アンバサダーとの“共創”によって制度自体のブラッシュアップも図る

ネスレ日本(株)

ネスレ日本(株)では自社コーヒーマシンのオフィスへの普及を目的に、2012年9月から、「ネスカフェ アンバサダー」制度の運用を開始。半年間で約7万人のアンバサダーを獲得しており、2013年中には10万人、近い将来には100万人規模に拡大することを目指している。

コーヒーマシンのオフィスへの普及を目的に「ネスカフェ アンバサダー」制度を運用

 ネスレ日本(株)では、世界唯一のインスタントコーヒーマシン「ネスカフェゴールドブレンド バリスタ(以下、バリスタ)」のオフィスへの普及を目的に、2012年9月から、「ネスカフェ アンバサダー」制度を運用している。
 バリスタは、同社が2009年から販売を開始したコーヒーマシン。「ネスカフェ ゴールドブレンド」「ネスカフェ 香味焙煎」といった同社のインスタントコーヒー製品を用いるコーヒーマシンだが、ボタンひとつで「ブラックコーヒー」「マグサイズのブラックコーヒー」「エスプレッソタイプコーヒー」「カプチーノ」「カフェラテ」の5種類のコーヒーメニューを選べることが大きな特長となっており、累計で125万台以上を出荷するヒット商品となっている。なお、マシンおよびサプライ品となるインスタントコーヒー製品は、全国の量販店のほか、独自運営の「ネスレ通販オンラインショップ」で販売している。
 同商品の販売ターゲットの中心は一般家庭であり、発売当初から一般家庭に的を絞った販促活動を行ってきた。しかし、ユーザーの声などから実際にはオフィスでの利用も相当数に上っていることが判明。また、将来的に人口減少傾向が明らかな中で、一般家庭向けの需要が先細りすることも予想されることから、今後、オフィスが有望なターゲットとなり得ると考え、その開拓のための施策のひとつとして企画されたのが、ネスカフェ アンバサダー制度であった。
 同制度の基本的な内容は、オフィスで働く人を対象にネスカフェ アンバサダー(以下、アンバサダー)を募集。応募者の中から簡単な審査を経てアンバサダーとして登録された人に、「ネスレ通販オンラインショップ」で定期お届け便(3回以上継続)を申し込むことなどを条件に、2週間前後のうちにバリスタを無償で送付し、オフィスでの利用を始めてもらうというもの。企画立案時には一般家庭向けと同様にバリスタを有償(一般家庭向けには約8,000円)で販売することも考えたが、テスト・マーケティングなどの結果、有償ではオフィスへの導入を進めるのは難しいと判断。バリスタは無償提供し、その後の継続利用においてサプライ品となるインスタントコーヒー製品を購入してもらうことを収益の柱とするビジネスモデルを採用した。
 なお、同制度については、2013年1月には専門部署を立ち上げ、取り組みを強化している。

半年間で約7 万人の応募を獲得

 実際にネスカフェバリスタを設置するオフィスについては、従業員数5 ~ 19人の事業所、または部署をメーンターゲットとして設定。オフィスワーカーが視聴できる朝・夜の情報番組枠などで同制度を紹介するTVCMを放映するほか、各種Web広告、専用Facebookページ、トレインチャンネル(電車内で放映される動画広告)、イベントなどを通じて告知を進め、アンバサダーの募集を行った。その結果、エリア限定のテストなどを経て本格的な募集を開始した2012年9月末から2013年3月末までの半年間で約7万人の応募を獲得。重複応募や個人宅からの応募などを除き、大半の応募者をアンバサダーとして登録している。
 応募者の属性については、役職にかかわらず、職場の仕切り役を務める女性が多いだろうと想定していたが、実際には、無償とはいえ社内のスペースを割いてマシンを設置することからか、管理職の男性も少なくなく、男女比はおおよそ5対5となっている。また地域的には、必ずしも人口に比例しておらず、三大都市圏などよりも、コーヒーの購入経路の選択肢が少ない地方都市などからの応募が目立つとのことである。
 なお、アンバサダーとなった人に対しては、御礼の意味を込めて、個人宅に「ネスレ製品詰め合わせセット」を送付している。

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「ネスカフェ アンバサダー」 TVCM “オフィスに笑顔を咲かせよう!” 篇(左)/ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ(右)

“共創”の精神の下でアンバサダーの声に基づき取り組み内容を刷新

 アンバサダーとのコミュニケーションについては、まず、実際にバリスタが届くタイミングを見計らって、全国の同社事業所に配置しているアドバイザーが、アポイントを取った上でアンバサダーのオフィスを訪問。マシンの設置や使い方の説明などを行うとともに、インスタントコーヒー製品の購入について、「ネスレ通販オンラインショップ」の利用が便利で経済的であることを案内している。
 また、アンバサダー専用のコールセンターも設置。現状ではアンバサダーからの質問や問い合わせへのインバウンド対応が中心だが、将来的にはマシンの作動状況の確認やサプライ品の“御用聞き”などを行うアウトバウンド・コールにも取り組んでいきたい考えだ。
 インターネット関連ではアンバサダーを対象としたメールマガジンを月2回配信。さらに近々、アンバサダー専用のコミュニティサイトを開設する予定であり、同社とアンバサダー、さらにはアンバサダー同士のコミュニケーションの活性化を図っていく。
 「ネスカフェ アンバサダー」制度においては、アンバサダーとの“共創”が大きなテーマとなっている。実際にアンバサダー登録条件のひとつとなっている「アンバサダーレポート」(オフィスでバリスタを楽しんでいる様子を写真とコメントで投稿)や、月2回、神戸本社で関西圏のオフィスに勤務するアンバサダー5名程度を招待して実施している「スモールミーティング」、定期アンケートなどを通じて得られたアンバサダーの声が取り組みの刷新につながった例は多い。例えば、「バリスタの設置を上司に許可してもらうのが大変だった」という声から、バリスタのメリットや経済性などをわかりやすく説明するPDF「らくらく社内説得キット」を、また、「独自にコーヒーの消費量をカウントしている」という声から、1カ月のコーヒー消費量を簡単に計算できる「コーヒーはかる君」を、いずれも2013年4月22日からWebサイト上のコンテンツとして設置。新規需要の獲得や実利用の拡大につなげている。
 今後については、2013年末までにアンバサダー数を10万人とすることを当面の目標としており、さらに近い将来には100万人規模へと拡大することも目指している。これは、メーンターゲットとしている従業員5~19人の事業所の約3割に当たる数字だ。この実現のために、PRイベントの積極的な開催やオフィス内のカフェコーナー設置のためのキット提供などのサポート、これからの季節に向けてのアイスコーヒー・レシピなどの情報提供、さらには、紅茶などコーヒー以外の飲料へのメニューの拡充などにより、制度の魅力向上に取り組んでいく考えである。

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「ネスカフェ アンバサダー」 専用サイト(TOPページイメージ)


月刊『アイ・エム・プレス』2013年6月号の記事