通信ネットワーク最前線(第55回):お客様とともに育てる共創ブランドを目指して

(株)アユーラ ラボラトリーズ

東洋思想と最新の技術の融合によって生まれた化粧品を取り扱う(株)アユーラ ラボラトリーズ。同社のお客様窓口、アユーラ コミュニケーションスタジオにおける、お客様との関係作りをはじめとする各種取組と今後の展開を紹介する。

東洋思想と最新の製造技術を融合した商品を開発

 1994年10月に設立した(株)アユーララボラトリーズは、「アユーラ」ブランドの開発・製造から販売までを一貫して行う化粧品メーカー。その商品ラインナップは、基礎化粧品からベースメイク/ポイントメイク用品、さらにはボディケア用品にいたるまで多岐にわたる。
 同社の根幹となるビジネスコンセプトは、お客様の声をかたちにしながら、お客様と「アユーラ」ブランドを共創していくこと。
 女性を取り巻く環境の変化にともない、肌のトラブルは複雑化、かつ深刻化している。同社では、コミュニケーションスタジオに寄せられた声をもとに女性が抱えている肌の悩みやその要因を明らかにし、商品開発に反映。東洋思想と肌の営みを科学した最先端の技術を融合させ、五感に心地よく働きかけながら、心身に良い循環を生み出し、毎日のストレスやトラブルに負けない、生命力に満ちた元気な肌づくりを提案している。
 「アユーラ」というブランド名は、サンスクリット語で「生命」を意味するAYUS=アユースという言葉から生まれたもの。シンボルマークの生命樹には、一粒の種から発芽し、世界を包み込むまでに成長した樹のもとで、あらゆる動物と植物が調和し、お互いを活かし合っている小宇宙が表現されている。

コミュニケーションスタジオはコミュニケーションの基幹兼情報発信基地

 実際に「アユーラ」ブランドの販売を開始したのは1995年3月。同社では、これに先駆けて1995年2月、アユーラ コミュニケーションスタジオを東京・表参道の本社内に開設。商品の販売開始に向けて行われた、事前トライアルサンプルの請求受付窓口業務からスタートした。
 現在のコミュニケーションスタジオの役割は、①コンシューマー機能、②店頭・本部支援機能、③遠隔地を対象としたダイレクトオーダー機能の3つに大別することができる。
 ①のコンシューマー機能とは、お客様との出会いを広げ、絆を深めることを目的とした、サンプル請求や資料請求の受け付け、各種問い合わせ対応、クレーム対応など。それぞれ電話、FAX、Eメール、携帯電話、店頭で購入者に配布しているコミュニケーションハガキなどさまざまなメディアを活用して受け付けると同時に、顧客からの請求に基づく資料やサンプルの発送作業も担っている。
 このほか、同社からお客様への情報は、すべてコミュニケーションスタジオを通して発信されている。具体的には、ホームページや24時間FAX、携帯電話、会員誌「アユーラプレス」を活用した情報発信を展開。「アユーラプレス」の発行頻度は年4回となっている(資料1)。
 ②の店頭・本部支援機能は、平たく言うと店舗と本部で情報を共有するための橋渡し機能だ。具体的には、コミュニケーションハガキを、コメントの内容に応じて、売場環境、応対、サンプル、在庫、商品の評価といった項目ごとに分類。大量のハガキの中から代表的なものを抜き出してファイリングし、回覧している。また、前述のコミュニケーションハガキ、電話、FAX、Eメールなど全対応チャネルで寄せられた内容を資料請求、サンプル請求、ショップ紹介、その他問い合わせと要件ごとに集計した「スタジオレポート」を作成。これもコミュニケーションハガキ同様に回覧することで、本部内での情報の共有化を図ると同時に、必要な情報を各店舗にフィードバックしている。
 コミュニケーションスタジオでは、クレームを重視しており、必要に応じていつでもキーワード検索ができるようデータベース化している。
 ③のダイレクトオーダー機能は、店舗が近くにないお客様への「買い場」を提供するというもの。東京・大阪といった大都市には店舗が充実しているが、中には1~2店舗しか出店していない県もある。しかし、そうした地域においても、雑誌広告で商品を知り、購入を希望するお客様が少なくない。情報だけ提供して、購入できないという状況はお客様に対して失礼であるため、居住地域に関わらず商品を気に入ってくださったお客様が購入できる仕組みを整えているのだ。受け付けには、電話、FAX、ホームページ、郵便を活用している(資料2)。

20010401

購入者に送付される「アユーラプレス」の2000年秋号。
封筒の中面にはショップリストを記載するといった工夫が施されている

【資料2】

オーダーフォームは、商品カテゴリーごとに設けられている。
希望の個数を入力し、「買い物カゴ」をクリック。最後に注文書に必要事項を記入すれば
オーダーが完了する仕組みだ


さまざまなメディアを採り入れお客様の選択肢を拡大

 コミュニケーションスタジオは10名前後のスタッフで運営されており、その内訳は、お客様からの電話やFAX、Eメールなどに対応するスタッフ、情報の仕分けやデータベースへの登録・管理をするスタッフ、ホームページのコンテンツ作りやメンテナンスを担当するスタッフ、資料やサンプルの発送作業を担当するアルバイトとなっている。
 受付時間帯は、午前10時から午後6時までがオペレータ対応。午後6時以降は、資料請求、およびサンプル請求の受け付けとショップ紹介をIVRで行っている。たとえば資料請求の場合、まずはじめに郵便番号を入力した上で、続いて音声で住所を録音していただく。これを、翌朝スタッフが聞き起こし、住所など顧客情報を入力。ラベルを出力し、資料を発送している。
 またFAXでは、資料請求、サンプル請求受付、ショップ紹介のほかに、商品リスト、美容アドバイス、メーキャップレッスンといった情報も提供。さらにホームページでは、これらの情報に加えて、オンラインカウンセリングにより、肌に合わせた商品を紹介するなど、充実した情報を提供している。加えて同社では、携帯電話の利用が増加していることから、携帯電話用のホームページも用意。外出先から最寄りのショップを検索したり、最新情報をチェックできる環境を整えている。
 コミュニケーションスタジオの告知媒体には、ホームページや雑誌広告のほか、各商品のパンフレット、店頭で配布している商品カタログ「MEETING PRESS」を活用している(資料3)。

【資料3】

月刊女性誌「Oggi」2001年4月号に掲載された広告。フリーダイヤルとFAX情報サービスの番号のほか、ホームページアドレスなどすべてのメディアを告知。お客様の都合に合わせたメディアで対応ができることを強調している


フリーダイヤル番号を使い分けスムーズで的確な対応を実現

 電話での受け付けには、フリーダイヤルを導入している。同社では導入の理由として、時間を気にせず丁寧なカウンセリングを実施することと、お客様の利便性を高めることの2点を挙げている。
 フリーダイヤル番号は、各種問い合わせ受付用とダイレクトオーダー受付用の2種類が用意されており、それぞれ、専任のオペレータにつながる仕組みになっている。フリーダイヤル番号を使い分けることにより、内容の予測が難しく、幅広く深い知識が必要とされる各種問い合わせやクレームへの対応をスムーズ、かつ的確に行える体制を整えているのだ。
 現在、コミュニケーションスタジオでは、真剣にカウンセリングを受ける場合には自宅などの固定電話からかけてくるだろうという予測のもとに、携帯電話・PHSからのフリーダイヤルへの着信は受け付けていない。しかし、「アユーラ」のターゲットである20代女性の携帯電話・ PHSの普及率が高いことに加えて、最近では固定電話を持たない単身者も増えていることから、今後は検討が必要になってくると考えている。

無人メディアで大量のアクセスに対応

 事業開始から約6年が経過した今、2001年2月末現在の店舗数は170店に達している。広告効果と順調に出店数を伸ばしてきたことにより、「アユーラ」の認知度は高まり、今や人気化粧品ブランドの地位を確立したといっても過言ではないだろう。
 認知度の高まりと比例して、コミュニケーションスタジオへのアクセス数は確実に増加。ここ1~2年で飛躍的な伸びを示しているという。
 コミュニケーションスタジオへ寄せられる各種問い合わせ、およびダイレクトオーダーの1カ月当たりの受付件数は、電話、FAX、Eメール、携帯を合わせて約9,500件。昨年と比較すると約1.5倍に増加しているという。このうち、最も多い用件は資料請求で、次に多いのはサンプル請求となっている。
 コミュニケーションスタジオが、開設当初と変わらない人員体制でこれだけのアクセス数に対応できたのは、IVRの導入と携帯電話用ホームページへの対応開始が大きく寄与していると言える。ちなみに、オペレータ対応が終了する午後6時から午前10時までにIVRで対応する件数は全体の約40%、携帯電話用ホームページへのアクセス件数は約30%となっている。
 また、ホームページへのアクセス数は1カ月当たり約50万PV。こちらは、3年間で約3倍に増えているという。

店頭と同レベルの対応を目指して

 コミュニケーションスタジオでは、オペレータ対応において注意していることが2つあるという。ひとつは、システマティックな対応にならないようにすること。もうひとつは、百貨店で行っているキャンペーンをはじめとする、コミュニケーションスタジオでコントロールできない情報を把握することだ。これには、連絡書を用いて営業担当部署との連絡を密にすることで対応している。
 また、対応の基本となるのは商品知識であるため、電話でも店頭と同レベルの対応ができるよう、店頭の美容部員が受ける新商品の研修に参加するほか、コミュニケーションスタジオでも教育を行い、オペレータのレベルアップに注力しているという。

3つの機能を深め、お客様との絆を強化

 現在、コミュニケーションスタジオでは、ソフト面とハード面の双方の課題を以下のように挙げている。
 まずソフト面の課題は、店頭と同レベルの対応をいかに実現するかということである。
 オペレータ対応で最も多い用件は、無人メディアでは対応ができない、商品の詳細説明とカウンセリング。店頭であれば、お客様と対面の上での対応が可能なだけでなく、商品を目の前にして説明することができるため、わかりやすく親切な対応をすることが比較的容易だ。これに対して、電話の場合は、お客様の肌の状態も見ることができないし、お客様に商品をお見せすることもできない。このような状況で、いかに店頭と同レベルの対応を実現するかが課題となっているのだ。
 次にハード面の課題は、キャパシティの問題である。
 前述の通り、「アユーラ」の認知度が高まるにつれて、お客様からのアクセス件数が飛躍的に増加している。今後もアクセス増が予想される中、現在の受付体制に限界を感じているのである。同社では、お客様の声をダイレクトに吸い上げるためには、従来通り、インハウスで対応することが望ましいと考えている。距離が離れれば離れた分だけ、コミュニケーションスタジオに入ってくる情報が薄くなることを危惧しているわけだが、現在の受付体制では今後、対応しきれなくなることは明らかだ。現状のままインハウスで受付体制を拡大するのか、業務の一部をアウトソーシングするのかが思案のしどころであるとしている。
 今後、コミュニケーションスタジオでは、これらの課題を解決するとともに、活動の基本となるコンシューマー機能、店頭・本部支援機能、ダイレクトオーダー機能をより一層拡充し、お客様との絆を強化していく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年4月号の記事