セキュリティを柱に6つの事業を展開するセコム(株)。今回は、同社の新規顧客専用のサービスセンターとして1999年4月に本格稼働を開始したカスタマーセンターの取り組みについてお話をうかがった。
セキュリティをメインとした幅広い事業を展開
1962年7月に、日本初の民間警備保証会社として設立したセコム(株)。創業以来、セキュリティ事業を中核として事業を拡大し、現在では、セキュリティ、情報、メディカル、教育、損害保険、地理情報サービスの6つの事業を展開している。
常駐警備、巡回警備といった人的警備からスタートした同社では、1966年に、日本ではじめてオンラインによるセキュリティシステムを開発し、オフィスビルや店舗など法人を対象にサービスを提供。その後、全国展開を果たし、1975年には、通信回線を使って集中監視している管制業務にコンピュータを導入し、全国規模のネットワークを構築。1981年にはホームセキュリティシステムを開始した。
同社では、このネットワークの幅広い活用方法を模索し、1985年からはVANサービスなども手がけてきた。さらに1989年には、ネットワークをベースに未来社会の基盤となるシステム作りを目指すという「社会システム産業」の構築をビジョンに掲げ、安心で便利で快適なサービスの提供を実施している。同社では、これまでに蓄積してきたノウハウを活用した、お客様が快適な生活を営むために不可欠なサービスや機能の提供を通じて、セキュリティ事業が拡大していくことに期待。2000年3月末の総契約件数は61万4,000件、このうち法人が46万6,000件、一般家庭が14万8,000件となっている。
ホームセキュリティのパンフレット
商品数、契約数の増加にともないカスタマーセンターを開設
同社の中核事業であるセキュリティ・サービスは、機器の販売ではなく、侵入や火災を察知するセンサーやコントローラーを設置し、通信回線を用いてコントロールセンターで監視するというもの。異常を察知すると最寄りの緊急発進基地「デポ」から警備員が駆けつけ、必要であれば警察や消防署へ通報する仕組みになっている。
契約先を24時間体制で監視するコントロールセンターは、各都道府県に1カ所づつ、デポは全国900カ所に設置されている。
デポには営業員も配置されており、エリアごとにお客様を訪問して営業活動を行っているが、商品の多様化により営業員だけですべての営業活動をすることが難しくなってきた。そこで営業活動のひとつのツールとして電話に着目。また、それまで電話受付の窓口となっていたお客様サービスセンターが、契約数の増加にともない煩雑化してきたこともあり、新たにカスタマーセンターを開設することとなった。
豊富な商品知識を備えたアドバイザーによるライブ・オペレーションを実施
カスタマーセンターは、新規顧客専用のサービスセンターとして東京都三鷹市に設置。1999年4月より本格稼働を開始している。
業務内容は、①ホームセキュリティの問い合わせと資料請求、②日本各地の名産品の通信販売「セコムの食」の受注業務、そして③ミネラル水整水器「セコム水ホームユニット」の問い合わせ受付、およびフィルターの受注。新しい販売方法のノウハウを自社で蓄積するために、アウトソーシングはせず、すべてインハウスで対応している。
告知媒体は、セコムの食とセコム水が、カタログとホームページ、ホームセキュリティがTVCMをメインにパンフレット、ホームページなどで告知している。
受付時間帯は9時から20時まで、年末年始のみ休業となっている。受付時間外は留守番電話で対応。お客様がコールバックを希望した場合は、翌朝コールバックを実施。ただし、ホームセキュリティに関しては、NTTのボイスワープを利用してお客様サービスセンターに転送している。
ホームセキュリティの受付窓口にはフリーダイヤル電話とEメール。セコムの食とセコム水ホームユニットにはフリーダイヤルの電話とFAX、Eメール、ハガキのほか、ホームセキュリティの付加機能でホームバンキングやホームショッピング、健康医療相談などに利用できるタッチパネル式のスーパーターミナルを設けている。ちなみに、スーパーターミナルからの注文の場合、同社でお客様情報を把握しているため、お客様はほしい商品を選ぶだけでいい。
ホームページ上からの注文も、自動的にカスタマーセンターに流れてくるようになっているほか、受注後の全国各地の生産者への発注業務まで実施している。注文を受け付ければ必然的に問い合わせや返品、キャンセルも発生するため、これらにスピーディー、かつ、的確に対応するには業務を1カ所に集約するのが最適と考えたのである。
また同社では、商品ごとに異なるフリーダイヤル番号を設定して、スピーディーな対応に努めている。カスタマーセンター開設に当たり、IVRの導入も検討はしたが、オペレーターにつながるまでに20秒はかかってしまう。言い方を変えれば20秒待たせてしまうことになるため、それぞれ専門のフリーダイヤル番号を設けて受け付ける方がいいと考えたわけだ。
お客様からの電話には、アドイザーと呼ばれるテレコミュニケータが対応に当たる。アドバイザー数は約40名。商品ごと、あるいは業務別のチーム編成はなく、アドバイザーはすべての用件に対応することができるように教育されている。
セコムの食とセコム水については、カスタマーセンターだけで用件が完結するが、ホームセキュリティの場合、最終的には営業員が訪問をして契約するため、お客様から最寄りの事業所に情報を転送している。
サービスレベルは、着信から出るまでの時間が2~3秒以内、保留時間は15秒、それ以上お待たせする場合はお断りを入れてからコールバックしている。放棄呼はほとんどないという。
カスタマーセンター全体における各種問い合わせ、および資料請求の受付件数の割合は、インターネットと電話で半々。セコムの食は電話での受け付けがもっとも多く、電話での受注件数と、FAXとハガキの合計が同じくらい。インターネットとスーパーターミナルも着実に伸びている。
平均通話時間はセコムの食が4分20秒、セコム水ホームユニットが5分、ホームセキュリティが3から3分30秒となっている。セコム水ホームユニットのフィルターの注文に当たっては、ついでに問い合わせをするお客様も少なくないため、他の商品よりも通話時間が長くなる傾向があるようだ。ホームセキュリティの場合、電話では用件を完結せず、営業員につないでいるため、通話時間は短い。
また、Eメールでの問い合わせには、その日中に返信している。
安心で便利なトータルサービスのひとつとして、ホームセキュリティのお客様を対象にスタートした食の通信販売「セコムの食」。カタログは年4回、毎号20万部を発行。会員向け情報誌「ほっとらいふ」に同封して無料配布している。掲載商品は約100品目。同社の営業員が生産者を訪問し、品質と味を確かめて「セコムの食」のためにセレクトした、こだわりの逸品が満載
徹底した研修で応対スキルの維持・向上に努める
同社のアドバイザーはすべての電話に対応しているため、対応能力に加えて豊富な商品知識が必要。同社では、きめ細かい教育を実施し、アドバイザーの対応スキルの維持・向上に努めている。
応対の基本は、スピーディーな対応と安心感のある応対をすること。お客様は同社に対してスピードと安心感を求めているため、カスタマーセンターでもこれらに心がけている。
最近では、IVRを利用したセルフ対応を積極的に取り入れるコールセンターも多いが、同社は最終的にはライブオペレーションが重要であると考えている。お客様と最初に接するのはアドバイザーであるため、同社のイメージを良くするも悪くするもアドバイザー次第。また、ホームセキュリティに関する電話の場合には、その後、営業員の訪問につなげられるか否かもアドバイザーにかかっている。通常、電話での応対の場合、はじめの15秒で印象が決まるといわれているため、同社では、最初の15秒の大切さを強調して指導に当たっている。併せて、お客様から電話をいただいたこと、セコムを選んでいただいたことに感謝すると同時に、お客様が理解できないのは説明の仕方に問題があると考え、視点を変えたり言葉を変えて説明できるよう指導しているという。
実際の研修内容は、全体研修とテープチェック。全体研修はセンター長が行う商品スキルを中心とした研修で、テープチェックはスーパーバイザーやプロジェクトマネージャーが、テープを聞きながら約50の評価項目に沿ってオペレーションを診断するというもの。診断はスーパーバイザーだけでなく、アドバイザー自身も行い、両者の診断結果をすり合せて改善点を話し合う方法をとっている。一方的な評価ではなく、アドバイザーも納得する評価ができるよう配慮されているのだ。いずれも実施頻度は毎月1回。さらに、スーパーバイザーによるモニタリングと業務に関するヒアリングは毎日行っており、アドバイザーとのコミュニケーションに努めている。加えて、毎月最低でも1回は商品テストを実施。商品が多いため、せっかく覚えた商品知識を忘れないよう、思い出す機会を作っている。合格ラインは85点以上。後日、結果が出たら合格、不合格にかかわらず全員で再度同じテストを行い、できなかった部分を補っている。
このほか、スキルアップ研修とは別に、職場環境の問題解決などを目的とした月1回の個人面談と、半年に1度センター長による個人面談を行っている。
同社では、これらの研修やテストを実施することで業務に変化をもたせ、マンネリ化を防ぐことがアドバイザーのモチベーションにつながると考えている。たとえば全体研修の内容も、グループ討議や他部署の社員の話のほか、外部講師を招くなどバリエーションをもたせている。
特に表彰や報酬制度は設けていないが、半年ごとに勤怠状況や応対スキルの評価を行い、時給をアップしているという。同社では、時給アップ、表彰、金一封が出るということだけでアドバイザーのモチベーションが上がるとは考えていない。それよりも、アドバイザーひとりひとりをきちんと見て評価していることを示すことの方が大切であると考えている。
セコム(株)のホームページトップ画面 (URL:http://www.secom.co.jp)
硬い水と軟らかい水を作ることができる「セコム水ホームユニット」の注文画面。
画面下にカスタマーセンターのフリーダイヤル番号が明記されている
応対に集中するアドバイザーの様子
来春にはCTIが完成
現在同社では、CTIシステムの開発に取り組んでいる。目的は、CTIの導入によりアドバイザーを支援する環境を整え、対応スキルのさらなるレベル・アップを図ること。具体的には、商品知識をサポートすることによって、お客様に提案するスキルを高めていきたいとしている。
6月に交換機を入れ替えた時点でCTI構築の第一段階は終了し、アドバイザーの稼働率、各アドバイザーの電話受付件数、作業時間などのデータがとれるようになった。このデータはセンターの運営管理だけでなく、研修にも活用されている。
これまでは、入電件数や作業時間などはすべて紙ベースで管理しており、受付内容のデータベース入力も、電話を切ったあとに別途、行っていたが、年内にはオペレーションをしながらの入力が可能となり、大幅な業務の効率化が実現する。同社では、応対しながらの入力がアドバイザーの負担にならないよう、1年半やってきたノウハウを活かして操作性に優れた入力画面の作成に努めている。
アウトソーシングの場合、あらかじめ指定してある情報しか得られないが、インハウスであれば、それ以外でもお客様のニーズや重要だと思う情報があれば、即、関連部署にフィードバックして新商品の開発などに役立てることが可能だ。アウトソーシングとインハウスの違いはそこにもあると言える。同社では、そういうことも含めて、綿密な作り込みが必要であると考えている。
同社では、まずはじめにフロント部分を年内に立ち上げて、バックヤードの部分は来年の春以降に立ち上げる予定。
現在、ナンバー・ディスプレイは利用していないが、CTI構築が完成した時点で検討したいとのこと。お客様がデジタル回線でないと発信番号が通知されないため、発信情報をデジタルに変換する交換機が高額なことを懸念している。
また、企業はもちろんのこと一般家庭へもインターネットが普及していることを踏まえて、インターネット機能の充実を図る意向を示している。