情報コンテンツと広告コンテンツを組み合わせた地域密着型メディアを展開

福岡街メディア

限られたエリアに500面以上のディスプレーを配する地域密着型メディア

 ソフトバンクグループでデジタルサイネージ(DS)・メディアの企画・開発・運用などを手掛けるCOMEL(株)では、2007年3月から、九州・福岡を舞台に、DSを活用した地域密着型メディア「福岡街メディア」の運営を行っている。プロジェクトの実施エリアとして福岡を選択した理由は、空港や駅、ビジネス街、繁華街などが比較的狭い範囲に集中しており、地域密着型メディアが成立しやすいと想定されたこと。さらにソフトバンクグループのプロ野球球団、福岡ソフトバンク・ホークスの本拠地であり、グループ力を生かしてホークス関連のコンテンツを提供すれば、浸透しやすいのではないかという考えもあった。
 ディスプレーの設置場所は、スーパーマーケット・量販店、コンビニエンスストア、ドラッグストア、飲食・小売店、空港・駅・バスセンター、公共施設、商業ビル、商店街など。当初は64面からスタートしたが、その後、認知度の向上に伴い設置場所が順調に拡大し、現在では500面以上を展開している。なお、ディスプレーには、空港・駅・バスセンターの通路や公共施設などに設置している40インチディスプレーを筐体に組み込んだ縦型と、商業施設のレジ上などに設置している32~52インチの横型がある。
 放映コンテンツは、基本的に「試合速報」「ホークスニュース」「順位表・ランキング」などの福岡ソフトバンク・ホークス関連コンテンツのほか、スポンサー提供による広告コンテンツ、ディスプレーの設置場所オーナーによるロケーション・オーナー・コンテンツなどにより構成されている。運営コストはスポンサーからの広告収入により捻出する仕組みであり、広告モデルのメディアであると言える。ちなみに、広告料金は15秒枠で1日の掲出回数のべ2万4,000回、2週間掲出の場合で50万円(税別)が基本だ。なお、コンテンツ編成は15分ロールで行っており、ロケーション・オーナー・コンテンツ以外については、原則的にすべてのロケーションで同一内容が放映される仕組みであるが、設置場所オーナーの要望などにより、一部を差し替えるケースもある。

広告収入の確保に向けて媒体効果の検証に注力

 「福岡街メディア」は前述の通り、広告モデルのメディアであり、いかにスポンサーを獲得するかが事業展開における大きなポイントとなる。そうした中で同社が力を入れているのが、媒体効果の検証である。
 具体的には、福岡市内在住者を対象に隔月で1,000人規模のインターネット調査を実施し、「媒体認知率」「媒体認知者属性」「広告認知率」のほか、広告を見て行動を起こした割合を示す「行動喚起率」を測定している。その結果、例えば2008年12月の調査では、20~30代の若年層を中心に、対象者の約8割が媒体を認知しており、うち半数以上が「広告内容を覚えている」と回答。また、広告を見た人のうち1割以上が商品購入、施設訪問などの行動を起こしたというデータも得られた。これらのデータはスポンサー獲得のための大きな武器になるとともに、事業をブラッシュアップするための貴重な資料にもなっている。このような取り組みにより、大手日用品メーカーや食品メーカーなどを中心に数多くのスポンサーを獲得、最近では地場のイベント関連企業からの引き合いも増加している。
 「福岡街メディア」では、地域密着型メディアならではの試みも数多く実施されている。例えば、ホークス関連コンテンツでは、ホークスファンから投稿される応援メッセージを紹介するコーナーを展開。また、バレンタイン・シーズンには、チョコレート・メーカーの協賛により、告白メッセージを紹介するユーザー参加型のキャンペーンを実施した。そのほか、劇団四季が広告コンテンツの中で、市内の劇場の空席情報をリアルタイムで告知することにより、当日券の拡販につなげていることなども、地域密着型の特性を十分に活用した例と言えるだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年6月号の記事