コンタクトセンター最前線(第30回):コールセンターは通信販売の要 さらなるプロフィット化を目指す

(株)ドクターシーラボ

(株)ドクターシーラボは、肌のトラブルに悩むすべての人々を助けたい…という思いから、クリニックの患者に提供していた基礎化粧品の通信販売をスタート。 その後、 販売チャネルの開拓やアイテム数の拡大に努め、わずか5年の歳月で、 119億円を売り上げるまでに成長した。 売上増はコール増でもある。 右肩上がりに増え続けるコール数に、同社はどのように対応したのか。 また、現状の課題と今後の展開について話を聞いた。

本社内に140ブースのインハウス・コールセンターを開設

 皮膚科医であり、現取締役会長の城野親徳氏が開発した「アクアコラーゲンゲル」を中心に、専門医が開発するメディカルコスメの通信販売を 1999年に開始した(株)ドクターシーラボ。同製品を含むスキンケア製品6アイテムからスタートして、現在ではメイクアップ、ボディケア、美容機器、サプリメントなどを幅広く品揃えしている。アクアコラーゲンゲルは、これひとつで化粧水、乳液、美容液、美白液、化粧下地の5ステップが完了するという使い勝手の良さと優れた機能で、一躍人気の製品になった。さらにアイテムを拡大したこともあり、2000年1月期に売上高3億3,700万円を記録した後は、年を重ねるごとに売り上げを伸ばし、2004年1月期には119億4,200 万円を売り上げた。現在、売上高の6割が通信販売、4割が店鋪販売によるものとなっている。
 売上高の過半数を占める通信販売の要となるのが、電話やインターネットで注文や問い合わせなどを受け付けるコールセンターだ。同社ではコールセンターを顧客と直に接する重要なチャネルと位置付けており、倍々ゲームで拡大し続ける売り上げに合わせて、順次、受付体制を拡充していった。現在は、東京・恵比寿の本社内に140ブースのセンターを設けている。

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サンプルに同梱しているパンフレットでは、アクアコラーゲンゲルの誕生ストーリーを丁寧に説明している。手書き風文字が暖かみを感じさせる

低コストかつ高機能なコールセンターを構築

 コールセンターの具体的な業務内容は、受注にはじまり、肌の相談や製品の使用法に関する問い合わせ受付、返品や交換およびそのほかの問い合わせ受付、アンチエイジングライン「ジェノマー」に関する問い合わせ受付、若年層向け基礎化粧品「ラボラボ」に関する問い合わせ受付のほか、テレビCM用サンプル請求受付、テレビショッピング用トライアルキットの受注まで多岐にわたる。
 各電話窓口には、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを導入。それぞれに異なるフリーダイヤル番号を設定している。
 導入の理由は、お客様は無料で通話できるということが広く浸透していることが挙げられる。メディカルコスメはカウンセリングが重要であることから、お客様に納得のいくアドバイスをするためにも、フリーダイヤルの導入は不可欠だったのだ。
 加えて、充実したオプションサービスも採用の決め手になったという。同社では、用件に応じて適切なコミュニケータに電話がつながるようIVRによるコールの振り分けを実施しているが、ここにフリーダイヤルのインテリジェントサービスを活用しているのだ。同サービスはNTTコミュニケーションズのネットワーク上でCTIを実現している。そのため、PBXなどの導入は不要。加えて、コールの振り分けやガイダンス内容はコールセンター側でフレキシブルに設定・変更することができる。同社では同サービスを活用することで、イニシャルコストを最小限に抑えながら、高機能なコールセンターを構築することに成功したのだ。
 受け付けに当たるコミュニケータは、用件ごとに専任制を採用している。最近は、マルチスキルのコミュニケータを育成し、スキルベース・ルーティングを推進するコールセンターもあるが、受注と美容相談では求められるスキルが異なることがその理由だ。一人ひとりが専門的なスキルを高めることによって、効率アップと顧客満足度の向上も期待できる。
 受付時間帯は、窓口ごとに異なるが、受注は年中無休の午前9時から午後9時まで。それ以外の各種問い合わせおよび相談は、午前10時から午後7時までで、日・祝日は休みとなっている。

アウトソーシングを活用して短時間で大量のコールに対応

 通信販売における販売促進チャネルは、テレビ、インターネット、そして会員のための情報誌「Ci:Lover(シーラバー)」や総合カタログなどの紙媒体であるが、中でもテレビCM やテレビショッピング番組で製品を紹介したときには、直後から大量のコールが寄せられる。そして、10分を過ぎると、コール数は減少に向かう。ジェットコースターのように、一気に高く上ったと思ったのもつかの間、あっという間に急降下していくのである。
 通信販売の場合、放棄呼は販売機会の喪失を意味する。サンプル請求者の製品購入率が高いという同社にとって、最大の課題は放棄呼ゼロにすること。しかし、短時間で大量のコールに対応するには、たくさんの人材と電話回線数の確保が必要であり、インハウス・コールセンターでそれを実現するのはリスクが大きい。そこで同社では、テレビショッピングの受注業務およびテレビCMによるサンプル請求受付の電話窓口を、テレマーケティング・サービス・エージェンシーにアウトソーシングすることで、受付体制の強化を図っている。
 また、既存のお客様に告知する受付先と新規のお客様に告知する受付先を分けることで、既存のお客様の注文や問い合わせを妨げないという効果も得られている。
 同社がアウトソーシングしているのはこの業務だけで、既存顧客からの注文受付や美容相談、各種問い合わせについては、コールセンター開設当初よりインハウスで対応している。これは、すべてをアウトソーシングに頼ってしまっては、社内にノウハウが蓄積されないという考えによるもので、取締役会長の城野氏の意向であるという。

音声認識を活用したコールバック・システムで販売機会喪失を防止

 同社では、人海戦術だけでなく、システムによるオペレーション・サポートにも力を入れて、販売機会の喪失防止に努めている。
 そのひとつが、音声認識技術を活用したコールバック・システムだ。待ち呼を自動的にIVRに振り分けて、お客様に音声で名前と電話番号を録音してもらい、しばらくしてからコールバックしている。
 これを実現しているのが、フリーダイヤルCRMパッケージだ。録音された音声情報は自動的にテキスト化され、NTTコミュニケーションズ内の CRMデータベースに蓄積される。ドクターシーラボ側では、Web上でデータベースの参照と出力ができる仕組みだ。IVRや音声認識サーバ、音声合成サーバ、CRMデータベースなどはすべてNTTコミュニケーションズ側のものを使用する上、コミュニケータがコールセンターで受け付けた注文などのデータもCRMデータベースに登録できるため、低コストで一元管理ができるというメリットがある。

お客様の声を製品やサービスに活かす

 各窓口の告知媒体には、テレビ、インターネット、会員のための情報誌「Ci:Lover」、カタログ、パンフレット、製品パッケージ、サンプルに同梱する各窓口の一覧表を活用している。
 写真では見難いかもしれないが、「Ci:Lover」の巻末には、各問い合わせ窓口が掲載されており、フリーダイヤル番号の下には、比較的つながりやすい時間帯を案内している。ちょっとした工夫が放棄呼を減少させると同時に、顧客満足度の向上にもつながるのだ。
 受付状況を見ると、1カ月当たりの平均コール数は、受注が4万5,000〜5万件。サンプル請求が4万件。テレビショッピングによる受注が5,000件、美容相談および各種問い合わせが 5,000件。応答率は97〜98%となっている。
 コールセンターに寄せられたお客様の声は、サービス向上や製品の開発・改良などに役立てられている。お客様の声が基となって誕生した製品の一例として、ボディ用保湿ゲル「アクアコラーゲンゲル ボディ」が挙げられる。これは、同社の主力製品「アクアコラーゲンゲル」を愛用するお客様から寄せられた「ボディ用も欲しい」というニーズに応えるかたちで開発された。
 このほか、よくある問い合わせとその回答をホームページにアップ。コールセンターの受付時間外でも、お客様が知りたい情報を得られるよう努めている。同社では、セルフサービスを充実させることにより、コール数の伸びを抑える効果も期待しているのである。

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注文や肌トラブルに関する相談など、各種窓口の告知に使用されている媒体の数々。左から、基礎化粧品から美容機器まですべての製品を網羅した総合カタログ、昨年 12 月に発売を開始した若年層向け新ブランド Labo Labo のカタログ、会員のための情報誌 Ci:Lover

カウンセリング力の向上が課題

 アクアコラーゲンゲルは、医薬部外品として承認されている。しかし、他社製品との差別化のポイントを明確にするには、メディカルコスメというだけでは少々弱い。そこで同社は、肌相談を通じてお客様の潜在ニーズを読み取り、最適な製品をお勧めするカウンセリング力で差別化を図ることが必要と考えている。
 これには、お客様の立場に立って聞く力を高めることと、製品や美容に関する豊富な知識が不可欠。今後、同社では既存コミュニケータのフォロ−研修に力を入れていきたいとしている。
 カウンセリング力が高まれば、1顧客当たりの購入金額もアップする。同社では、コールセンターのさらなるプロフィット化を目指し、一歩一歩着実に、日々の業務に臨んでいきたいとしている。

On-line-Ci-Shop ヘルプ・お問合せ-

香港にも店鋪をオープンした同社では、日本語、英語、中国語のホームページを用意している。左は日本語サイトのトップページ。「ヘルプ・お問い合わせ」をクリックすると、よくある質問と回答を閲覧できる。カテゴリーごとに分かれているので、知りたい情報が探しやすいのが特徴。セルフで解決できない場合のために、電話による問い合わせ窓口ページへすぐにジャンプできるよう設計されている


月刊『アイ・エム・プレス』2004年6月号の記事