1999年1月と7月に大規模コールセンターを開設し、テレホンバンキングの拡充を図っている(株)さくら銀行。同行の現状と今後の展開について話を聞いた。
大規模コールセンター開設でテレバンを主要チャネルに
(株)さくら銀行が最初にコールセンターを開設したのは、1989年のこと。1990年には、兵庫県明石市にコールセンター関西を開設。1991年には、1989年に開設したコールセンターを、コールセンター東京として千葉県船橋市に移転した。
その後、同行では、1998年4月、コールセンター東京にテレホンバンキング・システムを導入して、テレホンバンキング・サービス「さくらラヴィ」を開始した。いつでも、どこからでも電話1本で取り引きや問い合わせができるようにし、お客様の利便性を高め、顧客満足度を向上させること、および、各支店と業務の連携を図り、これまで店頭で対応していた業務の一部を電話に振り替えることにより業務の効率を高め、ローコスト・リテールを実現することが目的。
同行では、テレホンバンキングを各支店の補完業務に留まらず、リテール・バンキングの主要チャネルへと発展させるために、1999年1月には東京都目黒区に都銀最大規模のコールセンター本部を開設し、同時に新システムに移行。サービス名を「さくらテレホンダイレクト」と改め、サービスメニューも拡充した。半年後の7月には兵庫県神戸市にもほぼ同規模のコールセンター関西を開設。従来関西に開設していた明石市のコールセンターを集約して、全国3センター体制を整えた。
本部、東京、関西の全国3センター体制は、災害対応も考慮した結果。万が一、東京で災害が発生してコールセンター本部の機能がストップした場合でも、コールセンター東京と関西がこれに代わって通常通り業務を行うことができるわけだ。また、お客様のパーソナル情報や取引・折衝の履歴などを一元管理するコールセンター用サーバは、神奈川県大和市にある電算センター内に設置されているが、安全面を考慮し、兵庫県神戸市にバックアップ用の電算センターを設けている。
勘定系データベースとの連動で一括処理を実現
旧システムは勘定系データベースが独立していたため、コミュニケータが電話で受け付けた後、指示書を作成してバックヤードで処理をするという二重構造になっていたが、新システム(図表1)では、勘定系データベースを連動させ、コミュニケータがオペレーションをしながら画面に入力していくだけで取り引きを完了させ、その内容を記録できるよう改善。これにより、これまで処理が完了するまでに生じていた時間を短縮することができ、業務効率が飛躍的に向上した。同時に同社では、スタッフを増員するとともに、取引項目の追加や受付時間を延長するなどサービス内容を拡充し、お客様の利便性をさらに高めるよう努めた。
受付窓口には、フリーダイヤルを採用している。同行では、1992年より資料請求窓口でフリーダイヤルを利用していたが、「さくらテレホンダイレクト」をスタートするに当たって新たに回線数を増設し、お客様からの電話に備えた。フリーダイヤル番号の告知には、店頭に「さくらテレホンダイレクト」のパンフレットを置いたほか、テレビCM・新聞・雑誌などのマス媒体を活用。ホームページでも告知を行っている。
また、コールセンターで働くスタッフも大幅に増員。現在、コミュニケータ、スーパーバイザー、マネージャー等、3センター合わせて約500名のスタッフが従事している。もともと、コールセンター本部には170席、コールセンター東京には30席、コールセンター関西には150席の合計350席のキャパシティがあるが、コールセンター東京以外は開設から間もないためフル稼動には至っていない。同行では、2000年の春までには3センター合わせて350席、スタッフ数1,000名での受付体制の確立を目指している。
店頭に置かれている「さくらテレホンダイレクト」のパンフレットと申し込み書
その他商品のパンフレットにもフリーダイヤル番号を記載し、徹底した告知を行っている
独自の工夫を凝らした音声応答システム
「さくらテレホンダイレクト」は、口座さえ開設していれば、別途申し込みをしなくても、ほぼすべてのサービスを利用できる仕組み。ただし、振り込みや振り替えなど、あらかじめ登録が必要なサービスや、外貨預金を利用する場合には、別途、申し込みが必要となる。
受付時間はサービス内容により異なっており、あらかじめ登録してある口座への「振込・振替」と「資料請求」は24時間、「普通・貯蓄・当座預金残高・入出金内容照会」と「キャッシュカードの紛失届け」は午前7時から午後11時まで、「住所変更」「各種相談・問い合わせ」は午前9時から午後9時まで。土・日・祝日は午後5時までとなっている。サービス内容を問わず、入り口はすべて音声応答装置で受け付けており、顧客が希望するサービスコードを入力すれば、自動的に自動音声で対応するものとコミュニケータが対応するものに振り分けられる。
最も利用が多い「普通・貯蓄・当座預金残高・入出金内容照会」を例にしてサービス手順を追ってみよう。まず、フリーダイヤル0120-506-390へ電話をかける。アナウンスに従いサービスコード「1」と#を押し、さらに、残高照会の場合は「1」、取引内容照会の場合は「2」と#を押す。次に、3桁の支店番号と#、預金種類番号と#、7桁の口座番号と#を押す。そして、4桁の暗証番号を押して本人確認が済むと自動音声で回答されるという具合だ。
支店番号、預金種類番号、口座番号、暗証番号の入力は、残高照会や振込・振替など本人確認が必要な取り引きに限って行われるようになっており、資料請求や各種問い合わせ・相談などの場合には省かれている。また、アナウンスするサービスの順序は、利用頻度の高いものから、「普通・貯蓄・当座預金残高・入出金内容照会」「事前登録した口座への振込・振替」「キャッシュカードの紛失」という順に並べることで、極力、短時間で目的に達することができるようにした。また、アナウンスに従って希望のサービスを選択すると、自動音声で選択したサービス内容を復唱する仕組みになっており、顧客が耳で入力の成否を確認できるよう、工夫が凝らされている。
業務の効率化を図るという点においては、無人化は非常に効果的である。しかし、やりすぎると温かみがないという印象をお客様に与えてしまう可能性があることは否めない。取引内容によっては、セキュリティ面においてライブ・オペレーションが必須となる場合もあるが、このような場合に限らず、同社では、ライブ・オペレーションをお客様とのコミュニケーションを図る大切な機会ととらえ、あえてライブ・オペレーションを残している部分もあるという。
1999年9月までに獲得した会員数は、約15万件。他行と比較すれば少ないと感じる数字ではあるが、同行の場合、口座を開設していればほぼすべてのサービスを利用できるため、会員として登録せずに利用しているお客様も多いのが現状。大規模コールセンターを開設した1999年1月以降、コール数はコンスタントに増加し、月間の利用件数は約20万件を上回っている。
同行では、テレホンバンキングの認知度の高まりと、一度サービスを使用して便利であることを実感したお客様が増えることで、今後さらに、コール数が増えるものと予測している。一方で、この10月より新規口座開設用伝票に「さくらテレホンダイレクト」の申込書をあらかじめセットすることで、会員数の増加を図る意向。1年後には会員数を100万人にまで拡大し、さらなる利用を促進していきたいとしている。
情報の共有化を図りCRMを推進
現在、同行では、定期預金の満期案内や年金のプロモーション、年2回のボーナス・キャンペーンの案内など、月間約15万件のアウトバウンド・コールを実施しているが、今後もコールセンターで収集した情報を支店と共有し、効果的なマーケティングを展開していく意向。リテール・バンキングの運営・管理を行う個人業務部がプロモーションのターゲットとなる顧客のリストを抽出し、それを各支店のフィルターにかけ、最終的なリストをコールセンターに戻し、アウトバウンド・コールを行っていくという。
また同行では、法人や、個人の富裕層を対象としたプライベート・バンキングにおいては、全支店でCRMの仕組みを確立して実用している。これと同様に、今後は一般のお客様を対象にした店頭CRMを確立して、密接なリレーションシップの構築を図っていく方針。情報の共有化を軸にして、お客様に「私を知ってくれている」という満足感を与えながら、上記のマーケティングに基づく効果的なセールスを行うことで、お客様の同行に対するロイヤルティを高めることが狙いだ。現在、東京の各支店と電算センターをオンラインでつなぎ、テスト運用を実施している。ゆくゆくは全店で展開していきたいとの考えだ。
「さくらテレホンダイレクト」はファースト・ステージを終え、セカンド・ステージに突入したところ。1998年12月に投資信託の窓販が解禁されて間もなく、日本経済新聞社が日経リサーチに委託してまとめた「都市銀行支店サービス調査・投資信託編」によると、同行は営業姿勢、説明、行員の接客態度において高得点を獲得し、第1位になった。同行では、電話においても対面と同様に、お客様の満足を得られる対応をしていきたいとしている。同行では今後も引き続き、投資信託のラインナップを豊富にするなど、サービス内容の拡充、顧客満足度の向上に努め、リテール・バンキングの拡大を図る意向だ。
東京都目黒区にあるコールセンター本部のオペレーション風景