幅広い業態・規模の納入先各社のニーズにきめ細かく対応

国分(株)

国内食品卸売業のリーディング・カンパニーである国分(株)では、本部と支社の業務分担により、幅広い業態・規模の納入先事業者を対象とするきめ細かいリテールサポートを実現。さらに事業者向け会員制ネット卸を運営することなどによって、サポート範囲の拡大を図っている。

納入先それぞれのニーズを満たすリテールサポートを展開

 1712年の創業以来、300年にわたってわが国の“食”の流通を支えてきた国分(株)。その仕入先は約9,500社、取扱商品は加工食品、冷凍・チルド食品、酒類など約60万アイテム、年間売上高は1兆4,408億5,200万円(連結:2010年12月期)にも及んでおり、国内食品卸売業を代表するリーディング・カンパニーとして揺るぎない地位を確立している。
 同社の特徴は、仕入先や取扱商品の多さだけでなく、納入先の口座数が約3万6,000にも及ぶことにある。その中にはGMS、スーパーマーケット(SM)、CVS、ドラッグストア、百貨店などの大規模小売事業者にとどまらず、長年取引を継続している“街の酒屋さん”など中小規模の独立系小売事業者も数多く含まれており、それぞれの業態に即した対応が求められている。
 リテールサポートにおいても、各業態、さらには各納入先のニーズを満たすことに主眼が置かれており、その対応は非常にきめ細かなものとなっている。例えば、チェーン展開を行っているSMなどであっても運営状況は店舗ごとに異なり、中には営業不振の店舗が存在するようなケースもある。そのような店舗について経営改善のためのサポートを求められた場合、同社ではまずGIS(Geographic Information Systems:地理情報システム)を活用したエリアマーケティングによって年代別構成、所得状況など、当該店舗の商圏内のマーケット環境を精査。また、POSデータの提供を受けて商品カテゴリー別の強み・弱みなどを確認し、さらにエントランスの入りやすさ、駐車場の使いやすさなど店舗自体のポテンシャルなども加味して改善ポイントを見出し、それを商品カテゴリー別に細分化。商品の入れ替えや棚割りの変更など具体的な改善方法に落とし込んで提案を行っている。その対応は一過性のものではなく、提案の実施結果の検証、さらなる改善といったPDCAサイクルの構築までを含む。
 同社には、酒類や加工食品の卸売業というイメージが強いが、リテールサポートの範囲は食品全般、さらには日用雑貨類にまで広がっている。特に近年では低温や生鮮の分野にも注力しており、例えば青果については国内最大の青果卸売事業者である東京青果(株)や(株)ナチュラルアート、鮮魚については国内有数の水産品卸売事業者である大都魚類(株)と業務提携し、生鮮食品と加工食品を組み合わせたクロスMDの提案も積極的に行っている。さらに、惣菜や弁当の製造を手掛けるデリシャス・クック(株)などのグループ企業も活用して中食分野までを含めた幅広い対応が可能である点が、同社のリテールサポートの大きな特徴となっていると言えるだろう。

本部と支社の業務分担で効率的かつ効果的なリテールサポートを実現

 同社のリテールサポートは、本社営業本部のマーケティング担当スタッフと、全国9支社の営業企画担当スタッフの業務分担によって推進されている。
 まず、営業本部のマーケティング担当スタッフは、全国の営業現場から寄せられた情報に加え、マスメディアや業界紙誌、さらには一般生活者のブログなどのCGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)を通じて、マーチャンダイジングに関連する情報を収集。それらを分析することで食のトレンド予測などを行い、それを具体的な業態別の棚割り案などに落とし込んでコンテンツ化し、イントラネット上で公開する。
 一方、支社の営業企画担当スタッフは、担当するエリアや個別店舗の実態に合わせてその棚割り案などをアレンジし、具体的な提案に活用する。さらに用意されたコンテンツだけでは十分な対応が難しいと判断される場合には、営業本部マーケティング担当スタッフに店舗のニーズを伝えて対応を依頼。営業本部マーケティング担当スタッフは前述のような各種媒体のほか、2008年5月に運営を開始し、約14万人の会員を擁する商品モニター募集サイト「ぐるっぱ」会員を対象とするアンケート調査などによって必要な情報を収集し、個別対応を実施する。つまり、企画立案機能と現場対応機能を分担することで、効率的かつ効果的なリテールサポートの実現を図っているのだ。

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どんなところにも商品を届けることが最大のリテールサポートとの考えから、今後も力を入れていくという「問屋 国分ネット卸」(上)と、ニーズ収集のための商品モニター募集サイト「ぐるっぱ」(下)

事業者向け会員制ネット卸の運営により小規模店舗の品揃えの拡充をサポート

 冒頭で紹介したとおり、同社の納入先には中小規模の独立系小売事業者も数多いことから、これらの事業者に対するサポートも積極的に展開している。
 例えば酒販店に対しては、CVSのボランタリーチェーン「コミュニティ・ストア」を展開するグループ企業・国分グローサーズチェーン(株)を通じて、CVSへの業態転換のフォーマットを提供。業態転換を望まない店舗や立地・規模などから業態転換が難しい店舗に対しては、適切な品揃えを可能とすることが最大のサポートとなるという観点から、幅広い分野での商品供給を行っている。
 さらに、規模的にこのような対応が難しい店舗、例えば学校や病院、工場・企業や宿泊施設の売店や、離島や山間部の小規模店舗などへの対応を強化する目的で、2010年11月、国分グローサーズチェーンにより、事業者向け会員制ネット卸「問屋国分 ネット卸」を開設した。
 このサイトでは、加工食品、酒類・飲料、青果・果物、日用雑貨など、常時約8,000アイテムを用意。さらに新商品や季節対応商品なども積極的に取り入れており、会員店舗が同サイトを通じて充実した品揃えを行うことを可能としている。会員登録は無料であり、日本国内の法人であればどのような事業者でも利用することができる(酒類の購入には酒販小売業免許が必要)。配送は基本的にヤマト運輸(株)の「宅配便」で行われ、決済はクレジットカード、代引きのほか、審査を通ればヤマトフィナンシャル(株)の「クロネコ安心決済サービス」の利用により月締めの掛け払いとすることも可能だ。
 購入は基本的にケース単位であり、一定額の宅配便料金が加算されるが、対象となっている小規模店舗では、品揃えのために経営者が現金問屋を回ったり、場合によってはほかの小売店で商品を入手したりするケースも少なくないとのことであり、同サイトを手軽に幅広い品揃えを実現するチャネルとして利用する事業者は徐々に拡大している。会員数は2011年11月現在で約3,500に及んでおり、売上高も同月比で2ケタ伸長が続いている状況だ。
 同社のリテールサポート戦略における今後の課題としては、POSデータ分析やトレンド予測の精度向上などが挙げられている。
 前者については、近年、小売業においてポイントカードなどと連携したID-POSデータのベンダーへの開示が進んでおり、これらのデータの有効活用のサポートを求められていることから、データ分析の精度向上と効率化を図るとともに、商品軸での具体的提案につなげる機能を強化していく。一方、後者については、年々「これから何が売れるのか」という“兆し”に関する情報を求められるケースが多くなっていることから、情報ソースの多角化や分析手法の多様化などを通じて、そのニーズを充足させていきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年12月号の記事