通信ネットワーク最前線(第51回):カスタマーサービスセンターをコアに営業活動と顧客サポートを展開

エトナヘイワ生命保険(株)

2000年4月1日に社名を変更して新たなスタートを切ったエトナヘイワ生命保険(株)。同社が9月に本格稼働を開始した業界初、24時間・365日有人対応のカスタマーサービスセンターの現状と今後を探る。

業界初、24時間・365日有人対応のコールセンターを開設

 エトナヘイワ生命保険(株)の前身は、1907(明治40)年の創業以来、保険サービスの提供に努めてきた平和生命保険(株)。平和生命保険(株)では1999年11月、米国の大手保険会社エトナ・インクと資本提携を締結し、2000年4月1日より社名を変更。長年にわたる実績に、グローバルな品質とノウハウを導入することで、生命保険の新しい可能性を拓くべく、“歴史あるフレッシュカンパニー”として新生した。
 現在、これまでに培った顧客との関係を大切にしながら、「商品・顧客サービスの両面で積極的な改革・差別化を行う」という理念を掲げ、日々の業務に取り組んでいる。
 同社では、顧客サービス向上の一環としてCRM事業部内のカスタマーサービスセンターにコールセンター業務を追加。24時間・365日対応のコールセンターを設置し、1カ月間におよぶ試験運用を経て、2000年9月1日より本格稼働に踏み切った。
 カスタマーサービスセンターの特徴は、24時間・365日、専任のスタッフが対応すること。これは業界初の取り組みで、24時間いつでも顧客のそばにいる、存在感のある企業となることを第一の目的としたもの。また、競合他社との差別化を図るために、他社にない優れたサービスを提供することが必要と考えた結果でもあった。肉声で対応することで顧客の印象に残る、温かみのあるサービスを提供することを狙いとしている。
 最近の一般的なコールセンターにおける傾向として、IVRを利用したセルフサポートが注目されており、既に採用している企業も多い。しかし、IVRでは低コストで大量のコールに対応できるというメリットがある反面、アナウンスが長くなりがちで、用件にたどり着くまでに時間がかかるというデメリットがある。同社では、このようなIVRのデメリット、およびコールセンターの規模が限られていることを鑑み、今後もIVRを導入しない方針を掲げている。

企業認知の浸透を目的としたイメージポスター

企業認知の浸透を目的としたイメージポスター

フリーダイヤルでカスタマーサポートと営業サポートを推進

 カスタマーサービスセンターの業務内容は大きく2つに分けられる。ひとつ目が、全国の保険契約者、および見込客を対象としたカスタマーサポート。2つ目が、全国110の営業店で活動する約1,600名の営業職員と、個人・法人を合わせて約300の代理店を対象とした営業サポートである。
 具体的な内容を見ると、カスタマーサポートは、保険商品の資料請求、保険商品、および同社に対する問い合わせ受付。営業サポートは保険商品や約款に関する問い合わせや、既契約に関する個別の問い合わせ受付となっている。
 受付窓口には電話とEメールを活用。電話にはNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを導入している。
 導入の目的は、サービスの充実と、全国どこからでも気軽に電話をかけていただける環境を整えること。ひとつの番号で保険契約者、見込客、営業職員、代理店からの問い合わせを受け付けている。
 回線数は4回線。受付体制に応じて契約回線数の範囲でリアルタイムに使用回線数を変更できる「回線数変更サービス」、全回線が話し中の場合にそのままお待ちいただくようメッセージを流し、回線が空き次第接続する「お話し中待ち合わせサービス」といったフリーダイヤルの付加サービスを利用。センター運営の効率化を図っている。
 また、携帯電話やPHSからの着信も可能。営業職員等が外出先から問い合わせをする場合にも対応できる体制を整えている。

ホームページ上でカスタマーサービスセンターの開設を告知するとともに、サービス内容や受付体制といった概要を丁寧に紹介している ホームページ上でカスタマーサービスセンターの開設を告知するとともに、サービス内容や受付体制といった概要を丁寧に紹介している

ホームページ上でカスタマーサービスセンターの開設を告知するとともに、
サービス内容や受付体制といった概要を丁寧に紹介している


実務経験豊富な社員をテレコミュニケータに抜擢

 対応に当たるのは、11名のテレコミュニケータ。5名の昼間チームと6名の夜間・深夜チームに分かれており、さらに昼間チームは、平日の昼間対応グループと休日の昼間対応グループに分かれている。テレコミュニケータは全員が社員。カスタマーサービスセンター開設に当たり、実務経験豊富な人材を抜擢した。
 シフトは、24時間を8時間ごとに3つに分けてテレコミュニケータを配置。平日の日中9時から17時までは3名、その他の時間帯は2名で対応に当たっている。コールが多い時には要員を追加するなど、コールの状況に応じてフレキシブルな対応も可能。
 また、Eメールへの対応も同じスタッフが担っている。
 保険契約者と営業職員、および代理店には、本社と営業店で利用しているオンライン端末を照会しながらオペレーションを実施。オンライン端末には、契約者の住所、氏名、契約内容、変更履歴といった基本情報のほか、代理店の所属営業店、保険商品の取扱規定といったあらゆる情報が登録されている。そのため、個別の契約内容に関する問い合わせには、個人データ保護の観点から事前に本人確認を実施し、契約者とその取扱者(営業職員、および代理店)に限定して回答している。
 一方、見込客へは、ペーパーベースのマニュアルを参照しながら商品説明や問い合わせに対応している。

カスタマーサービスセンターのオペレーション風景

カスタマーサービスセンターのオペレーション風景

顧客対応は最優先業務

 カスタマーサービスセンターでは、実務経験豊富な社員をテレコミュニケータに採用すると同時にオンライン端末でオペレーションをサポートしているため、さまざまな問い合わせにその場で回答することが可能だ。しかし、「保険料の集金に来て欲しい」といったお申し出など、用件によっては、全国の営業店や他の部署にFAXやEメールで対応を依頼することが必要となる。そのような場合には、依頼を受けた者が他の仕事をしていたとしても、カスタマーサービスセンターからの依頼を最優先して対応することを徹底しているという。
 このことからもわかるように、同社におけるカスタマーサービスセンターの位置付けは非常に高い。同社では、より一層カスタマーサービスセンターへの社内的理解を深め、テレコミュニケータを尊敬を集める役職にすることを目指している。さらに同社では、カスタマーサービスセンターを重要な顧客接点と位置付け、同社の“顔”へと育んでいく意向。したがって、センター業務のアウトソーシングはするべきではないと考えている。

認知度の高まりとともにコール数が増加

 カスタマーサービスセンターに寄せられるコール数は、9月が約800件、10月が約1,300件と徐々に増加。平均通話時間は約5分。長いものでは1時間にもおよぶ。
 Eメールによる問い合わせ件数はごくわずかであり、これまでのところ5~6時間以内の返信が実現している。返信に要する時間は用件によって異なり、たとえば、契約内容の相談であれば30分程かかるが、契約者からの住所変更であれば数分で完了する。
 同社では、コール数の増加について、保険商品のパンフレット、チラシ、ホームページ、契約者への諸案内を活用した告知により、フリーダイヤル番号が浸透してきたためと見ており、今後もさらに増加するものと予測している。
 これまで、企業のイメージアップや認知度の向上を目的に新聞広告や交通広告を出稿してきたが、ゆくゆくはカスタマーサービスセンターの告知にもこれらの媒体を活用していく意向。また、2001年のカレンダーにカスタマーサービスセンターのフリーダイヤル番号(0120-817-024)の語呂合わせにも使われている「エトナは24時間」というフレーズを印刷し、同社を知らない一般の顧客にも存在を広く浸透させていくことを狙っている。

代理店や営業職員に
より配布される保険商品のパンフレット。裏面には、カスタマーサービスセンターのフリーダイヤル番号が記載されている

代理店や営業職員により配布される保険商品のパンフレット
裏面には、カスタマーサービスセンターのフリーダイヤル番号が記載されている

教育と評価のポイントは“顧客の気持ちをどれだけ理解できているか”

 前述の通り、テレコミュニケータには実務経験が豊富な人材が採用されているが、電話応対をするにはコミュニケーション・スキルが必要。そこで同社では、社員教育を手がける(株)マネジメントサービスセンター(以下、MSC)に研修を委託し、電話の受け答えの基本からロールプレイングまでと、サービス・マインドの研修を実施している。導入研修の期間は4日間。中でも、サービス・マインドを重視しており、好感度の高い対応を目指している。
 その後は社内でフォローアップ研修を実施。モニタリングやテープチェックにより改善点を見つけ、アドバイスを行っている。
 評価には、MSCの指導のもとで作成した約20項目からなる評価チェック表を利用。「明るく対応しているか」「顧客の立場に立った対応ができているか」など“顧客の気持ちをどれだけ理解できているか”を重視した評価を行っている。
 現在同社では、お問い合わせをいただいた契約者、および資料請求者に礼状を送付。お問い合わせいただいたことへのお礼を兼ねて、カスタマーサービスセンターの対応の善し悪しを聞いている。
 しかし、同社からの投げかけまでに止まっており、レスポンスを取る仕組みができていないのが現状。そこで同社では、2001年1月をメドにアウトバウンド・コールによる顧客満足度調査を開始し、顧客の声を積極的に収集していく意向だ。

センター機能の拡充を図り顧客の声を経営方針に反映

 センターの本格稼働から約3カ月を経た現在、システム面、人材面におけるさまざまな課題が見えてきつつある。
 そこで同社では、それらの課題解決に向けて①情報技術の拡充、②コールセンター・スタッフの拡充、③テレコミュニケータのスキルの向上と均一化に注力していく意向。
 具体的に見ると、①については、現在、カスタマーサービスセンターで受け付けた対応履歴は、テレコミュニケータが電話を切った後、専用のデータベースに入力している。1件当たり約15分かかるため、これに平均通話時間の5分を加算すると合計20分を要するわけだ。また、応対の際もオンライン端末があるとはいうものの、個人の資質や経験に頼る部分が大きい。そこで同社では、2001年6月をメドにCTIを導入し、データベースとテレコミュニケータ端末を連動させることで、オペレーションのサポートを強化。また、後処理に必要な時間を短縮することで、テレコミュニケータの負担軽減に努めたいとしている。
 次に②については、今後、コール数の増加が予想されるため、受付体制を整えておこうというもの。
 そして③については、社員の中から経験豊富な人材を選りすぐっているため、それなりの対応はできるものの、すべての保険分野に精通しているわけではない。そこで今後は、このような原因から生じるオペレーションのバラツキを解消し、さらなる顧客満足度向上を目指していく。
 カスタマーサービスセンターのプロフィットは単純には測れない。しかし、顧客の声に耳を傾け、その声を経営方針に反映させていくことが大切であると考える同社では、これからもカスタマーサービスセンターをコアに、新規契約獲得、および契約者へのより良いサービスの提供を実現し、顧客の信頼を獲得、関係を強化していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2000年12月号の記事