カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)では、数々のコラボレーション企画を展開している。2010年3月には、地域別コミュニケーション第一弾として「We Love 鹿児島」を実施。その結果、「Tポイント」が使える店舗の認知度向上、「Tポイント」のイメージの向上、そして参加企業の売上増に成功した。
「Tポイント」で新規顧客獲得や相互送客を展開
CDやDVDのレンタルおよび販売を行うTSUTAYAなどを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)。同社が運営する共通ポイントサービス「Tポイント」は、共通ポイントサービスの草分け的な存在であり、2003年10月のスタート以来、多彩なジャンルの企業と提携を結び、着々と利用シーンを拡大してきた。2010年4月末現在の参加企業数は70社、Tポイントが使える店舗数は3万2,000店に上る。また、Tポイントを載せるTカードがあれば、TSUTAYAをはじめ、コンビニのファミリーマートやガソリンスタンドのENEOS、ファミリーレストランのガスト、カメラのキタムラなど、生活の中のさまざまなシーンでTポイントをためたり使ったりすることができることを強みに、多くの会員を獲得。同じく4月末現在の会員数はおよそ3,486万人に達しており、日本最大規模の共通ポイントカードへと成長している。
Tポイントは、もともとTSUTAYAが独自に展開していたポイントサービスだったが、自社の会員を参加企業へ送客することによる新規顧客開拓支援事業への参入を目的に、共通ポイントサービス化に踏み切った経緯がある。そのため同社では、サービス開始以来、参加企業とのコラボレーションや参加企業同士のコラボレーションを積極的に推進してきたのだ。
Tポイントを活用して行うコラボレーションのパターンは、新規顧客の獲得と相互送客の2つに大別することができる。前者はTSUTAYAにDVDなどを借りに来た会員を対象に、その会員がまだ利用していない参加企業の店舗で使えるクーポンを発行する。後者は異業種の参加企業が共同で、利用時にTカードを提示したお客さまにクーポンを配布して相互に送客を促したり、コラボレーション・キャンペーンによる相互告知をしたりといったものだ。
地域限定の「We Love 鹿児島」を実施
Tポイントは、日本国民の約30%が保有していることからもわかるように高い認知率を誇っているが、同社ではさらなる認知の向上、利用促進・会員拡大を目指し、今後は地域別コミュニケーションに注力する計画。その第一弾として、2010年3月1日から31日まで、鹿児島県において「We Love 鹿児島」キャンペーンを実施した。
「We Love 鹿児島」キャンペーンでは、①Tポイントをためられるお店の認知度の向上、②Tポイントのブランドイメージの向上、そして③参加企業間の相互送客による売上向上を目的としており、以下の3つの施策が用意された。
1つ目は、Tポイント2倍キャンペーン。これはキャンペーン期間中に鹿児島県内にある対象店でTカードを提示すると、通常の2倍のポイントが付与されるというもの。鹿児島県内に店舗を構える11社・13ブランドが対象店として参加した。
2つ目は、地域への貢献。期間中に鹿児島県内で付与されたTポイント総付与数の10%を子どもたちの未来に役立つ本やCDなどに交換し、同県の離島にある小学校に寄贈するというもの。
3つ目は、プレゼントキャンペーン。Tカード保有の有無にかかわらず、キャンペーン期間中にエントリーした人の中から、抽選で6名にTポイント総額150万ポイントをプレゼントするという施策だ。
告知には、テレビCMやラジオ、市電のラッピング広告や駅張りなどの屋外メディア、新聞、パブリシティを活用。併せて、対象店の店頭に、ポイント2倍を実施している店舗を紹介したポスターやのぼりを取り付けた。
「We Love 鹿児島」キャンペーンの1コマ。ラッピングした市電が行く!
単にポイントの付与率を上げるだけではなく、地域への貢献や多角的な告知が功を奏し、「We Love 鹿児島」キャンペーン終了後に会員、非会員を問わずに実施した調査では、Tポイントのイメージが総合的に高まったことが確認された(図表1)。
また、POSデータの分析結果からは、会員の利用店舗数が増えていることが明らかになったという。加えて、大半の参加企業において売上高が増加した。これは、Tポイントがためられる店舗の認知度が高まったことに加え、参加企業間における相互送客が功を奏したことを裏付けているものと言えよう。
コラボレーション企画の留意点は生活者視点と参加企業のメリット
同社では、これまで2社によるコラボレーション企画は数多く手掛けてきたが、「We Love 鹿児島」のような大規模な企画は珍しいという。
コラボレーションを企画するに当たり、同社が留意している点は、生活者視点と参加企業のメリットである。どのようなキャンペーンを企画したとしても、近所に対象店がないなど生活導線に沿った仕組みでなければ、会員の参加は得られない。結局、いつもの店での利用に終始してしまい、相互送客にはつながらないのだ。
また、参加企業各社に同等のメリットがなければ、参加する意味が薄れてしまう。Tポイントには多業種が参加しており、かつ各社の店舗数、来店頻度、平均購入金額にバラツキが見られるがゆえに、各社に同等のメリットをもたらすことは至難の業ではあるが、それこそが不可欠な要素なのである。
マス広告の効果が薄れてきたと言われて久しい。一方では店頭やサンプリングといったリアルのタッチポイントを通じた情報提供が見直されつつある。こうした中、Tポイントをインフラに店頭を活用するコラボレーションへの期待は高まっている。同社では、今後もTポイントの利用促進および会員拡大に努めるとともに、Tポイントのイメージを高め、参加企業の収益増に貢献していきたいとしている。