フィットネスクラブの顧客特性に注目
フィットネスクラブに集まる会員は、性年代的には若年層男女から高年齢層男女までバラエティに富んでいながら、経済的にある程度の余裕があり、同時に健康志向が高いという共通点がある。一方、個別施設単位で見ると、一定の商圏内に居住または通勤・通学しているという点でセグメントされていると言える。その中で、フィットネスクラブ来場者の平均滞在時間は2時間前後と言われており、特にランニングマシンを利用している時間などでは、視聴覚的に“退屈”している会員も少なくない。
このような状況に注目し、(株)寒山がフィットネス機器メーカーのプリコー社、およびフィットネスクラブ各社と連携して運営しているデジタルサイネージが、“フィットネスクラブメディア「EXIT」(イグジット)”である。「EXIT」では、フィットネスクラブ館内の天井や壁面などに大型ビジョンを設置するほか、多くの会員が利用するランニングマシンにもモニターを取り付け、オリジナルチャンネルを放映している。ランニングマシンに取り付けられたモニターでは地上波TVの視聴も可能だが、マシン起動時にはデフォルトでオリジナルチャンネルが立ち上がる仕組みだ。
オリジナルチャンネルは60分が1サイクル。内容的にはミュージックビデオ、各クラブのオリジナル・インフォメーション、健康関連ミニ情報などの汎用コンテンツ、および広告コンテンツで構成されており、基本的に毎月1日に更新される。広告に関しては15秒、30秒、60秒のCM、または60秒、90秒のインフォマーシャルが1サイクルの間に3回放映されるかたちだ。なお、コンテンツの準備については、各クラブのオリジナル・インフォメーションについては各クラブが、そのほかについては寒山が実施。広告収入は、導入クラブと寒山、プリコー社でシェアする仕組みとなっている。
「EXIT」は2007年からスタート。2009年11月現在では、関東31施設、東海・中部・北陸3施設、関西10施設、北海道1施設の計45施設に導入されている。1施設の平均会員数は約4,000人、1日の平均来場者数は約1,200人で、月間の視聴会員数は140万人以上に及んでいる状況だ。
立体的なプロモーション展開も可能
「EXIT」では、広告枠について全導入施設ベースのエリア枠と任意の1施設ベースのローカル枠を設定。月間基本料金はエリア枠の15秒CMが150万円、60秒インフォマーシャルが400万円、ローカル枠の15秒CMが35万円、60秒インフォマーシャルが100万円などとなっている。これまでの出稿実績クライアント業種では、スポーツ用品メーカーやスポーツドリンクなどの飲料メーカー、健康系食品メーカーなどが中心。そのほか最近では、特にローカル枠で自動車ディーラー、分譲マンションなどの不動産関連事業者からの引き合いも増加しているとのことだ。
なお、「EXIT」では、フィットネスクラブというリアルなスペースを舞台としていることから、立体的なプロモーションが展開できることも大きな特徴となっている。例えば、飲料やヘアケア製品などについては、入館時にスタッフが手渡しを行うサンプリングや体験イベントの実施が可能であり、一定の時間のうちに商品情報と実体験の機会を提供することができる。また、来場者が必ず利用するロッカーの扉にステッカーを張り出すことなどで、「EXIT」を通じた映像・音声情報による感性への訴求と文字情報による理性への訴求を組み合わせ、相乗効果を演出することも可能だ。
「EXIT」同様の仕組みが、例えば欧州においては600施設以上に普及していることなどから、さらなる拡大が可能だと考えており、特にモニターの設置対象となるランニングマシンのリプレースなどのタイミングを狙って導入を進めていく方針である。
そのほか、特に広告メディアとしては、現状ではナショナル・クライアントを広告主とするエリア枠の利用が中心であるが、今後は送客などの具体的効果が見込める地域密着型メディアとしての特性を訴求することで、ローカル枠の利用も拡大していく方針である。