72年の歴史を持つ、カメラの専門店(株)キタムラ。 現在同社では、「デジカメ専門店」 と 「プリント “超” 専門店」 の2本柱で、デジタル化に向けた取り組みを強化。 デジタル時代の写真サービスの提供を通じて、人のきずなと思い出づくりをサポートしている。 この取り組みを下支えするのが、用件別に設けられた4つのコールセンターである。
4つのコールセンターを開設
フィルムを使用したアナログの時代からデジタルの時代へと、この数年の間にカメラ業界は大きな変化を遂げた。デジタルカメラやカメラ付き携帯電話の普及により、ハードが多様化。この流れは今後も続くものと考えられる。
(株)キタムラは、1934年に創業、1943年に設立したカメラの専門店。カメラのキタムラと言えば、ピンとくる読者も多いだろう。72年の歴史を持つ同社では、カメラの専門店としてゆるぎない地位を確立してきたが、それに甘んじることなく市場の変化をいち早くとらえ、「デジカメ専門店」と「プリント“超”専門店」の2本柱で、デジタル化に向けた取り組みを強化。写真を楽しむすべての技術とサービスを「ピクチャリング」と定義し、デジタル時代の写真サービスの提供を通じて、人のきずなと思い出づくりをサポートしている。アナログからデジタルへと移り変わっても、撮影した映像を残したい、楽しみたいというお客様のニーズは変わらないのだ。
現在同社では、お客様に写真を楽しむすべての技術とサービスをスムーズに提供すると同時に、店舗販売など自社のビジネスをサポートすることを目的にコールセンターを活用。用件別に、ネットプリントなんでも相談室、デジカメなんでも相談室、お客さまなんでも相談室、中古買取下取受付の4つのコールセンターを設けている。
ネットプリントサービスの利用拡大を目的にサポートの充実に着手
本格的なコールセンター運営に初めて臨む同社では、4つのコールセンターを一度にオープンさせるのではなく、ひとつずつ順を追って作っていった。
最初に開設したのは、ネットプリントなんでも相談室である。
インターネットでプリントを注文して、店頭や宅配便で仕上がった写真を受け取ることができるネットプリントサービスは「ピクチャリング」のひとつ。今日ではプリント業界各社が提供する、定番となったサービスだ。同社では、この利用を飛躍的に伸ばしたいと考えていた。どうすれば他社を押しのけて、ネットプリントのトップシェアを獲得することができるか…。検討のすえたどり着いた結論は、サポートの充実であった。
そこで同社では、もともと社内で行っていたネットプリントに関する問い合わせ対応をヘルプデスクの構築などを手掛けるテレマーケティング・サービス・エージェンシーに委託。初めての方でも安心して利用できるよう、電話とeメールを介して専門のスタッフがわかりやすく丁寧に説明する窓口を実現したのである。
電話窓口の受付時間帯は、午前10時から深夜12時までで年中無休。電話回線には、NTTコミュニケーションズのナビダイヤルを使用している。
よくある問い合わせとあわせて、各相談室の電話番号を告知している
店舗でカメラ購入者に配布している各相談室の案内カード。プレゼント用や女性にも使いやすいデザイン(右)も用意している
センタースタッフは社内公募で採用
続いて、2005年7月に開設したのが、デジカメなんでも相談室である。
現在、同社では店舗「カメラのキタムラ」を全国に560店保有している。店舗の主な業務は対面による接客販売である。ところが、デジカメの普及に伴い、年配者から「撮影した後はどうしたらいいの?」といった問い合わせの電話が多く寄せられるようになり、対面での接客に支障をきたしはじめた。そこで、デジカメ専門の問い合わせ窓口を設けて、店舗スタッフの業務負担の軽減を図ったのである。
同社はカメラの専門家集団である。当然のことながら、デジカメなんでも相談室はインハウスで運営する方針を固めた。センタースタッフは、CS事務局が中心となり、社内公募を実施。2〜3名の定員に対して、応募者数は自薦他薦を含めて10名と予想を上回ったという。
オープニングスタッフは、室長を含めて3名。ネットプリントなんでも相談室の運営を任せているテレマーケティング・サービス・エージェンシーの協力を得て、応対フローなどを作成し、3日間の集中講義を実施。応対話法やPC操作を身に付け、相談室のオープンに至った。
総合的なCSの観点からお客さまなんでも相談室を開設
デジカメなんでも相談室は、社内に設けた初めての本格的なコールセンターである。パートナー企業のスタッフやコールセンター勤務経験者が相談室内に常勤しているわけではなかったため、まさに手探りの状態だった。
相談室を開設したからといって、大々的な告知をすれば一気に大量のコール数が寄せられて対応しきれず、CSを上げるどころか不満足につながる可能性がある。これを危惧した同相談室では、店舗でカメラの購入者に同相談室の電話番号が記載された名刺サイズのカードを配布するほか、同社のサービスのひとつである5年間保証の保証書にナビダイヤル番号を記載するかたちで徐々に告知していった。
同相談室の狙い通り、開設当初1日10件程度だったコール数は次第に増加。7月のコール数は計600件を数えた。同じく8月は800件、9月は1,000件と緩やかに増えていった。開設から1〜2カ月経つと、2度目、3度目の問い合わせをしてくるお客様が増えると同時に、PCとの接続に関する問い合わせなどカメラの範囲を超えた問い合わせが寄せられるようになってきた。さらに、5年間保証に関する問い合わせなども寄せられるようになり、総合的なCSの観点から、お客さまなんでも相談室を開設するに至ったのである。デジカメなんでも相談室の開設から4カ月後のことであった。
そして、最後に開設されたのが、中古買取下取受付である。
同社のサービスのひとつに中古カメラの下取りと買い取りがある。当初、新宿店からスタートした同サービスは、現在では新宿店と秋葉原店を中心に、全国各地の主要都市にある店舗に中古買い取りセンターを開設するまでに拡大している。
2006年5月からは、地方紙に月2回、全国紙に月1回の頻度で広告を出稿するようになった。そのため広告掲載日には、多くの問い合わせ電話が発生する。そこで、新しい広告施策の開始に合わせて中古買取専用の窓口も開設し、お客様からの問い合わせに迅速で的確な対応を実現すると同時に、店舗スタッフの業務負担の軽減を図ったのである。
コールセンターの奥には、お客様対応を表彰された賞金で購入した冷蔵庫とポットを配置。デスクの周りには個々人が好きな写真やグッズが置かれている
社内ヘルプセンターとして理解を得る
お客さまなんでも相談室、中古買取受付は、デジカメなんでも相談室と同じインハウスコールセンターで運営している。電話回線はいずれもNTT コミュニケーションズのナビダイヤルを導入。仮に、今後コールセンターの規模拡大などにより移転が必要になっても電話番号を変える必要がないことから、ナビダイヤルの導入を決定した。
3窓口ともに、電話での受付時間は午前10時から午後7時まで。年中無休で受け付けに当たっている。
現在ではスタッフが1名増えて、計4名ですべての問い合わせに対応。電話はもちろん、eメールの対応まで4名でこなしている。
3窓口の月間受付件数は、電話が約2,500件でeメールが約1,500 件となっており、前述の通り増加傾向にある。当初の予想では、デジカメなんでも相談室においては撮影テクニックに関する問い合わせが多いと想定していたが、実際はPCへの画像取り込みなど撮影した後の処理に関する問い合わせが多く寄せられている。
また、お客様からだけでなく、店舗スタッフからの問い合わせも増えており、現在では全体の約15%を占めるまでになっている。インハウスコールセンターを開設した当初は、社内からコスト部門ととらえられていたが、時間が経つにつれて社内ヘルプデスク的な認識が広まり、次第にコールセンターの存在が理解されるようになってきたという。
センター内には、各メーカーのカメラと取扱説明書が常備されている。ときには、カメラを手にしながら対応することもある
働きやすい環境を作りストレスの軽減を図る
インハウスコールセンターの運営に当たって同社が留意している点のひとつに、スタッフのストレス解消が挙げられる。
社内からコスト部門と見られることに対するプレッシャーに加えて、コールセンターにはどのような質問を投げかけられるか、お客様と話してみるまでわからないというプレッシャーもあるのである。同社では、用件ごとに電話番号を変えることで問い合わせ内容の大枠を把握しているが、デジカメひとつとっても問い合わせ対応は多岐にわたる。中でもお客さまなんでも相談室については、カバー範囲が広いだけに内容が予測しにくいのが実際のところだ。
こうしたストレスを軽減しようと、同社では、子どもの写真、お気に入りの小物などの持ち込みを可能にしている。また、服装もスーツにネクタイではなく、夏はクールビズ、冬はウォームビズを採用。休憩は自由に取れるようにした。
同社には、お客様からお褒めの言葉をいただいた店舗を表彰する制度がある。コールセンターを利用したお客様からお褒めの言葉をいただいた際には、店舗のケースに倣ってコールセンターが表彰された。このとき贈呈された賞金でポットと冷蔵庫を購入し、センターのスタッフで利用している。快適な居住空間作りにも努めているのだ。
コールセンターの将来像は「カメラの駆け込み寺」
インハウスコールセンターの開設から1年が経過した。試行錯誤を続け、ようやくセンター運営のノウハウが蓄積されてきたところだが、まだまだ日々の応対業務に精一杯といったところ。同社では、コールセンターに集まったお客様の声の分析と社内へのフィードバックを今後の課題としている。
今のところ、きちんと仕組みを作って定期的にお客様の声をフィードバックする体制こそ確立していないものの、お客様の声を社内に伝える活動は行っている。具体的には、社内スタッフのマニュアルの見直しなど、お客様の視点を必要とするプロジェクトへの参加が挙げられる。コールセンターのスタッフは、お客様対応に社内への情報発信にと常に大忙し。応対品質を高めつつ、お客様の声の分析とその活用を行っていくには、今後、体制の見直しや新たなチャレンジが必要になるだろう。
同社が描く将来的なコールセンター像は、カメラのことで困っているすべての人を助ける「カメラ駆け込み寺」である。同社でカメラを購入したお客様はもちろんのこと、見ず知らずのカメラ屋さんからも問い合わせが入るようなカメラの相談窓口になることを目指しているのだ。「カメラ駆け込み寺」を目指して歩み始めた同社に、これからも注目していきたい。