すぐに使える“ご繁盛ネタ”の提供で飲食店経営をサポート

アサヒビール(株)

アサヒビール(株)では2009年5月からインターネット上で「ご繁盛サポートネット」を運営。会員の飲食店を対象に販促アイデアやレシピ、食材・料理画像素材などの実践的な情報を提供するとともに、会員向けセミナーの開催なども行うことで、飲食店経営をサポートしている。

インターネットを通じた情報提供で飲食店のマインドシェアを向上

 日本を代表するビールのブランド「スーパードライ」をはじめとするビール類のほか、チューハイ・ウイスキー・焼酎・ワイン・リキュール類など、幅広い酒類のラインナップを提供するアサヒビール(株)では、インターネット上で「ご繁盛サポートネット」を運営。ビールをはじめとする同社商品を取り扱う飲食店のサポートを行っている。
 全国に70万~80万軒前後の飲食店があると言われる中、同社商品を取り扱う飲食店はその約半数に及んでいる。これらの飲食店に同社商品を直接納入しているのは各地域の酒販店であるが、同社でも全国各地に設置している支社・支店の営業スタッフがこれらの飲食店を巡回してコミュニケーションを図り、また、飲食店経営に役立つ情報提供を行うことで、飲食店の同社に対するマインドシェアの向上を図っている。「ご繁盛サポートネット」の運営は、このような動きをさらに拡充することを目的とするものであり、特に飲食店経営者・店長などが「好きな時に好きな情報を」取得できる環境を提供することを目指している。
 同サイトがオープンしたのは2009年5月。準備には構想期間を含め、約2年間を費やした。開発に当たっては、特に飲食店経営者・店長などの視点に立つことを意識し、欲しい情報に関するアンケート調査を実施したほか、社内イントラネットなどを通じて日常的に飲食店経営者・店長などとコミュニケーションをとっている同社の営業スタッフからも意見を収集。その結果、同社の収益に直接つながる“ドリンク類”の売り方を提案するだけでなく、「飲食店が顧客に喜ばれる経営を実現し、コストを下げつついかに収益を上げるか」に役立つ情報を提供することに主眼を置いたサイトづくりが行われた。

会員制により専門的な情報を提供するとともに送客面でのサポートも実施

 「ご繁盛サポートネット」では、ターゲットを限定することでより専門的な情報を提供しようという観点から、会員制が採られている。会員資格は同社商品を取り扱っている飲食店、または飲食店新規開業予定者で、入会金や年会費などは無料。なお、会員登録を行うと同社が別途運営する飲食店紹介サイト「アサヒグルメガイド」に店舗情報が無料掲載されるかたちとなっており、飲食店にとっては情報によるサポートとともに、送客面でのサポートも受けられることとなる。
 コンテンツとしては、すぐに使える販促アイデアを紹介する「52週販促カレンダー」、生活者の外食行動に関するデータを紹介する「外食市場調査」、飲食店で使える料理レシピを紹介する「業務用レシピ」、メニューやチラシに活用できる無料の食材・料理画像を集めた「画像素材集」、定番・オリジナルカクテルのレシピを紹介する「カクテルメニュー検索」、繁盛店情報をレポートする「プロが薦める繁盛店」などがあり、大半のコンテンツはログインした会員のみが閲覧できるかたちとなっている。そのほか、会員に対してはメールマガジンを月2回配信し、各種情報を提供している。なおコンテンツは、必ず週に1回以上、更新しており、さらに外部から提供されるデイリーの「外食ニュース」を掲載することなどで、常にサイトの新鮮さを保っている。
 同サイトの登録会員数は2011年10月現在で約1万2,000軒。2010年まではコンテンツの充実化に力点を置いていたため、告知については営業スタッフが担当する飲食店に紹介したり、新規開業予定者に配布する冊子に案内を掲載する程度であった。しかし2011年に入ってからは、実務に役立つコンテンツがある程度揃ったという判断から、『日経レストランONLINE』など、飲食業界関連のインターネット上の媒体にバナー広告を出稿するといった施策を開始しており、2012年度中には3万軒の会員化を目指している。なお、会員のエリア分布には特に偏りはなく、店舗分布にほぼ比例している。また業態については、当初は和食店・居酒屋などフード中心の店舗を想定していたが、実際にはバーなどの登録も数多く見受けられることから、今後、十分な検証を行った上で、これらの業態向けのコンテンツも拡充する意向である。

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「販促のヒント」「メニュー支援」「外食・市場情報」など幅広い情報を提供する「ご繁盛サポートネット」(左)。会員の店舗情報は「アサヒグルメガイド」で一般生活者に紹介している(右)

飲食店の経営において「なくてはならない存在」を目指す

 「ご繁盛サポートネット」の閲覧実績は、最近では月間5万PV前後といった状況であり、会員数を考えると比較的活発に利用されていると同社は認識している。また、会員を対象としたアンケート調査でも約8割が「役に立つ」と評価していることから、定量・定性の両面で一定の成果が発揮されているものと評価している。
 なお、売り上げや新規顧客の獲得、離反率の低減など、同社の業務用ビジネス全体への貢献度については、一定のロジックに基づいた定期的な検証を行っているという。同サイトの運営コストが比較的低く抑えられていることから、投資対効果という面でも採算性は確保できているものと判断している。
 今後については、前述の通り、2012年度中には会員数3万軒の実現を目指すほか、コンテンツの充実化にも恒常的に取り組んでいく。具体的には、外部の飲食関連媒体とのタイアップを考えており、現在、検討を進めている段階だ。
 さらに、会員向けセミナーの開催やメニュー作成サポートなどのサービス提供も行っていく方針。前者については、すでに2011年9月・11月に会員を同社のセミナールームに無料招待してワイン業態開発に関するセミナーを実施するなど、具体的な取り組みを開始している。今後もインターネット上にとどまらず、このようなリアルな場でのサポートも拡充していくことで、会員の満足度向上を図っていく意向である。
 なお、「ご繁盛サポートネット」はこれまで、同社商品を取り扱う飲食店の経営をサポートすることで顧客とのリレーションを深め、結果として既存取扱店を維持することを目的としており、同社商品の売り上げの向上や新規取扱店の獲得のためのツールと位置付けられてはいなかった。しかし今後、特に当面の目標としている会員数3万軒を実現した段階では、現在も提供している「52週販促カレンダー」や「画像素材集」などの実践的なコンテンツをさらに強化し、同サイトを会員飲食店の経営において「なくてはならない存在」とすることで既存取扱店の維持に貢献。さらに、その実績をアピールすることで新規取扱店の獲得にもつながるよう、同社の業務用ビジネス全般への寄与度をさらに高めていきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年12月号の記事