テレビ通販のノウハウを生かしつつインターネットならではのユニークな取り組みを展開

(株)ジャパネットたかた

(株)ジャパネットたかたは、通販サイトにおける動画の利用に力を入れている。2012年に開設した東京・六本木の東京オフィスに動画コンテンツの企画制作を行う専従スタッフを配置。完売したら終了する企画の生放送など、ネットならではのユニークな施策を展開している。

スタジオ併設の東京オフィスを開設しWeb企画制作の体制を強化

 (株)ジャパネットたかたは、1986年に長崎県佐世保市でカメラ販売店から独立したことが始まり。1990年に試みた地元のラジオ放送による通販が、予想を超える反響を呼んだことから、全国へネットワークを広げた。代表取締役の髙田明氏が軽妙な話術で司会進行を務めるテレビ通販は、深夜の30分番組として1994年に開始。その後、新聞折込チラシ、カタログ、Web、CS放送と販売チャネルを拡充し、メディアミックスにより事業を展開してきた。
 同社の特色のひとつは、商品開発からプロモーション、発送、アフターフォローまで、通販にかかわるプロセスを可能な限り社内で行う“自前主義”。デジタル家電や生活家電の人気商品については、月間販売台数が万単位に上ることも珍しくないことから、メーカーとのタイアップによりオリジナル商品を開発するケースもある。こうしたオリジナル商品は、機能を絞り込むことで低価格を実現。機能が絞り込まれていることは、購入者のボリュームゾーンである50〜70代の中高年層には、使用方法がわかりやすいという点からも好評である。
 プロモーションにおいては、カタログやWebサイトの制作はもちろん、ラジオやテレビ通販番組も内製化。番組を収録するスタジオを保有し、司会進行役や番組制作スタッフも同社の社員だ。通販業界では一般に、家電など粗利の薄い商品はテレビ通販に不向きとされているという。しかしこの分野に強みを持つ同社では、ニーズの高い魅力ある商品をメディアミックスで効果的に訴求することにより、大量に販売して収益を確保するビジネスモデルを確立することによって、通販業界において、独自のポジションを築いてきた。
 現在は(株)ジャパネットホールディングスを中心とするグループ体制を採っており、ジャパネットたかたが商品開発やプロモーション、商品発送などの物流管理を、(株)ジャパネットコミュニケーションズが注文受付やアフターサービスをそれぞれ担っている。2012年2月現在の従業員数はグループ全体で1,382人で、2011年12月期の売上高は1,531億円。売上高を販売チャネル別にみると、新聞折込チラシやカタログなどの紙媒体が4割で最も多く、Webが3割、テレビが2割などとなっている。
 グループの主要部門は従来、佐世保市や福岡県福岡市など九州に置かれてきたが、2012年8月には都内の港区六本木に東京オフィスを開設した。高層ビルの34階フロアを借り切り、テレビ番組を収録するスタジオも完備。専門チャネル番組やWebの企画制作をはじめ、商品開発などのセクションを九州の本社から移転し、首都圏に集中する仕入先メーカーとの連携を強化。アパレルや健康食品など取扱商品の幅を広げ、首都圏での人材確保にも力を入れている。

テレビ番組の制作経験者を動画の専従スタッフに

 東京オフィスに移転したWeb企画制作のセクションは約40人の陣容。7割が九州の本社からの転勤組で、残る3割は新たにキャリア採用した即戦力となる人材で構成されている。同社の通販サイトは、テレビ通販番組の放映時間帯にアクセス数が急増することからも明らかなように、テレビで紹介した商品の受注チャネルとして大きな役割を果たしている。しかし同社ではこれに加え、通販サイト独自の“ 魅力づくり”を志向。その魅力のひとつとして力を入れているのが、動画の活用である。Webマーケティングにおける動画の新たな可能性を検証し、有効な手法を本格展開するため、テレビ通販番組の制作などに携わってきた社員を、東京オフィスの開設を機に新たに専従スタッフとして配置した。Webマーケティングのターゲットは、同社の顧客の中では比較的若い世代。当面のテーマは、インターネット生放送番組「WEBスタ!」のリニューアルや、動画が有効な商品カテゴリーの絞り込みなどである。

商品を短時間で次々に紹介 完売まで生放送するWeb ならではの企画

 インターネット生放送番組「WEBスタ!」は、同社のWeb動画マーケティングの取り組みとして、2005年にスタート。毎週水曜日の夜の放送で、ネットユーザーが通販サイトのトップ画面に表示される視聴ボタンをクリックして、視聴する仕組み。テレビの通販番組とは異なる演出や構成で差別化を図り、例えば100人ほどの社員が出演し、健康器具の使い方を実演するなどユニークな企画を打ち出した。しかし、視聴者の購買につなげる決め手に欠け、Webの特性を生かし切れていないとの判断から、2012年3月にいったん放送を休止。今回、東京オフィスに企画制作体制を整えたことから、本年3月にリニューアルして再スタートする。
 これに先駆け、2月下旬には、新企画の番組を東京オフィスのスタジオから試験的に生放送。デジタル家電やブランド時計などの商品を2 ~ 3分ずつ次々とテンポ良く紹介し、商品が完売したら終了するというほかの媒体ではできないWebならではの企画を実施した。番組の告知は放送直前にTwitterで行ったのみで、放送時間は午後8時からの1時間だったのにもかかわらず、事前に準備した商品の9割程度を販売。司会役には、テレビ通販番組への出演を志望している若手社員を起用し、従来にはなかったフレッシュさを演出。今後も「WEBスタ!」では、新たな企画にチャレンジしていく方針である。
 なお、同社の通販サイトには、数千の掲載商品のうち主力商品について、通常の画像や文字による商品紹介と併せて、動画コンテンツを掲載。こうした動画掲載は1年ほど前からの取り組みだ。例えばブランド腕時計は、商品をゆっくりと回転させる動画を流しながら、ナレーションや字幕スーパーで説明を加え、商品の質感や造形の魅力を訴求している。今後も動画に適した商品カテゴリーについては、この手法を積極的に活用していく。また、主力商品については、テレビ通販番組のようなスタイルで司会者が商品を紹介する動画を掲載。ただし、動画の長さは45秒と短時間にまとめ、スマートフォン(以下、スマホ)などからでも手軽に視聴できるように配慮している。

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今年春からリニューアルして再開した、ジャパネットたかたのインターネット生放送番組「WEB スタ!」。写真は2 月、プレスタート番組放送中の風景

効果測定が課題 検証手法の確立急ぐ

 これらの動画は、東京スタジオのWeb動画専用ブースで撮影。Web向けの動画は現在、週に10本程度のペースでアップしている。このほか、テレビ通販番組を短時間に再編集したものをWeb上に掲載。映像による商品訴求という同社の強みを最大限に生かしていく方針だ。
 通販サイトにおける動画には、特にスマホからのアクセス数の増加が著しい。ただ、売り上げへの貢献という意味では、動画コンテンツを掲載している商品が購入されても、果たして動画の効果で購買につながったのかどうかを判別するのは難しいのが現状。同社では効果検証の手法の確立を急ぎ、どのような手法が効果的かを探りながら、動画マーケティングの方向性を見極めていくことにしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2013年4月号の記事