最大となっている。今まさに、コンタクトのピークを迎えているところだ。
 同社では、コールマネジメントシステムなどコールセンター専用のシステムは導入していないが、電話の受付状況についてはフリーダイヤルのオプションサービスのひとつであるカスタマコントロールを使用して、総呼数、完了呼数、話中の呼数、平均通話時間などをチェックしている。KPIには「完了呼率」と「平均応答時間」を採用しており、それぞれの目標値は、完了呼率が85%以上、平均応答時間は5分以内(通話3分、後処理時間2分)に設定。繁忙期にはどうしても目標値を下回ってしまうものの、年間平均では完了呼率、平均応答時間ともにほぼ目標を達成しているという。
 ただ、冒頭でも述べた通り、売上高は年々右肩上がり。これに比例してコンタクト数も増加の一途をたどっている。現在の体制でKPIを達成し続けるためには、オペレータのマルチスキル化が不可欠となる。現在はチャネルごとの受付体制を敷いているが、将来的には2つ以上のチャネルに対応できるスキルを持つオペレータを育成することが、対応品質と効率を両立するカギになると同社では見ている。

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2011年10月2日に発刊したばかりの最新カタログ。計117万部を発行

ユーザーの声を基にサービス改善提案を堤出

 同社では、社内基幹システムに日々蓄積されていくあらゆる情報を関係者の誰もが、随時、閲覧できる仕組みをとっている。これを利用して、ユーザーの問い合わせ履歴を基に現状業務の改善点をオペレータ全員に考えてもらい、それを社員が吸い上げて、週に1回、カスタマーサポート部の部長と社長にeメールで報告している。
 この取り組みにより、取り扱いが提案された商品が、実際にラインナップに加わった事例は枚挙にいとまがない。また、ニーズの高い商品については、ナショナルブランドと変わらない品質で安価に提供できるよう、MonotaROプライベートブランドで開発・製造し、発売するケースも多々ある。
 ユーザーの声を商品やサービスの改善に役立てた最近の例としては、自動車関連の名入れサービスを小ロットでも注文できるようにしたことが挙げられる。自動車関連の名入れサービスとは、オイル交換をした時期や次回の交換時期・距離を記入できるシールや車検証入れに自動車整備会社やガソリンスタンドなどの名前を印刷するサービス。例えば、車検証入れ名入れサービスは、最低注文数量を1セット・200枚からとしていたが、「もっと少数から発注できるようにしてほしい」というユーザーのニーズに応え、1セット・20枚からの注文を可能にした。
 今後は、ユーザーの声をサービスレベルの向上にも役立てられるよう、検討を重ねているところである。

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ユーザーのニーズに応えるためのプライベートブランド開発に余念がない

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ユーザーのニーズに応えて小ロットでの注文を可能にした名入れオイル交換シールと名入れ車検証入れ


月刊『アイ・エム・プレス』2011年11月号の記事