お客さまの利便性を第一に“買いたいときに、買いたい場所で”を実現

(株)ドクターシーラボ

通信販売から事業をスタートした(株)ドクターシーラボでは、事業開始の約2年後には百貨店内に対面型店舗1号店をオープン。以後、通信販売と店舗販売を併用し、相互に連携することで、コンセプトである“マルチチャネル・ダイレクトマーケティング”の実現を図っている。

メディカルコスメ”のリーディング・カンパニー

 皮膚科医を中心とする医師または医学博士が開発・研究に参加し、皮膚科・整形外科・美容外科などのクリニック、病院・医院で販売または紹介している化粧品を指す“メディカルコスメ(ドクターズコスメ)”。このコンセプトを日本で初めて採用したのが(株)ドクターシーラボである。
 同社の取扱商品は化粧品と健康食品。2012年7月期実績では、総売上高(390億8,242万円)の94.6%が化粧品事業、残り5.4%が健康食品事業によるものである。化粧品事業における商品構成はスキンケア化粧品が中心であり、主力の「Dr.Ci:Labo(ドクターシーラボ)」ブランドのほか、比較的低価格な品揃えでドラッグストアを中心に展開するメディカルコスメのエントリーブランド「Labo Labo(ラボラボ)」、エイジングケア効果の高いプレステージブランド「GENOMER(ジェノマー)」といったブランドも展開している。
 顧客層の中心は30~40代の女性。最先端の皮膚医学・クリニックの施術を取り入れたメディカルコスメならではの機能性に加え、安全性と合理性を兼ね備えた商品開発を行っていることが、肌にトラブルや悩みを持つ女性だけでなく、化粧品に安心・安全を求める女性からも幅広い支持を獲得しており、メディカルコスメのリーディング・カンパニーとしての地位は揺るぎないものとなっている。

“マルチチャネル・ダイレクトマーケティング”をコンセプトに複数チャネルを活用

 同社の販売チャネルの中心は1999年2月の創業時から展開している通信販売だが、2001年5月には対面型店舗1号店を名古屋市の名鉄百貨店にオープン。以後、直営店、および有名百貨店・ショッピングセンター内のドクターシーラボコーナーの整備を進め、2013年7月現在では158店舗を展開している。そのほか、ドラッグストアやバラエティショップ、調剤薬局、化粧品専門店などへの卸売りも行っており、通信販売、対面型店舗販売、卸売りが同社の販売チャネルの3本柱と言える。なお、販売チャネル別の売上高は通信販売が約7割、対面型店舗販売と卸が約3割といった状況となっている。
 このように複数の販売チャネルを活用する同社が掲げるコンセプトが“マルチチャネル・ダイレクトマーケティング”だ。その基本的な考え方は、お客さまの利便性を重視し、用意した複数の販売チャネルの中から、お客さまのライフスタイルや嗜好に合わせてチャネルを選択していただこうというもの。つまり、お客さまが“買いたいときに、買いたい場所で”同社商品を購入できる体制を整えるということであり、それぞれのチャネルの特性に合わせた個別の取り組みに加えて、チャネルを越えてお客さまとのコミュニケーションを図ることで、お客さまとの結び付きを強化することを目指すものとなっている。
 その取り組みの中でも特に重視しているのが、お客さまとのコミュニケーションの統合である。
 同社では通信販売、対面型店舗販売に共通するポイントプログラムとして「シーポイント」を運用。これをフックとしてお客さまの属性情報や購買履歴情報を収集・蓄積し、CRM施策を展開しているのだが、通信販売と対面型店舗販売でお客さま対応のトーンやマナー、コミュニケーション内容が変わってしまっては、お客さまにとってそれぞれの販売チャネルが“別物”になってしまい、相乗効果を期待することは難しい。そこで同社では2011年、通信販売で直接のお客さま対応を行うコンタクトセンターのオペレータと対面型店舗に配置しているビューティーカウンセラーの教育・研修をコンタクトセンターに集約。対応品質の統合を行うことで、チャネルにかかわらず同質のコミュニケーションを展開するための体制を整えている。

販売チャネルそれぞれの特性を生かしつつ相互に連携するプロモーション施策を展開

 プロモーションにおいても、販売チャネルそれぞれの特性を生かしつつ、相互に連携するさまざまな取り組みを展開している。
 通信販売、その中でも特にオンライン・ショップを中心とするインターネット販売においては、ターゲティング・メールなどにより、比較的低コストで幅広いお客さまとOne to Oneのコミュニケーションを展開することができる。一方、対面型店舗販売ではお客さまの肌に直接触れ、また、肌診断機なども活用することで、一人ひとりのお客さまにきめ細かいカウンセリングを行うことが可能だ。
 同社ではこのような各販売チャネルの特性を生かし、例えば、特定店舗で実施する「美顔器体験イベント」などの情報を当該店舗周辺に居住するお客さまへのターゲティング・メールにより告知し、店頭でのカウンセリングを体験してもらう機会を提供。一方で店頭でのカウンセリング内容をコンテンツ化してオンライン・ショップで公開することで、店頭を訪れる時間のないお客さまに“疑似体験”してもらうといった取り組みを行っている。

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対面型店舗を全国に158店展開。写真は銀座本店

12万人弱のお客さまが販売チャネルを使い分け

 同社の“マルチチャネル・ダイレクトマーケティング”の基本的な考え方は、前述の通り、お客さまの利便性を第一に考えるというものである。従って、同社の都合によってお客さまを特定の販売チャネルに誘導することは行っていない。しかし、特に対面型店舗については150店舗以上を展開しているとはいえ、立地が限られているので、例えばスマートフォン(スマホ)向けのWebサイトでは、スマホのGPS機能を活用してサイトを閲覧しているお客さまの現在地に近い店舗を表示・紹介するといった仕組みを導入。店舗の存在を認知してもらい、必要に応じて利用していただけるように努めている。
 このような取り組みの結果、例えば、自宅で日常的に使用し、かさも比較的大きい基礎化粧品は通信販売で購入し、小型で持ち歩きやすいメイクアップ商品は店舗で購入するといったお客さまも徐々に増加。現在では、約12万人弱のお客さまがこのように必要に応じて販売チャネルを使い分けているという。特にこれまで同社の知名度が低かった地方都市、中でも九州などでは、百貨店・ショッピングセンターで比較的大規模な店舗を展開していることから、このような店舗で初めて同社製品を購入し、その後、通信販売の利用も開始するといったパターンも多いようだ。
 なお、このような施策の収益への貢献については、短期的な収益向上には直結しないものの、さまざまな販売チャネルで重層的なコミュニケーションが行われることで、中長期的にお客さまのロイヤルティやライフ・タイム・バリュー(LTV)が向上する効果が大きいと考えている。また、お客さまとの交流会などから、ヘビーユーザーほど販売チャネルを意識していないといった知見も得られていることから、今後も“買いたいときに、買いたい場所で”同社商品を購入できる体制のさらなる整備を進めていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2013年9月号の記事