通信ネットワーク最前線(第33回)

大和証券投資信託委託(株)

全国共通のフリーダイヤル番号とIVRの導入により、効果的な受け付けを実施している大和証券投資信託委託(株)。そのコールセンターの現状と今後について話を聞いた。

受付業務の改善・拡大を図る

 1959年12月、投資信託専門の運用会社として大和證券からの分離・独立により設立された大和証券投資信託委託(株)。同社では、大和證券をメインの窓口として間接的に投資信託の販売を行ってきたが、1995年、直販業務の認可を取得。同年6月にはマーケティング部を設置して電話による通信販売を主とした直販業務を開始した。4名のオペレーター社員でのスタートであった。投資信託の販売ツールとしては、郵便、電話、FAXに加えて、最近ではインターネットが活用されているが、全国の投資家を対象とした通信販売を目指していた同社では、インフラが整っており、しかも距離感の生じない電話が最適なツールであると考えたわけだ。
 その後、金融業界はビッグバンに突入。1998年12月には銀行の窓口でも投資信託の販売が開始されるなど規制緩和が進む中、1999年3月、電話処理のスピードアップ、データベースの構築・活用を目的として、東京・茅場町の本社内に新システムを導入したコールセンターを開設。同時にオペレーターの増員を図った。

効果的な告知と顧客サービスをかねてフリーダイヤルを導入

 コールセンターでは、追加型公社債投資信託「ダイワMMF」、追加型株式投資信託「アクティブ・ニッポン 武蔵(愛称)」、初心者向け投資信託「投信倶楽部」など取り扱いファンドの資料請求受付、問い合わせ・相談、注文受付などの業務を行っている。
 資料請求受付には自動音声応答装置を使用して、24時間・年中無休の受付体制を構築。問い合わせ・相談、注文受付は平日の午前9時から午後5時まで受け付けを行い、基本的に土・日・祝日は休業となっている。応対に当たるのは、外務員資格を取得した12名の社員。このうち2名がスーパーバイザーとして、お客様からのより高度なお問い合わせ・相談に対応している。
 前述の通り、受け付けには電話とFAXを使用。いずれもフリーダイヤル回線を利用している。
 フリーダイヤルを導入した理由は2つ。ひとつめは、顧客サービスのひとつとして、お客様に気軽に電話をかけていただける環境を作るため。2つめは、全国に同じ番号で一環した告知を効果的に行うためである。ちなみに同社のフリーダイヤル番号は、電話が「0120-106313(富む財産)」、FAXが「0120-296313(作ろう財産)」とゴロ合わせが良い。
 現在同社では、フリーダイヤル電話23回線、フリーダイヤルFAX2回線を導入。1999年4月中旬より、携帯電話やPHSからのフリーダイヤル接続を開始した。

IVRの導入により業務を効率化

 同社では、コールセンターにIVRを導入することにより、受付業務の効率化を図っている(図表1)。
 お客様からコールセンターに寄せられるすべてのコールは、まずはじめに自動音声応答装置で対応。用件に応じて、そのまま自動音声応答装置で対応するかオペレーターが対応するかをお客様に選択していただく仕組みになっている。お客様はガイダンスに従い、用件に応じて設定された数字ボタンと「#」をプッシュすればいい。
 たとえば、資料請求をする場合には「1」と「#」をプッシュした後、ガイダンスに従って資料の送付に必要な情報を音声とプッシュボタンで登録していく。所要時間は約2分。ダイヤル式電話を利用しているお客様、また数字ボタンと「#」をプッシュしてもつながらない場合は、しばらくしてから自動的にオペレーターにつながる仕組みになっている。自動音声での応対を好まない、あるいは不慣れなお客様にも気軽に安心してご利用いただけるだけでなく、コールの取り逃しを最小限に留めるという効果もある。
 また、同社では、時間外の資料請求受付とそのデータ化を外部に委託している。かねてより、データベースの構築を効率よく、低コストでできる方法を検討していた同社では、社員の人数、労働時間、コストなどさまざまな要因を考慮し、最終的にアウトソーシングを選択した。しかし、お客様の取引状況が蓄積されている業務系データベースやファンド情報などが構築されている情報系データベースの構築を、外部スタッフにまかせることはできない。そこで、資料請求者の氏名、住所、電話番号などのデータ化のみをアウトソーシングすることにしたのである。
 17時以降に着信したコールには、オペレーターによる受け付けは終了したこと、資料請求の受け付けだけは自動音声応答装置で行う旨をガイダンスで伝え、「1」と「#」をプッシュして資料請求を選択したお客様の電話を委託先へ転送している。そこで受け付けた内容は、翌日データ化され、翌々日の朝一番にコールセンターに送られる。コールセンターではその情報に基づき、その日のうちに請求された資料の発送を行っている。

【図表1】コールセンターのシステム構成図

コール数の増加で関心の高まりを実感

 現在、同社では、資料請求受付とお問い合わせ受付を合わせて、平均約200件/日のコールを受け付けている。銀行で投資信託の窓販が開始された当初は、自己責任に基づいて取り引きを行うことに不慣れなお客様が多かったが、次第に自己責任への認識が高まるなど、お客様の意識も変化してきた。また、当初は相場環境が思わしくなかったこともあり、お客様の関心が高くはなかったが、今年に入ってから相場環境が若干ではあるが好転したことを機に、問い合わせや売買の件数が増加したという。
 同社では、コールセンター、および専用フリーダイヤルの告知媒体には、新聞や「あるじゃん」などのマネー誌、インターネットのホームページを活用。新聞では、この4月11日(日)の朝日新聞、同18日(日)の読売新聞、同27日(火)の日本経済新聞(夕刊)にフリーダイヤル番号「0120-106313(富む財産)」を大きくアピールした広告を出稿した。また雑誌では、「あるじゃん」の5月号に商品を全面的に打ち出した広告を出稿している。媒体別にコール数を見ると、朝日新聞では、出稿初日に700件強、4月末日までに合計約1,200件ものコールが寄せられた。読売新聞では、出稿初日に約500件、4月末日までに合計約1,000件。日本経済新聞(夕刊)では、出稿初日に約600件、4月末日までに合計約800件のコールが寄せられている。これについて同社では、新聞というマスメディアに広告を出稿したことだけでなく、お客様の投資信託に対する関心の高まりでもあると捉えている。

4月27日(火)の日本経済新聞の夕刊に掲載した広告

4月27日(火)の日本経済新聞の夕刊に掲載した広告

データベース・マーケティングを目指して

 現在、同社では、コールセンターのステップ・アップを図っており、その第1弾がこの3月に行われたオペレーターの増員と新コールセンターシステムの導入による受付業務の拡大であった。
 今回導入したコールセンターシステムは、各データベースが独立しているスタンド・アローン型のため、ひとりのオペレーターに2台の端末が用意されている。たとえば、お客様情報はA端末、取引履歴などはB端末で検索・表示する仕組みになっているが、今秋9月には、現在独立している顧客データベース、簡易商品データベース、取引履歴データベースとオペレーター端末をリンクさせ、1台の端末で必要な情報を検索・表示できるようなシステムの開発に取り組んでいる。これにより、操作性が大きく向上。オペレーターの負担が軽減され、よりオペレーションに集中できる環境が整うわけだ。
 その一方で、顧客満足度を向上させ、お客様にもう1度電話をかけたいと思っていただけるよう、オペレーターの質の向上に取り組んでいく意向。同社では、独自に商品や証券取引に関する研修を行いながら、テレマーケティング・サービス・エージェンシーである(株)ベルシステム24に電話応対の研修を依頼。毎週月曜日にモニタリングを行い、オペレーション・スキルのレベルアップを図っている。コールセンターに寄せられる問い合わせ内容は、「投資信託って何ですか?」といった初歩的なものから具体的な投資の相談まであり、そのレベルはさまざまである。ゆくゆくは、10名のオペレーターをスーパーバイザーとして育て上げ、さらに人員を拡大。オペレーターをグループ分けして、それぞれの役割を明確にし、よりスムーズで的確な対応を実現したいとしている。
 また、インバウンド業務を拡大することによって、データベースの規模も大きくなる。同社では、今後これを活用したデータベース・マーケティング(アウトバウンド)を展開していく意向だ。

コールセンターでのオペレーションの様子

コールセンターでのオペレーションの様子


月刊『アイ・エム・プレス』1999年6月号の記事