コンタクトセンター最前線(第71回):受付窓口と収集事務所を統合 ナビダイヤルでフレキシブルな受付体制を構築

横浜市役所 資源循環局

「ヨコハマはG30」 を合い言葉に、市民および事業者と協働して、ごみの減量とリサイクルを推進している横浜市役所資源循環局。同局では、従来個別に委託していた粗大ごみ受付業務と収集業務を統合することで、業務の効率アップを実現している。

粗大ごみの収集依頼と問い合わせに対応

 神奈川県横浜市は、港町として発展し、観光地としてだけでなく住みたい街としても人気が高いことで知られる都市である。2007年8月1日現在の人口は、推計で362万5,495人。同じく世帯数は、152万8,911世帯。いずれも、近年はコンスタントに増加を続けている。
 人口が増えれば、ごみも増えるはず。ところが、同市のごみの排出量は人口に反比例して、2003年度以降、減少し続けている。2001年度には161万トンあったごみ排出量が、2005年度には106万トン(約34%減)にまで減少した。これは、横浜市役所の資源循環局が2003年1月より進めている、ごみの減量とリサイクル「横浜G30プラン」の効果だ。「ヨコハマはG30」を合い言葉に、市民および事業者と協働して“環境行動都市ヨコハマ”を実践している。「横浜G30プラン」では、2010年度のごみ排出量を2001年度に対して30%削減することを目標としていたが、目標より5年早い2005年度にこれを達成した。ちなみに、G30の「G」は、ローマ字のごみ、または英語でごみを意味するGarbageと減量(Genryo)のGを、「30」は削減目標である30%を示している。
 粗大ごみについては、横浜市が1年間に収集に当たる件数は、2006年度の実績で約180万個。これらの収集依頼および粗大ごみに関する問い合わせを受け付けているのが、粗大ごみ受付センターである。

受付窓口と収集事務所を統合し業務効率の向上を図る

 粗大ごみ受付センターの開設は2001年。それ以前は、家庭から出るごみを収集する各収集事務所で受け付けを行っていた。ところが、収集依頼の増加に伴い電話がつながりにくくなったことに加えて、分別方法などの問い合わせが増えたことから受付業務を分離。センターの運営をテレマーケティング・サービス・エージェンシーに委託するかたちで開設したのである。これにより、電話がつながりやすくなった上、収集事務所の職員が通常業務に専念できる環境を取り戻すこともできた。
 その後、横浜市では、粗大ごみ収集の受け付けから収集完了までの業務をよりスムーズにしようと、収集と受け付けの業務を一体化して委託することとした。そして、市内を5つのエリアに分割し、2007年度は市内4カ所で受付業務を行っている。
 実際にセンターの運営に当たるのは、(財)横浜市資源循環公社および民間企業3社の計4社。具体的な業務内容としては、まず、粗大ごみの料金や粗大ごみに該当するかしないかといった収集申込前に寄せられる問い合わせへの対応が挙げられる。次に、申込受付から収集日程の調整、そして実際の収集を行っている。

ナビダイヤル番号で受付窓口を明確化し公平性も確保

 粗大ごみ受付センターの受付時間帯は、月曜から土曜日の午前8時30分から午後5時まで。固定電話および携帯電話からは、NTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルで対応し、IP電話からは固定電話番号で対応している。
 図表1は、ナビダイヤルによる受け付けイメージである。同市には18の区があり、それぞれに異なるナビダイヤル番号を設定。ダイヤルした番号で居住区を特定し、その居住区を担当する受付センターに着信させている。

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 同市では、ナビダイヤルを導入した理由のひとつに、電話番号のわかりやすさを挙げている。現在の受付体制に至る過程で、何度か電話番号を変更したことがあったが、番号変更は市民の混乱を招くばかりか、告知の手間もかかる。同市では毎年、入札により委託先を決めているため、今後、センターを移転する可能性がある。また、区割りを変更することも考えられることから、国内であれば住所が変わっても継続して同じ番号を利用できるナビダイヤルを導入したのである。
 ナビダイヤルは、受信者と発信者とで通話料金の負担を分担することができるが、同市では固定電話などと同様に、発信者が通話料金を全額負担するように設定した。これは、通話料金を市の負担とした場合、粗大ごみを出す市民と出さない市民の間で公平性が確保されない、という理由によるものである。
 粗大ごみ受付センターでは、電話だけでなくインターネットでも受け付けを行っている。インターネットは、まずインターネットデータセンターで一括して受け付け、その後、居住区に応じて各受付センターに振り分けられる。インターネットデータセンターでは、受け付けと振り分けのみ行い、市民への返信メールは各センターから送られる仕組みになっているのだ。
 地区ごとの電話番号およびインターネット受付のURLは、市内各所で配布している広報誌や小冊子「ごみと資源の分け方・出し方」、市のホームページで告知している(資料1)。

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ごみの分類方法や出し方を詳しく説明した小冊子(左)やホームページで、粗大ごみ受付センターのナビダイヤル番号やインターネット受付の方法を紹介している。ホームページなどに登場している「へら星人ミーオ」は、「ヨコハマG30」のマスコットで、携帯クリーナーなどのグッズにもなった(右)

栄粗大ごみ収集センターの受付体制と受付状況

 各センターの規模は、担当地区の人口および世帯数に応じて決められている。4 つのセンターを代表して、(財)横浜市資源循環公社が運営する栄粗大ごみ収集センターの受付状況や受付体制を紹介しよう。
 同センターは、港南、磯子、金沢、戸塚、栄の5区、42万7,000 世帯を担当するだけあって、最も規模が大きい。2006年の収集申込受付件数は、電話が23万2,000件で、インターネット受付が3万件。このほか、問い合わせ件数(電話とインターネット受付)は8万5,000件だった。
 月間平均受付件数は、約2万1,600件だが、実際には収集の申し込みや問い合わせの件数は一定ではない。12カ月で見ると、引っ越しの多い3月、4月と、多くの人が大掃除を行う11月、12月が最も多い。曜日で見ると、月曜日が最も多く、次第に減少し、土曜日が一番少ない。さらに、24時間で見ると、8時30分の受付開始直後と受付終了間際に多くの電話が寄せられる。
 また、天候もコール数に影響する。雨天の場合、晴天に比べてコール数は2割ほど減少し、その分、翌日のコール数が増えるのである。
 栄粗大ごみ収集センターでは、月・曜日・時間帯ごとの傾向や天気予報を踏まえながら精密なコール予測を行い、その結果に基づきオペレータを配置している。一次対応を担うオペレータ数は合計30名で、コールのピーク時には20名が対応に当たる。
 スタッフは、オペレータ以外に、エスカレーションに対応するオペレータリーダー(1名)、オペレータリーダーのエスカレーション対応とスーパーバイザー(SV)をサポートするリーダー(1名)、オペレータの教育を担うSV(2名)で構成されている。
 栄粗大ごみ収集センターが対応に当たり留意している点は2つある。ひとつは、迅速かつ丁寧で好感度の高い、より良いサービスを提供すること。もうひとつは、横浜市の職員ではなくても、市の顔であることを心にとめて対応すること。これらは、各粗大ごみ受付センターを統括する横浜市役所資源循環局からの要求事項にもなっている。
 ひとつ目の留意点である、迅速かつ丁寧で好感度の高い対応をするには、応対話法を身に付けていることはもちろんのこと、ごみに関する豊富な知識も欠かせない。日々に新しい商品が開発され、市場に投入されることから、栄粗大ごみ収集センターでは応対話法のスキルアップと併せて、商品(ごみ)情報のメンテナンスにも注力している。磨かれた応対話法と豊富な知識をベースに、ケースに合わせてわかりやすく説明することを目下の課題としている。
 また、横浜市のごみの分け方は比較的細かく定められているが、物によっては、分類項目の判断が難しい、あるいはそのごみの分類上の名称が申込者自身もわからないケースがある。こうした場合は、それが何かを特定するための情報を聞き出す力量が必要だ。ヒアリング力を高めるために、栄粗大ごみ収集センターではモニタリングによる個別指導を行っている。

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栄粗大ごみ収集センター内にある、粗大ごみ受付センターの様子

今後はインターネットの利用が増えると予測

 横浜市役所資源循環局では、日々のセンター運営や人材育成に関しては、各委託先に任せている。とはいえ任せきりではなく、ナビダイヤルのオプションサービスであるカスタマコントロールを利用して、各センターの受付状況を自ら把握できる体制を整えている。
 2006年度における、5つの受付センターの総受付件数は89万件。このうち、インターネットによる受付件数は11万件で、全体の12%。2005年度(総受付件数90万件、インターネットの割合は8%)と比較すると、総受付件数は減少しているもののインターネットの割合が増えていることから、横浜市役所資源循環局では今後もインターネットの利用が増えると予測している。

市民の声を業務の改善に活用

 現在、同市では、粗大ごみ受付センターに集まった情報の活用に積極的に取り組んでいる。例えば、特殊な問い合わせが寄せられると、問い合わせ内容と回答を各センターで共有して同様の問い合わせに備えるといった具合だ。このほか、インターネットでの申し込みは Windows にしか対応していなかったが、市民の声を受けて2006年末からマッキントッシュからでも申し込めるようにシステムを改善した。同市では今後も、費用対効果を考慮しながら、情報の活用に取り組んでいく意向を示している。

課題は応対品質と業務効率の低下防止

 横浜市役所資源循環局では、収集受付と収集事務所を統合したことで業務の効率化を図った。しかし、一方ではひとつの懸念がある。それは、先にも触れたが、委託契約は1年間の有期契約となっており、毎年入札を行うため、1年ごとに依託企業が代わる可能性があるということだ。受付業務はもちろんのこと、実際の収集現場においても経験がものをいう業務なだけに、委託先が変わることで、応対品質や業務効率が低下する可能性は否めない。これは、すぐに解決することはできない問題だが、できるだけ早い時期に、何らかの解決策を導き出さねばならないだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年10月号の記事