独自運営のEC サイトで商品の持つ特長をしっかりとアピールする売り場を実現

(株)ワコール

1984年にカタログ通販に参入した(株)ワコールでは、2000年に独自のECサイト「ワコールウェブストア」も開設。その事業は店頭で展開しづらいニッチ商品のヒットを生むなど順調に推移しており、今後も新たな顧客の獲得などにより、さらなる事業拡大を図っていく意向だ。

1984年から30年近くにわたって通販事業を展開

 1946年に婦人洋装装身具の卸商「和江商事」として創業。1949年に和江商事(株)として法人化し、以降、「世の女性に美しくなってもらう」という経営理念の下、事業活動を通じて「女性の“美しくありたい”という願いに役立つこと」を目的に、60年以上、女性の価値観や美意識を見つめ、「女性と共に」歩んできた(株)ワコール。自らの事業領域を「ボディデザイニングビジネス」と定める同社グループでは、「身体」と「こころ」を総称して「ボディ」ととらえ、コアコンピタンスに基づいたインティメートアパレル事業・ウエルネス事業を通して、「美」「快適」「健康」という3つの価値の提供を続けている。なお、同社グループは2005年に持株会社制に移行しており、現在、同社は持株会社である(株)ワコールホールディングス傘下の中核事業会社という位置付けとなっている。
 具体的な事業の中心は、インナーウェア(主に婦人のファンデーション、ランジェリー、ナイトウェア及びリトルインナー)、アウターウェア、スポーツウェア、その他の繊維製品および関連製品の製造・販売だ。その主要販売チャネルは百貨店、量販店や一般小売店、直営店舗といったリアル店舗であるが、1984年には通販にも参入。以降、30年近くにわたってメーカー通販を展開し続けている。
 同社が通販に参入した目的は顧客と直接コミュニケーションを持つことで、チャネルの多様化に対応するとともに、卸売では取り扱いの難しい商品の販売やマーケティング・リサーチを行うこと。1984年の参入当初はカタログを媒体とする展開であったが、2000年に独自のECサイト「ワコールウェブストア(Wacoal WebStore)」を開設し、現在ではカタログ「LOVEBODY」「ゆらら」と「ワコールウェブストア」とを併用するかたちで通販事業を展開している。なお、「ワコールウェブストア」については、近年、店頭への来店客の増加が期待しにくい中で、新たな顧客接点として位置付け、年々、注力度を高めている。
 以降、本稿では「ワコールウェブストア」を中心に、その取り組みを紹介する。

ECサイトの特性を十分に生かしたマーチャンダイジングで顧客に“選ぶ楽しみ”を提供

 「ワコールウェブストア」は、同社通信販売事業部が独自運営するECサイトだ。取扱商品は同社のほぼ全ブランドで、主力の女性インナーウェアでは中高級ラインを中心に、キャンペーン商品も充実。ジュニアインナー、シニアインナー、メンズ向けインナーも含め、合計で約4,500品番を幅広く品ぞろえ。さらにスポーツウェアやビジネスパンプスも取り扱うなど、物理的な空間に制約されないというECサイトの特性を十分に生かしたマーチャンダイジングを行い、顧客に“選ぶ楽しみ”を提供している。なお、取扱商品の大半は店舗チャネルでも販売しているが、一部のニッチ商品などについては「WEB限定商品」となっている。
 また、送料は全国均一315円に設定。支払いについては各種クレジットカードのほか、代金引換、コンビニエンスストア・銀行・郵便局を通じた後払い(実績顧客のみ)も利用可能とし、さらにブラジャーについてはサイズ交換に無料で対応するなど、顧客の利便性向上にも十分な配慮がなされている。
 サイト作りにおいては、メーカー直営のECサイトとして商品の持つ特長をしっかりとアピールする売り場を志向。価格訴求ではなく、商品の特長をきっちり伝えることを目指し、掲載画像などにも工夫を凝らしている。
 顧客からの問い合わせなどに対してはカタログと「ワコールウェブストア」の双方に対応するカスタマーセンターを運営。eメールのほか、電話、ファクスへの対応も行っている。
 なお、「ワコールウェブストア」への訪問者数は年間延べ約1,100万人にも及んでいる。その95%は女性であり、年代としては35歳前後が中心。ちなみに同社の直営リアル店舗の来店顧客では中高年層が多いが、「ワコールウェブストア」では若年層の来店も比較的多いとのことだ。

ステージ制を導入しポイントプログラム「エクセレントポイント」を運用

 「ワコールウェブストア」への集客については、インターネット上でのSEO・広告施策のほか、「ワコールウェブストア」公式Twitterアカウントからの情報発信などを実施。また、雑誌広告などからの誘導といった取り組みも行っている。
 一方、リピートオーダーの獲得施策としては、1年に4回ある同社の2大セールである「ワコールセール」「クリアランスセール」への招待などをフックに無料の「メルマガ会員」登録を促進。登録会員を対象に会員限定セールの案内などを盛り込んだメールニュースの配信を行うなどにより来店促進を図っている。
 そのほか、購入金額の1.5%をポイントとして還元(ポイントは1ポイント=1円として利用可能)することを基本に、前年度の購入金額によって次年度のポイントステージ(ポイント加算率)が決定する“ステージ制”を導入した独自のポイントプログラム「エクセレントポイント」を運用するなどして、ロイヤルティの向上を図っている。

店頭では展開しにくいニッチ商材がヒット

 このような取り組みの結果、ワコールウェブストア会員の年間平均来店回数は1.6回、平均客単価は約9,600円を記録。「大きな胸を小さく見せるブラ」や「ぽちゃカワブラ」など、店頭では展開しにくいニッチ商品もヒットしているという。カタログ通販を含む通信販売事業部全体の売り上げは年間約60億円に及んでおり、同社グループの連結売上高約1,800億円の3%強を占めるまでになっている。
 「ワコールウェブストア」の展開における今後の課題としては、新たな顧客層の取り込みが挙げられている。具体的な施策については現在、さまざまな手法を検討中だが、これに向けて新規性の高い施策にも積極的にチャレンジしていく意向だ。また、顧客サービスの拡充などによる顧客満足度の向上にも継続的に取り組んでいく方針であり、これらを通じて当面の目標である年間売上高30億円の達成へとつなげていきたい考えである。

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「ワコールウェブストア」トップページ(上)/ネット通販で人気の「ぽちゃカワブラ」は、3,990円から(中)/通販利用のメリットを訴求。品ぞろえの豊富さ、限定商品・キャンペーン商品の充実、セールへの招待、送料全国一律315円、ポイント1.5%還元のほか、ブラジャーのサイズ交換無料サービスも(下)


月刊『アイ・エム・プレス』2013年10月号の記事