インターネットを中心とする通販で自社開発の機能性健康食品を販売

ライオン(株)

トイレタリー・メーカー大手として確固たる地位を誇るライオン(株)は、2007年に通販に本格参入。インターネットを主要媒体として、中高年層をターゲットに機能性健康食品などを販売している。今後も自社通販にこだわった展開を継続し、事業としてのプレゼンスを高めていく意向だ。

2007年から通販事業に本格参入

 1891(明治24)年に石鹸およびマッチの原料取り次ぎを行う「小林富次郎商店」として創業。現在では「新・快適生活産業No.1企業」を標榜し、ハミガキ、歯ブラシ、石けん、洗剤などのトイレタリー製品のほか、解熱鎮痛薬の代名詞的存在である「バファリン」をはじめとする一般用医薬品、機能性健康食品などの製造・販売を手掛けるライオン(株)。同社では2006年に通販事業室を開設。翌2007年から通信販売事業を本格展開している。
 同社では2002年に関連子会社を通じてインターネット通販を開始。当初は使い心地や香りにこだわった石鹸などをラインナップした高級トイレタリー・ブランド「GUEST&Me」を取り扱うことで、主力である一般流通ルートとは一線を画して通販の展開を進めてきた。一方、2000年代半ばに新たな成長戦略の柱を模索する中で、同社の技術研究の成果が生かせる製品分野として機能性健康食品に着目。2007年から本格展開を開始した通販事業は、いわばこの2つの流れが合流した結果であり、“ライオンらしさ”を保ちながらの展開が進められている。
 取扱商品の中心は機能性健康食品7アイテム。いずれも「インナービューティ」「インナーヘルス」をコンセプトに生活習慣病対策や加齢ケアを訴求するものとなっており、当然のことながら、すべてが同社の通販事業部(2008年に通販事業室から組織変更)が研究開発部門である薬品第1研究所とともに開発した自社開発・製造商品となっている。
 食事で摂った糖質をエネルギーとして消費することをサポートする「糖質習慣」、乳由来のラクトフェリンを特殊なコーティング技術により胃で分解させずに腸まで届ける「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」といった各商品に共通する特徴は、有用性に関する科学的なデータ、エビデンスが整っていること。価格帯は、例えば約30日分を目安としている「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」(90粒入)が6,150円(税込)と低価格を“売り”にする他社の同種商品と比較すると若干高めだが、有用成分の含有量が多く、高付加価値を実感できるなど、同社が長年にわたって築いてきた「ライオン」ブランドを名乗るに相応しい商品群となっている。

インターネットを中心に新聞・TVなども活用

 利用媒体の中心はインターネット。通販専用サイトである「LION オンラインショップ」を運営し、同サイト内のコンテンツ「LION ウェルネスダイレクト」で中心商品である機能性健康食品を取り扱うほか、「LION こだわり商品館」で前述の「GUEST&Me」シリーズや敏感肌の方のための洗剤など“こだわり”のトイレタリー製品を、「LION ギフトショップ」で同社製品詰め合わせなどのギフトセットを、「LION プロショップ」で業務用製品を販売している。なお、主力の機能性健康食品のターゲットは40代以上の中高年層。特に高年齢層ではインターネットとの親和性の低さが指摘されることもあるため、当初はインターネット中心の展開に若干の懸念もあった。しかし実際に事業を展開する中では、インターネット経由の顧客が半数以上を占めており、高年齢層の顧客もインターネットを通じて十分に獲得できることが明らかとなっているとのことであり、今後もこの方向性を継続していく意向である。
 新規顧客の獲得については、検索連動型広告、バナー広告などのインターネット広告の活用や、SEO対策によってWebサイトへの集客を図るほか、新聞広告、TVのインフォマーシャルなども随時出稿。基本的には低価格のトライアルパックを訴求し、その利用者と継続的なコミュニケーションを図ることで、本商品の利用を喚起するという手法を採っている。なお、トライアルパックについては、インターネット上では「10日分980円」を基本とし、その利用者に次に本商品の同量・半額の商品を訴求。さらにその利用者に定期お届けコースの利用を推奨するという3ステップの手法を採っている。従来は新聞広告を中心とするマス媒体でも同様の手法を採用していたが、現在ではその手法は定期お届けコースへの引き上げに時間が掛かりすぎるという判断から、最初に本商品の同量・半額の商品を訴求する2ステップの手法を採用している。
 トライアルパック利用者を含む既存顧客に対しては、さまざまなタイミングで、さまざまなチャネルによるコミュニケーションを図ることで、本商品利用への引き上げ、さらには継続利用を促進している。利用しているチャネルはダイレクトメール、eメール、アウトバウンド・コールなど。特にアウトバウンド・コールについては、「迷惑がられるのではないか」と危惧する企業も多いようだが、初期コンタクト時にプロフィールや健康上の課題などの顧客情報をきちんと聞き出して、それに基づいたコミュニケーションを行うことを意識し、また、時間帯などを十分に考慮すれば、むしろ歓迎されることのほうが多いとのことである。
 また、Webサイトでは、購入履歴などに応じて、そのユーザーに見合った画面を表示するなど、One to One化を図っており、ニーズと表示内容のマッチングを強化することで、店頭販売に匹敵する“おもてなし”を実現。サイト訪問者の約4%が実購入に至るという高い効率性を実現している。

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着実に売り上げを拡大している「LION オンラインショップ」のトップページ。画面左肩には常に、年中無休で注文を受け付けるフリーダイヤル番号が表示されている

当面は自社通販にこだわった展開を継続

 同社で通販事業を担当する通販事業部は、現在10数名のスタッフで構成されている。受注、商品の出荷・配送などのフルフィルメントについてはすべてアウトソーシングし、通販事業部のスタッフがマーケティング・企画に集中できるようになっている。ただし、例えばコールセンター業務については複数事業者への委託を行い、競争原理を働かせることでコミュニケーション品質の向上につなげるなど、さまざまな工夫によって事業全体の品質維持・向上を図っている。
 同社通販事業部は、2011年度の売上目標であった50億円を達成。また、2014年度に100億円と設定された中期目標も、前倒しで達成できる見込みである。
 同社では、このように同事業が好調に推移している要因を、さまざまな施策について常にテストを積み重ねることによって、最適解を求め続けてきた結果であると認識しており、今後も同様の施策を継続していく方針である。
 現在、同社の自社通販のみで展開している機能性健康食品について、多くの大手小売業やe コマース事業者から取り扱いを希望するオファーが届いているが、これまでのところすべて断っているとのこと。その理由は、これらの商品が好調に推移しているのは、商品価値や作り手の思いを十分に伝達できる自社通販だからこそであり、十分な説明機能を持たないほかの流通経路で同様の結果を得ることは難しいばかりか、結果として値崩れを起こして事業全体にマイナスの影響を及ぼしかねないと認識しているため。当面は自社通販にこだわり、堅調に事業を拡大していきたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年2月号の記事