電車内や駅の広告メディア化で鉄道事業の収益力向上に貢献

SaiNet Vision 

電車内や駅を有効活用して収益力向上に貢献

 「SaiNet Vision」は、彩ネットアド(株)が2006年よりスタートした埼玉高速鉄道線の車両内、および駅で展開するデジタルサイネージによる映像広告メディアである。
 一般的に電車内は、ある意味で閉鎖されている空間であり、乗客は基本的に“ヒマ”である。一方、鉄道の駅は、多くの人が行き交い、通勤・通学などを中心に反復利用が行われる場所である。これらの特性は、電車内や駅が“情報伝達に優れている”ことを示しており、ひいては、生活者に広告を提示するためのロケーションとして有望であることを物語ってもいる。
 埼玉高速鉄道(株)ではこのような認識から、同社が2001年3月に開業した埼玉高速鉄道線の電車内や駅を有効活用して収益をアップするソリューションに関するコンペを2005年に実施した。そのコンペで採用されたのが「SaiNet Vision」である。
 「SaiNet Vision」は埼玉高速鉄道が電車内、および駅のロケーションを提供。彩ネットアドはデジタルサイネージ・システムおよび保守サービスを含むソフトウエアを提供し、広告収入をこの2社でシェアするビジネスモデルだ。
 電車内については、埼玉高速鉄道の全60車両のドア上4カ所に15インチ液晶パネルを設置。埼玉高速鉄道線内の浦和美園~赤羽岩淵間はもちろん、相互乗り入れを行っている東京メトロ南北線内、および東急電鉄目黒線内でも映像放映を行っている。
 映像は約9分間1ローテーションで配信。クイズ、新聞マンガ風のデジタル4コマなどの情報コンテンツに広告コンテンツと埼玉高速鉄道からの案内などをはさみ込むスタイルだ。
 一方、駅については、改札周辺に42~61インチのプラズマモニタ、または80インチのプロジェクションを設置。広告を中心に約6分間1ローテーションのコンテンツを配信している。
 「SaiNet Vision」の広告媒体としての特徴は、安定した接触者数が見込めることだ。例えば浦和美園~川口元郷の7駅の1日平均乗車人員は約8万人(2008年実績)。往復で利用している人が多いことを考えると、1日に約14万人が駅を利用していることになる。1駅で広告1コマを4週間掲出すると、放送日数28日で計5,320回の露出があるので、かなり高い接触確率が期待できる。さらに車内については、東京メトロ南北線、東急電鉄目黒線の利用者も加わるため、その期待値はさらに高まると言えよう。

広告効果に関する客観的なデータ整備が課題

 「SaiNet Vision」のこれまでの広告クライアントは、食品・飲料メーカーや通信事業者、不動産事業者、教育機関・学習塾、自治体およびその関連団体など。駅に関しては地元の飲食店などが出稿したケースもある。スタート当初は認知度の低さからクライアント獲得に苦労していたが、最近では媒体に対する認知・理解度が徐々に深まり、広告代理店を通じた問い合わせなども増加しつつあるとのことだ。
 今後の課題としては、広告効果に関する客観的なデータを整備することが挙げられている。2010年度中にも独自の視認状況調査を行い、その結果を提示することで、広告クライアントに対する説得力を向上し、さらなるクライアント獲得につなげていく方針である。
 また、コンテンツの充実化も手掛けていく。例えば、電車内については、当初、広告だけだったコンテンツを、注目度向上を目指して情報コンテンツとの混在型としたが、加えて埼玉高速鉄道線が通勤路線であり、長時間乗車している乗客が多いことを考慮し、現在約9分間としているローテーションをさらに長尺化することも検討している。
 さらに駅についてもTwitterをからめたコンテンツを導入するなど、より注目度を高める工夫を続けていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年6月号の記事