コンタクトセンター最前線(第72回):お客様の声を収集・分析してFAQの充実に活用 自己解決率の向上を目指す

マカフィー(株)

ネットワークセキュリティ・ソフトウエアおよびハードウエア製品の開発、販売、保守、サービスの提供を行うマカフィー(株)。同社では、2003年10月よりコンシューマー向け事業をスタートした。これに伴い開設されたインフォメーションセンターでは、主に購入前の問い合わせに対応。 お客様への的確な情報提供を通じてセールスをサポートすると同時に、お客様の声を活用して自己解決率の向上に注力している。

コンシューマー事業の開始に伴い専用窓口を開設

 総務省が発表した「平成18年度通信利用動向調査(世帯編)」によると、インターネットの使用者数は増えており、世代別の利用状況を見ても、すべての世代において増加傾向にある。こうした中、ウイルスや不正アクセスによる被害が拡大。多くの企業および個人は、ウイルス対策ソフトを導入するなど自主的に対策を講じている。
 マカフィーは、アドウェア、スパイウェア、迷惑メール、ウイルス、フィッシングサイト、オンライン詐欺などからパソコンを保護するネットワークセキュリティ・ソフトウエアおよびハードウエア製品の開発、販売、保守、サービスの提供を行う、セキュリティ対策のリーディングカンパニーである。米国に本社を構え、世界各国にユーザーを持つ。その日本法人であるマカフィー(株)は、東京本社のほかに1支店・2営業所を構え、国内各地の企業、官公庁、自治体、コンシューマーとあらゆる層の顧客を獲得している。同社がコンシューマー市場へ参入したのは2003年10月。家電量販店などを通じてパッケージ製品を販売しているほか、パソコンにバンドルして(ウイルスチェックを標準装備するかたち)提供している。
 今回紹介するマカフィー・インフォメーションセンターは、コンシューマー市場への参入に伴い、コンシューマー専用の購入相談窓口として2003年10月に新設された。購入前の質問に対応するという業務の特性上、情報提供と併せてセールスをサポートする役割も担っている。
 同社ではインフォメーションセンターのほかに、用件別に窓口を開設。購入後の操作方法などの問い合わせにはテクニカルサポートセンターが、ユーザー登録の受け付けや諸届け変更などにはカスタマーオペレーションセンターが対応している。

センターの移転や拡大に備えてナビダイヤルを導入

 インフォメーションセンターの受付チャネルには、電話とeメールを活用。電話対応とeメール対応とでそれぞれ専用のチームを作り、対応に当たっている。
 電話の受付時間は、月曜日から金曜日の9時から17時までで、土日・祝日および年末年始は休業。一方、eメールは24時間受け付けているが、返信は電話受付とほぼ同じ時間帯に実施している。
 電話窓口には、NTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルを使用。オプションサービスを利用して、携帯電話からの着信も可能にしている。現在、インフォメーションセンターは東京都内にあり、数十ブースで対応に当たっているが、今後、ユーザー数の増加に伴い、移転や拠点数を増やす可能性がある。その時、ナビダイヤルであれば番号を継続的に使用できることから、同社ではセンター開設時より使用している。

委託先企業との密なコミュニケーションがセンター運営成功のポイント

 実際のセンター運営は、ソフトウエアなどのシステム関連の対応に定評のあるテレマーケティング・サービス・エージェンシーにアウトソーシングしている。設立以降、法人向けに事業を展開してきた同社には、コンシューマーを対象とした問い合わせ対応ノウハウが十分ではなかった。加えて、短期間でセンターを立ち上げなければならなかったこともあり、アウトソーシングを選択した。基本的にインフォメーションセンターですべての問い合わせに対応しているが、各種担当部門などへの確認が必要な案件については、マカフィー本社へエスカレーションされる仕組みになっている(図表1)。同社では、アウトソーシングによるセンター運営のポイントは委託先と本社との連携を密にすることにあると言う。そのため、日々の現場レベルでの連絡はもちろんのこと、本社の管理者も月に数回、インフォメーションセンターを訪問し、コミュニケーションを図っているそうだ。

1381

 受付システムには、米国本社で使用している顧客情報管理システムと応対履歴管理システムを利用している。前者は米国と共通のシステムであることから、インターフェイスの表記は英語だが、入力は日本語でできる。項目さえ覚えてしまえば容易に操作できるため、エージェントに英語力が求められることはない。

お客様の温度にあった対応を心掛ける

 同社がインフォメーションセンターでの対応において留意している点は、「丁寧な対応」「お客様の温度にあった対応」である。言葉遣いが丁寧でも、とおり一遍の対応ではお客様に満足していただくことはできない。お客様一人ひとりに合った、マニュアルにしばられ過ぎない対応を心掛けているのだ。また、前述のようにインフォメーションセンターではセールスサポートも担っていることから、「お客様の環境を把握し、適切な製品をお勧めすること」も、応対時の留意点として挙げられる。
 これを実現するには、豊富な知識とお客様から情報を聞き出す能力が必要だ。スキルの高いエージェントを育成するためには、まず導入研修がポイントとなる。導入研修の期間は1週間。この間に、座学とOJTを行い、基本的なスキルを身に付ける。
 同社の研修でユニークな点は、eメール対応からOJTを始めることだ。SVやリーダーが回答の作成をサポートし、内容をチェックしてから送信している。たまたまだったとしても、新人エージェントがいきなりクレームの電話を取ってしまうと、やる気をなくしてしまうことがある。そんな事態に陥ることのないようにとの配慮から、この方法が採られている。
 eメールで業務に慣れた後、電話の受け付けに移る。そして、独り立ちできるようになった時点で、eメール対応か電話対応か配属チームが決まる。この研修方法の効果だけではないが、エージェントの定着率は比較的高いという。

DSCF3573

インフォメーションセンターのオペレーション風景。ブースを見ると、パーティションは前面のみで左右にはない。日によって変動するが、スーパーバイザー(SV)1名で6〜8名のエージェントを見ており、エージェントが手を挙げるとすぐにSVが駆けつける

お客様の声を活かしてFAQの充実を図る

 一口に購入前の相談といっても、その内容は多岐にわたる。中でも、最も多く寄せられる問い合わせ内容は、「自分が持っているパソコンにソフトが対応しているのか?」といった、製品仕様に関することで、次に多いのが、対応ブラウザやOSについて、料金や販売ルートについてと続く。また、最近はあまり多くないが、個人情報に関する問い合わせも寄せられる。
 このほか、ユーザー契約情報に関する問い合わせもある。これは、カスタマーオペレーションセンターの範疇であるが、インフォメーションセンターでも対応できる体制を整えており、お客様に掛け直していただかなくていいように努めている。
 インフォメーションセンターに集まった情報は、集計・分析し、同社WebサイトにFAQとして公開。昼夜を問わず、いつでもお客様自身が情報を得られる環境作りに活かしている。FAQは、ページビューやアンケート結果をもとにひとつひとつ評価。「役に立たない」という回答が多かったり、閲覧頻度が少ないものについては、構成を見直したり、書き直すことで改善している。
 最近の事例としては、Webサイト内のマカフィー・サポートのレイアウト変更が挙げられる。マカフィー・サポートの画面左側では、主にお客様から恒常的にいただく質問やサポート期限、問い合わせ方法など、サポートに関する一般的な情報を掲載しており、中でもバナー広告形式の記事は、お客様から多く寄せられる内容となっている。旧レイアウトではブラウザを縮小した状態でサポートページを表示した場合、サポートページがすべて表示されず、「登録メールアドレスの確認・変更方法」など重要な記事が目立たず不便だという意見が寄せられていたため、この点を改善した。新レイアウトでは、バナーの位置を上部に移動。ブラウザを縮小していてもサポートページを表示した時は重要な記事が目に入るようになった。同社では、これによりページの利便性および、お客様の自己解決率が向上することを期待している。
 もうひとつ、マカフィー・サポートの「よくある質問」部分もレイアウトを変更した。「よくある質問」では、特に件数が多い問い合わせを10〜12程度ピックアップして掲載している。旧レイアウトではすべての質問を一覧で掲載していたが、どの記事がどのカテゴリに該当するのかがわかり難いという意見が寄せられた。また、よくある質問の上部にカテゴリごとに一覧表示するボタンを配置していたものの、ボタンをクリックした際にどのような情報が表示されるのか直感的にわからないため、あまり利用されていなかったという問題点があった。そのため、新レイアウトでは、よくある質問として掲載している記事をカテゴリ別に分け、それぞれを一覧表示するリンクを追加。より直感的に該当の記事を参照できるように改修した(資料1)。

support2007 support2008

【資料1】旧レイアウト(左)と新レイアウト(右)。お客様にとって重要な内容を上部へ移動したり、よくある質問を明確にカテゴリー分けしたりすることで自己解決率の向上を目指した

 FAQ の利便性を高めることで自己解決率が高まれば、インフォメーションセンターはもちろんのこと、カスタマーオペレーションセンターとテクニカルサポートセンターの業務軽減にもつながる。現在、インフォメーションセンターでは85%前後の応答率を実現しているが、自己解決率が高まればより一層、電話がつながりやすくなり、さらなるCS向上を実現するだろう。

eメール対応のスピードアップが課題

 自己解決率の向上に加えて、同社がCS向上を図る上で取り組むべき課題としていることがもうひとつある。それは、eメール対応のスピードアップだ。先に紹介した通り、インフォメーションセンターは土日・祝日は休業となっている。そのため、金曜日に受け付けたeメールへの返信が月曜日になってしまうケースがあるのだ。
 どのコールセンターにも共通していることだが、月曜日はほかの曜日より問い合わせ件数が多い。その上、金曜日から土日にかけて寄せられたeメールにも対応しなければならないとなると、相当の作業量になる。エージェントの負荷を軽減するためにも、何らかの方法を検討していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年11月号の記事