Webサイトを通じて安定した宿泊予約を獲得

(株)東急ホテルズ

日本全国で東急ホテル、エクセルホテル東急、東急インなどのブランドでホテル運営を行う(株)東急ホテルズでは、2000年代半ばから自社Webサイトを通じた宿泊予約の拡大に着手。SEMを中心とした集客とタイムリーなリニューアルなどを通じて安定した成果を獲得している。

2000年代半ばよりWebサイトを拡充し宿泊予約機能を強化

 東急グループのホテル運営会社として、2010年10月にオープンしたザ・キャピトルホテル東急をはじめ、日本全国で東急ホテル、エクセルホテル東急、東急イン、東急リゾート、ホテル東急ビズフォートなどさまざまなブランドの、提携ホテルを含む49ホテルを運営する(株)東急ホテルズ。同社では、Webサイトを通じてユーザー・見込客に、チェーンホテルの情報と利便性の高い宿泊予約システムを提供することで、チェーンホテルの利用促進を図っている。
 同社がWebマーケティングへの取り組みを本格化したのは2000年代初頭。開設当初のWebサイトの役割は、紙媒体に代わるチェーンホテルに関する情報発信が主であった。しかし、2000年代半ばにはOTA(オンライン・トラベル・エージェント)などの宿泊予約ポータルサイトが林立し、インターネットを通じた宿泊予約が一般化したことから、同社Webサイトでも宿泊予約機能を強化。さらに2006年には、PCサイトに加え、ケータイサイトを立ち上げ、現在に至っている。
 ちなみに同社の宿泊予約全体においては、外部の宿泊予約ポータルサイトを含め、インターネットを通じた予約が約40%を占めており、そのうち12~13%が自社Webサイトによるもの。インターネット経由の予約が全体に依然増加傾向にある中で、自社Webサイト経由の予約も徐々に増加している。

SEMを中心にWebサイトへの集客を強化

 同社のWebサイトはチェーンホテル全体の情報を網羅しており、予約機能としては「空室検索」「ホテル案内」を中心に構成されている。「ホテル案内」についてはホテルブランド別のほか、地域別でも検索ができるようになっており、いずれかから各ホテル別のページに誘導し、さらに各ホテルのオリジナルWebサイトにリンクするかたちが採られている。なお、Webサイトの構築においてはコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)が採用されており、各ホテルのオリジナルWebサイトについては各ホテルの担当者が随時更新を行えるようになっている。
 Webサイトへの集客については、まず、インターネット上では、いわゆる検索エンジン・マーケティング(SEM)を中心に、恒常的にSEO対策を行うほか、随時、リスティング広告などを出稿している。今後はユーザーの行動履歴をもとに、それにマッチした広告を表示するリターゲティング広告など、より効率の良い手法を求めていく方針である。なお、“東急”の名を冠した同社のホテルブランドはもともと高い知名度を有しており、また、近年では2010年10月にフラッグシップ・ホテルとして東京・永田町にザ・キャピトルホテル東急をオープンするなどの話題性もあったことから、自然検索による訪問数も増加傾向にあるとのことだ。
 インターネット以外の広告については、景気の低迷、東日本大震災などの影響で、予算のボリュームを抑えざるを得ない状況にあるが、その中にあっても、東急グループのメリットを生かし、東急電鉄東横線・田園都市線沿線において交通広告を展開。Webサイトへの誘導を図っている。
 これらの取り組みの結果、近年では、シーズンによるバラツキはあるものの、PVは平均して月間400万~450万を維持。リピーターも多く、一定規模の宿泊予約件数を確保できているという。同社では今後、これらの一層の拡大を図っていきたい考えだ。

各ホテルでFacebookページの立ち上げ準備を推進

 そのほか、同社がWebサイトを通じたマーケティングの中で特に注力しているのが、約30万人に上る「コンフォートメンバーズ」会員への対応だ。
 「コンフォートメンバーズ」は、Webサイトのほか、各ホテルで入会手続きができ、常時、会員特別料金が適用されるほか、利用に応じて宿泊・飲食などに利用できるポイントが貯まる特典があるポイントプログラム。希望者には月1回以上、メンバー限定プランや各種キャンペーン、ポイントプログラムの有効活用法などを案内するメールマガジンを配信するほか、メンバー専用ページでも同様の情報を紹介している。さらに同一条件の宿泊であれば、他の経路からの予約と比較して常に料金が最も安い“ベストレート”を約束することで、会員のリピート利用促進を図っている。
 また、ソーシャルメディアへの取り組みについては、これまで各ホテルでブログを立ち上げたり、Twitterを通じて情報を発信したりといった試みを続けてきたが、最近では、各ホテルごとのFacebookページの立ち上げ準備を進めている。将来的にはチェーン全体のFacebookページも運営する予定。チェーンホテルに共通する運営ポリシーやルールなどを整備していくことで、チェーン全体として統一感のある運営につなげていきたいとしている。

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ブランド価値を伝えながら、より早く確実に予約できる機能も充実させている東急ホテルズのホームページ。「コンフォートメンバーズ」専用ページでは“ベストレート”を約束している

今後の課題は海外マーケット対応とマルチデバイス対応

 同社がWebマーケティングの効果測定をするKPIとして最も重視しているのは、最終的なコンバージョン数である。
 同社では、ユーザーが宿泊するホテルを決定する最大の要因は、“商品”の質にあると考えており、常にハード・ソフトの両面で商品力の向上を図っているが、Webサイトでも、その魅力を最大限に伝えるべく、できる限りタイムリーにリニューアルを行うことなどを徹底している。今後も前述の集客施策と併せて、Webサイトの表現力を高めることを通じ、Webサイトからの宿泊予約の促進を図っていく。
 そのほか、今後の課題としては海外マーケット、特に今後伸長が予想されるアジア圏のマーケットへの対応強化が挙げられている。
 同社は世界各国からのユーザーに対応しており、Webサイトにおいても、チェーン本部サイトでは、現状、日本語のほか、英語、中国語、韓国語版を用意。特に中国語版については簡体字版と繁体字版を用意するなど、きめ細かな対応を行っている。さらにコンテンツについても、単に日本語版のWebサイトを翻訳するだけでなく、外国人目線での主要都市の観光マップや、空港からのアクセスマップなどの充実化を図ることで、海外からのユーザーのニーズへの対応を強化したい考えだ。
 一方、スマートフォンやタブレットPCなどの普及により、これらのデバイスを利用して宿泊予約を行うユーザーも増加しつつある。同社では、どのデバイスからでもストレスなく予約が行える環境の整備を進めていきたいとしている。これらの取り組みを通じて、Webサイトのマーケティング装置としての位置付けを一層高めていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年11月号の記事