(株)イコールコンディションが運営する「ルセット」では、インターネット上で最高級天然酵母パンを販売。注文に製造が追い付かないほどの人気を博している。特に注目されるのはその販売方法。商品群ごとの特性に合わせて、紹介販売、頒布会販売、抽選販売など多彩な販売方式を採用し、ユーザーニーズの充足と希少価値の維持を両立させている。
インターネットで最高級天然酵母パンを販売
食パンと言えば、リーズナブルなパンの代名詞的存在。デフレが進行する中、スーパーマーケットでは大手メーカーの製品が1斤100円未満で販売されることも珍しくない。しかし、世の中には1.5斤サイズ2,200円で販売されている食パンが存在する。しかも、月1回のみの販売はいつもすぐに「完売御礼」状態となる。それが、(株)イコールコンディションが運営する最高級天然酵母パン専門店「ルセット」が販売する「@shokupan」である。
「@shokupan」は、国内産小麦と有機栽培米を栄養として培養した天然酵母のほか、北海道産の小麦粉や大島産の自然海塩、鹿児島県喜界島産のサトウキビ粗糖、群馬県榛名山産のミネラルウォーターなどの厳選素材を用いて、長期間熟成製法により製造される食パンだ。ルセットはこのようなこだわりパンを販売するパン専門店として1999年にオープン。当初は東京都世田谷区三宿でイートイン・コーナーを備えたベーカリーとして営業していたが、インターネット販売を開始したところ、注文が殺到して生産が追い付かない状況になった。そのため、2004年10月に製造拠点を世田谷区池尻の「IID 世田谷ものづくり学校」内に移転した後に店舗を閉鎖し、インターネット販売のみでの展開に移行した。なお、パンについては一般的に“焼きたて”を貴ぶ文化が定着しているため、お届けまでに日にちがかかるインターネット販売が全面的に受け入れられるかについては若干の危惧があったとのこと。しかし、お届けする過程において香りや旨みが熟成してゆくレシピを開発した結果、顧客から好評を博し、多くのリピート・オーダーを獲得、注文が生産を上回る状態が継続している。
2010年3月現在、取扱商品は「@shokupan」のほか、和三盆や高知県四万十川源流で放し飼いされた鶏卵などを使った和菓子パン「@japan」、和三盆からできる黒蜜を使ったブラウン色の食パン「@kuromitsu」、最高級シナモンブレッド「@cinnamon」など。販売はいずれもインターネット上でのみ行われているが、商品群ごとに異なった販売方式が採られている。
まず、「@shokupan」については、“通常販売”として月1回次月分の注文を先着順で受け付けている。サイズは1.5斤サイズと3斤サイズ(3,300円)の2種類。また、顧客からの継続して購入したいという声を受けて、“4週連続お届け”制度も導入している。
次に「@japan」については、“紹介販売”方式を採用。購入できるのは、同方式導入以前からの同商品購入実績客と、購入実績客からの紹介顧客のみ。ちなみに販売価格は1個7,600円だ。
また、「@kuromitsu」などは“頒布会商品”と位置付けられており、注文すると6カ月に渡って毎月異なるパンが届けられる。販売価格は2万5,700円(送料込み)で、頒布会入会者に限って、届けられるパンを追加注文することも可能な仕組みだ。
さらに、「@cinnamon」など3種類の商品については“抽選販売方式”を採用。3カ月サイクルで毎月1種類の商品について製造月前月に申し込みを受け付けて抽選を実施し、当選者にのみ販売を行っている。ちなみに販売価格については、抽選結果をeメールでお知らせする場合(3,800円)と発送をもって発表に代える場合(3,300円)の2種類を設定している。
なお、配送については宅配便を利用(頒布会商品以外では別途送料を設定)。支払い方法については、クレジットカード払いと代引き払いを用意している。
パッケージでもステータス性を演出
ルセットの最高級パン販売においては、「いたずらに生産量を増やしてしまうと品質を維持することが難しい」という判断から、殺到する注文にもかかわらず生産量を抑えている。このことが、結果として希少価値を生んでいるという側面もあるが、販売者としてブランドイメージを維持するために行っているさまざまな施策も見逃せない。
例えば、「@shokupan」以外の商品については、アートディレクター・赤池完介氏によるパッケージを使用してステータス性を演出。また商品には必ず、おいしい食べ方や適切な保存方法、それぞれのパンの特徴などを記したレター、リーフレットなどを同封して、購入客が“舌”だけでなく“頭”でも商品を楽しめるように工夫している。そのほか、月2~3回配信している『メール通信』において、商品の販売情報などを発信して、“パン愛好者”の関心の維持を図っている。
このような取り組みの結果、ルセットの会員数は全国約3万人にも及んでいる。中には、同店がテレビ番組で取り上げられたことなどに興味を覚えた人が、1回限り購入するというケースもあるが、多くはリピーターとなっており、特に3割前後は毎月「@shokupan」の“4週連続お届け”制度を利用するコアなファン層となっている。なお、同店では注文受付時に属性情報を収集していないため、顧客プロフィールの詳細は明らかではないが、顧客から寄せられるeメールなどによれば、30~50代の主婦やOLなどが中心となっているもよう。
アートディレクター・赤池完介氏によるパッケージ
新サイトで“美医食同源パン”を提供
ルセットの最高級パン販売では、前述の通り、注文が生産を上回る状態が継続している。しかし、生産量については、スケジュールの調整によって最大化を図っているものの、生産設備の増強などは行っていないことから、年間1億円前後で推移しており、大きな変動はない。
なお、ルセットを運営するイコールコンディションでは、これまでにルセットのほか、こだわりのマドレーヌをインターネット販売する「池尻マドレーヌ」や、本場ヨーロッパのパンを直輸入してインターネット販売する「セレクトパンヤ」などの事業を手掛けてきたが、2010年2月、新たなパンのインターネット販売事業「ルセットプラス」をスタートした。
同事業で提供するパンは“美医食同源パン”。美医食同源とはおいしく食べて健康になり、かつ美しくなれるという新しいコンセプトのパンだ。従来のパンは栄養学から見て栄養素が偏ることが避けられなかったが、ルセットプラスでは、管理栄養士の監修の下に、雑穀をメインに質が高く栄養価の高いこだわり素材を厳選するとともに、手間を惜しまない仕込みを行うことで、「重量感たっぷりで密度が濃いのにカロリーは高くない」「低ナトリウム、高いミネラルで健康と美容の目的に合わせた栄養設計」といった特徴を持つ、“毎日食べたくなる”健康パンを実現。赤米とあわを使った「RED PLUS」、黒米とひえを使った「BLACK PLUS」、大麦ときびを使った「YELLOW PLUS」の3種類とも、2~4月の製造・発送分については完売となるなど、すでに高い人気を集めている。同社では今後もこのようなかたちで商品およびサイトの横展開を進めることで、“食”にこだわりを持つユーザーのニーズを満たしていく意向である。
新たに“美医食同源パン”「ルセットプラス」をスタート