コンタクトセンター最前線(第59回):センターが抱える課題解決に努めすべてのお客様に満足していただけるセンターを目指す

キューサイ(株)

青汁でお馴染みのキューサイ(株)は、2002年より本格的に通信販売に参入した。 注文を受け付けるコールセンターや、問い合わせを受け付けるお客様相談室といったお客様とのコンタクトポイントは、 同社のビジネスを支える重要な部門である。 今回は、同社におけるコールセンターの役割とさまざまな課題解決への取り組みにスポットを当てる。

受注には24時間有人対応を導入

 福岡に本社を構えるキューサイ(株)が青汁の販売を開始したのは1982年。健康に関心の高い比較的高齢のお客様をターゲットとしていたことから、青汁の販売開始当初は代理店による対面販売を推進していた。その後、「キューサイの青汁」の認知度向上を受けて、より多くのお客様へ青汁をお届けしようと、2002年より通信販売に参入した。現在は、体の内側と外側の両面から健康を作るという考えに基づき、健康食品のラインナップを充実させると同時に、肌着など外側から健康に働きかける商品も取り揃え、50代から80代を中心とする方々に親しまれている。
 同社の通信販売事業をしっかりと支えているのが、受注を中心に注文に関連する用件に対応するコールセンターや問い合わせを受け付けるお客様相談室、eメールへの対応を行うインターネット対応部門、サンプル請求者や既存客へのフォローコールを担うアウトバウンド部門といった、お客様とのコンタクトポイントである。
 現在同社では、福岡本社内にお客様相談室、インターネット対応部門、アウトバウンド部門を設置。また、福岡のほか全国各地に計8つのコールセンターを設けているが、今回は、お客様相談室と8つのコールセンターにフォーカスして、それぞれの役割や課題解決に向けた取り組みを紹介していきたい。
 通販の場合、受注と問い合わせという業務内容の異なるセンターの運営が不可欠である。また同社の場合、販売チャネルによってさまざまな情報が求められるなど対応面での違いが生じる。こうしたことから、同社ではお客様の属性や用件に応じた電話窓口を設置しているのだ。
 お客様相談室では、既存客、新客から販売代理店の顧客まで、すべての顧客を対象としている。受付時間は、平日の午前9時から午後6時までで、土日・祝日は休業。NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを利用している。
 運営はインハウスで行っており、約10名のスタッフが商品や会社に関する問い合わせ、クレームなどに対応している。
 コールセンターは、受注がメイン業務であるため、お客様相談室と同様にフリーダイヤルサービスを利用している。また、いつでも商品を欲しいと思ったときに注文していただけるよう、24時間の受付体制を整えた。日中のみ有人対応を行い、深夜・早朝はIVRを利用して24時間受付を実施しているセンターが多い中、同社では終日、有人対応を実施している点は特筆に値する。
 同社が有人対応による24時間体制にこだわる理由はお客様の属性にある。前述の通り、同社のメインターゲットは高齢層のため、プッシュボタン操作に不慣れな方が多いのである。煩わしい操作をなくし、スムーズにコミュニケータに電話をつなぐことで、確実に受注につなげることができるのだ。しかし、24時間のセンター運営には高度なノウハウが必要となる。そのため、運営はすべてテレマーケティング・サービス・エージェンシーにアウトソーシングしている。

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フリーダイヤルのオプションサービスであふれ呼をキャッチ

 8つのコールセンターのうち、福岡では販売代理店の新客と通販の既存客を対象としている。俳優が青汁を飲み干して「ん〜まずいっ、もう一杯」と言うテレビCMで告知された電話番号の着信先になっているのだ。また、既存客への対応には高いソフトスキルが求められるため、福岡に業務を集中させ、専任のコミュニケータが対応に当たっている。
 一方、そのほかのセンターは、通販の新客を対象としている。既存客への対応がソフトスキル重視であるのに対し、新客の対応にはスピードと正確性が求められる。加えて、1本でも多くのコールに対応することが必須である。そこで、複数の拠点がある点を活かし、Aコールセンターであふれ呼が発生したらBコールセンターへ転送することで、コールの取り逃し防止に努めているのだ。
 この施策を実現しているのが、フリーダイヤルのオプションサービスのひとつである「広域代表サービス」である。同サービスを利用することにより、大量のコールが寄せられた場合に、あらかじめ指定しておいた別の拠点へあふれ呼をつなぐことができる。
 さらに、「回線数変更サービス」と、受付状況の把握や各種設定を行える「カスタマコントロールサービス」を併用することで、本社にいながらにしてコール予測に基づいたフレキシブルな受付体制を実現している。
 現在、お客様相談室および8つのコールセンターには月間約10万件のコールが寄せられているが、こうしたシステムを活用したオペレーションサポートとアウトソーシング先企業の努力が相乗効果を発揮。新客の応答率は97%以上、既存客の応答率は98%以上を実現している。
 また、広域代表サービスは、センター間のバックアップ体制にも役立っているという。

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比較的多く寄せられる問い合わせはQ&A形式でWebサイトでお知らせしている(写真左)
Q&Aでほしい情報が見つからなかったお客様のために、問い合わせページに飛べるようにリンクが張られている(写真右)

かねてよりの課題であるいたずら電話の防止に注力

 インバウンドコールセンターを訪問すると、いたずら電話への対策に苦慮しているという話をよく耳にする。同社も例外ではなく、かねてよりいたずら電話対策の試行錯誤を繰り返している。
 現在同社が実践しているいたずら電話防止策は3つある。ひとつ目は、非通知ブロックである。これは、発信者番号が認識されない場合、コミュニケータに電話をつながないという方法で、フリーダイヤル番号の頭に発信者の電話番号を通知するための番号「186」を付けてかけなおすよう、アナウンスしている。
 2つ目は、男性スタッフからのコールバックである。堂々と電話番号を通知してワン切りなどをする常習者には、この方法が効果的なのだ。
 そして3つ目は、テレビCMや折込チラシなど、新客獲得を目的とした媒体に記載しているフリーダイヤル番号を頻繁に変更することである。
 同社では、一度注文をいただいたお客様には、二度目以降は既存客専用の電話番号にかけてもらうよう案内している。そのため、テレビCMなどで使用するフリーダイヤル番号を変更しても特に支障はないのだ。

本来業務に集中するために適切な窓口にコールを振り分ける

 もうひとつ、現在同社が新たに取り組んでいる課題がある。それは、お客様相談室に寄せられる受注コールをなくし、お客様相談業務に集中できる体制を整えることである。
 冒頭で記載したとおり、同社では受注を主業務とするコールセンターとお客様相談室の電話番号を分けているわけだが、お客様相談室に寄せられるコールの内訳を見ると、2割ものコールが受注に関するものなのだ。これでは、お客様相談室の本来業務である問い合わせ受付や意見・要望への対応が滞る。また、お客様が間違えて電話をかけてきたとはいえ、電話を転送されることに対して良い感情を持たないお客様もいるだろう。そこで2006年5月より、フリーダイヤルとIVRや音声認識機能、ACDなどのコールセンター機能をパッケージ化した「フリーダイヤル・インテリジェントサービス」(以下、インテリジェントサービス)を導入。自動音声応答によるコールの振り分けを開始した。
 対面販売、有人対応にこだわりを持っている同社としては、有人対応を貫きたい思いはあったが、課題を解決するためには新たなチャレンジも必要である。そこで、自動音声による応答を最小限にとどめようと、インテリジェントサービスの利用は、午前11時から午後3時までに限定した。
 チャレンジの甲斐あって、導入後間もなく効果が表れはじめている。しかし一方で、アナウンスの途中で電話を切ってしまうお客様もいる。インテリジェントサービスはカスタマイズが可能なため、今後同社ではコールフローの改善などを図り、お客様の利便性を向上させていく意向だ。

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お客様相談室の様子。各ブースには、応対に必要なマニュアルなどさまざまな資料が置かれている

すべてのお客様に満足していただくセンターを目指して

 自社で行う業務とアウトソーシングする業務を明確にし、フリーダイヤルとそのオプションサービスをフルに活用することで、既存のセンターを活かした効率的なセンター運営を実施しているキューサイ。同社が目指しているセンターは、「電話をかけてきたお客様に満足して受話器を置いてもらえるセンター」である。初めて同社にコンタクトしてきたお客様に満足していただけるサービスを提供することができれば、初回注文につながるだろう。また、既存のお客様に満足していただけるサービスを提供することができれば、リピートオーダーにつながり、ひいてはロイヤルカスタマーを生むと考えられる。
 特に既存客への対応を担うスタッフには、購入履歴に基づく個別の対応が求められることから、Q&Aの充実、話の切り返し方のバリエーション提供、スクリプトの整備など、コミュニケータをサポートする情報提供に努めている。このほか、毎週、同社のスタッフがセンターを訪問してモニタリングや研修を行うなど、人材育成に注力。これにより、応対品質の維持・向上を図っている。
 同社では、これからもコールセンターとお客様相談室におけるお客様とのコミュニケーションを重視し、すべてのお客様に満足していただくことができるセンターを目指していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年10月号の記事