通信ネットワーク最前線(第22回) 

(株)KDDコミュニケーションズ

昨年12月よりインターネット電話サービスを開始した(株)KDDコミュニケーションズ。同社におけるフリーダイヤルとナンバー・ディスプレイの活用方法について話を聞いた。

グループの向上を目的に新サービスを開始

 (株)KDDコミュニケーションズは、国際電信電話(株)(KDD)の100%出資によるインターネット・サービス・プロバイダー。その事業内容は、インターネット接続サービス、WWWサーバレンタルサービスをはじめ、国際テレビ会議・映像宅配サービス、海外旅行者向け携帯電話レンタルサービスなど多岐にわたっている。
 近年、各社の国際電話通話料金の引き下げや、安い通話料金で国際電話を利用できるインターネット電話サービスの登場により、国際電話の価格競争は激化の一途をたどっている。そこでKDDグループでは、競争力を高め、お客様が他社へ流出するのを防ぐために、1997年12月より(株)KDDコミュニケーションズにおいて、インターネット電話サービス「KCOMスーパーエコノミーフォン」の提供を開始。従来のサービスに固執し、1社で利益を追求するのではなく、このサービスを切り札にして、KDDグループ全体の収益向上を図るべく、大きな一歩を踏み出した。

特長は通話料の安さと音声品質の良さ

 「KCOMスーパーエコノミーフォン」は、パソコンやモデムを使わずに、一般の電話機、公衆電話、携帯電話、およびPHSから発信した電話を、国際区間をインターネット網で中継し、相手方の電話機につなぐ国際電話サービスである。
 発信呼はまず通常の通話と同様に一般電話網を通り、東京、もしくは大阪のゲートウェイシステムを経由する。音声情報はここでパケット形式に変換され、インターネットKDD回線に入る。そして、KDDのアメリカ本社に設置されたゲートウェイシステムで再び音声情報に変えられ、外国の一般電話網を通って相手方の電話機につながる仕組みになっている(図1)。東京と大阪の2カ所のアクセスポイントに設置されているゲートウェイシステムは、サービス開始に当たり、グループ会社であるKDD研究所が開発したものだ。
 同サービスの特長は、独自に開発したゲートウェイシステムとインターネットKDD回線を利用することで実現した、音声品質の良さとリーズナブルな通話料金。音声品質面では、通話時のエコーや音声の遅延などが最小限に抑えられている。また料金は、日本から1分当たり、アメリカまでが30円、イギリスまでが45円、フランスまでが55円、香港までが75円、オーストラリアまでが45円に設定されている。

【図表1】「KCOMスーパーエコノミーフォン」のしくみ

「KCOMスーパーエコノミーフォン」のサービス内容

 サービスの対象は、個人と法人の両方。サービスを利用するためにはあらかじめ申し込みが必要だ。申込方法は、カスタマーセンターへ資料を請求し、送られてくる申込書に必要事項を記入して、郵便またはFAXで返信するだけ。申込手続きが済むと、サービス利用開始のご案内と、利用に必要な14桁のユーザIDが郵送されてくる。
 契約料は無料。利用には、1契約ごとに月額500円の基本料金と、通話料金がかかる。また、後述する認証方法の追加をする場合、登録番号、またはユーザIDごとに月額100円の付加機能使用料がかかる。ただし、利用者がすでに同社のほかのサービスに加入しており、そのサービスと一括して料金が請求される場合、基本料、および認証方法の追加料は免除される。利用明細の発行は、月額1,000円。これらの決済はすべてクレジットカードで行われる。
 「KCOMスーパーエコノミーフォン」は、アメリカ、イギリスをはじめとする15カ国であったサービスエリアを、1998年2月1日より40カ国に拡大。サービス内容の拡充に努めている。
 サービスの告知には、『日経ネットナビ』などのパソコン雑誌をはじめ、一般週刊誌、新聞、ホームページ、イベント会場など、さまざまなチャネルを活用。認知度の向上に努めている。
 同社では告知の際、「インターネット」という言葉を使わないように心がけているという。これは、インターネットを意識せずに、同サービスを安くて使いやすい国際電話として、通常の電話と同じ感覚で気軽に利用してほしいという同社の考えからである。

資料請求をすると送られてくる申込書。裏面にはサービスの利用規約が記載されている。 資料請求をすると送られてくる申込書。裏面にはサービスの利用規約が記載されている。 資料請求をすると送られてくる申込書。裏面にはサービスの利用規約が記載されている。

資料請求をすると送られてくる申込書。裏面にはサービスの利用規約が記載されている。

フリーダイヤルとナンバー・ディスプレイでお客様の利便性を向上

 利用方法は認証方法によって「かんたんダイヤル」「どこでもダイヤル」「かんたん・どこでもダイヤルの併用」の3通りがあり、申込時にいずれか希望する方法をを選択できる。
 まず「かんたんダイヤル」は、あらかじめ登録した電話番号の電話機であれば、14桁のユーザIDを入力せずに通話ができるというもの。契約時に自宅など特定の電話番号を登録するだけで、アクセス番号へダイヤルした後、音声ガイダンスにしたがい、国番号+市外局番+相手先の電話番号をダイヤルするだけで先方に電話がつながる。同社では、お客様の利便性を考慮し、ここでの認証方法を自動化するためにNTTの発信電話番号表示サービス、ナンバー・ディスプレイを活用している。アクセス番号へダイヤルすると、着信側で発信された電話番号が瞬時にわかるため、これをキーに顧客データベースとの照合が行われる。認識した電話番号と顧客データが一致すれば、認証が完了する。したがってこの方法は、登録した電話番号からしか利用できない。
 「どこでもダイヤル」は、自宅、オフィス、公衆電話、携帯電話、PHS、どこからでも電話をかけることができる。アクセス番号にダイヤルして、音声ガイダンスにしたがいユーザIDを入力した後、国番号+市外局番+相手先の電話番号をダイヤルして利用する。
 そして「かんたん・どこでもダイヤルの併用」は、電話番号を登録した電話機からは「かんたんダイヤル」で、それ以外の電話機からは「どこでもダイヤル」で利用することができるというものだ。
 さらに同社では、競争の激戦区である東京03地域と大阪06地域で他社に対する競争力を確保するとともに、お客様の利便性を向上させることを目的にフリーダイヤルを導入。発信地域を限定して接続できるフリーダイヤルの「発信地域指定サービス」を利用し、2地域の発信のみアクセスポイントまでの通話料金を負担している。
 フリーダイヤル番号の告知には、サービス利用開始の案内を活用。これには、お客様の居住地や契約内容にかかわらず、フリーダイヤル番号と一般加入回線の番号を併記している。発信地域を限定しているため、フリーダイヤルサービス地域外からはフリーダイヤルを利用できないとは言うものの、「どこでもダイヤル」もしくは「かんたん・どこでもダイヤルの併用」を利用しているお客様はどこからでも発信できるため、フリーダイヤルサービス地域から発信する場合は、アクセスポイントまでフリーダイヤルを利用できるからである。

サービスの告知に活用している広告やSPの数々。一般の雑誌などには「KCOMスーパーエコノミーフォン」単独の広告を掲載(右下)。パソコン雑誌では、インターネット・サービスのひとつとして紹介している(左下)。 サービスの告知に活用している広告やSPの数々。一般の雑誌などには「KCOMスーパーエコノミーフォン」単独の広告を掲載(右下)。パソコン雑誌では、インターネット・サービスのひとつとして紹介している(左下)。 サービスの告知に活用している広告やSPの数々。一般の雑誌などには「KCOMスーパーエコノミーフォン」単独の広告を掲載(右下)。パソコン雑誌では、インターネット・サービスのひとつとして紹介している(左下)。 サービスの告知に活用している広告やSPの数々。一般の雑誌などには「KCOMスーパーエコノミーフォン」単独の広告を掲載(右下)。パソコン雑誌では、インターネット・サービスのひとつとして紹介している(左下)。

サービスの告知に活用している広告やSPの数々。一般の雑誌などには「KCOMスーパーエコノミーフォン」単独の広告を掲載(右下)。パソコン雑誌では、インターネット・サービスのひとつとして紹介している(左下)。

 同社では、8月中旬を目途に千葉、浦和、国分寺、横浜にアクセスポイントの増設を予定している。
 これに先駆けて、同社では、6月下旬にフリーダイヤルサービス地域の拡大を図る。新たに加わる地域は、千葉(043)、浦和(048)、川崎(044)、横浜(045)をはじめとする関東12地域と、大阪06の隣接、および20km以内の地域。続いて、アクセスポイントを増設する8月下旬にも、関東の17地域(このうち2地域は検討中)をサービス提供地域に指定する計画だ。ここでは、複数のアクセスポイントを設置してもひとつの番号を利用できることで、番号を別々に周知する必要がなく一貫したPRができる、フリーダイヤルの「全国共通番号サービス」を利用して、お客様に対して効果的な告知を行っていく意向だ。また、同サービスの、発信地域に応じてあらかじめ指定しておいた受付先へ接続できる機能を活用して、お客様の発信地域に応じて、最も近いアクセスポイントへつながるような指定をし、負担する通話料金を最小限に抑えたいとしている。
 一般加入回線の通話料金は毎年値下げが行われているため、この動向や利用状況を見ながらフリーダイヤルサービス地域を徐々に拡大して、さらにサービスの競争力を高めたいと考えているのだ。
 「KCOMスーパーエコノミーフォン」の5月現在の契約者数は個人と法人を合わせて約2,000件。このうち約8割を個人ユーザーが占める。家族が海外に滞在している家庭などが利用しているケースが多い。利用件数は1カ月約2万コールに上っている。

契約なしで利用できる「KCOMスーパーエコノミーフォンカード」を発売

 同社では、4月22日、クレジットカード決済のできない在日外国人や、それほど頻繁に国際電話を利用しない人をターゲットに、契約なしで利用できるプリペイドカード「KCOMスーパーエコノミーフォンカード」の発売を開始した。カードでの通話料金は、契約をしている場合より2割程度高く設定されている。カードは3,000円の1種類のみで、通信販売で提供している。
 購入申込窓口には、電話とE-mailを活用。受付時間帯は、電話が月~金曜日の午前9時から午後5時まで。もちろんE-mailは24時間・年中無休で受け付けている。購入は1枚から可能。購入枚数が2枚以上の場合は、送料は無料。1枚の場合は300円の送料がかかる。
 カードには、カードといっしょに持ち歩ける、5カ国語で書かれた「ご利用ガイド」が付いている。利用方法は「どこでもダイヤル」と同様。どこからでも、電話機の種類を選ばず、サービスの利用が可能。東京03地域と大阪06地域からはフリーダイヤルのアクセス番号、それ以外の地域、および携帯電話、PHSからは一般加入回線のアクセス番号へダイヤルすればいい。まず音声ガイダンスにしたがい、カード裏面に記載されているユーザIDを入力。続いて通話先の国番号+市外局番+電話番号を入力すると、「○分間通話できます」というアナウンスの後、相手先に電話がつながる。通話中にカードの残り時間が少なくなると、信号音が入るようになっている。
 今後同社では、「KDDスーパーエコノミーフォンカード」の販売チャネルを拡大したいとしている。現在、親会社であるKDDがコンビニエンスストアと提携して「KDDスーパーワールドカード」を販売しているため、これと競合しない別の販売チャネルを検討しているとのこと。
 あらゆる規制が緩和され、次々と業際が消えていく中で、市場獲得競争はますます激化すると予想される。この7月より、KDDでは国内電話サービスをスタートする。KDDグループが生き残りをかけた競争に、「KCOMスーパーエコノミーフォン」がどのような戦果をもたらすのか、今後の動向に期待したい。

KCOMキャラクターを使用した「KCOMスーパーエコノミーフォンカード」

KCOMキャラクターを使用した「KCOMスーパーエコノミーフォンカード」


月刊『アイ・エム・プレス』1998年7月号の記事