競合とは似て非なる共通ポイント「Ponta」の狙いとは?

(株)ロイヤリティ マーケティング

三菱商事(株)子会社の(株)ロイヤリティマーケティングは、3月1日、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を開始した。Pontaにはサービス開始当初から、(株)ローソン約8,600店、昭和シェル(株)約3,500店、(株)ゲオ約950店など11社が参加。3年後には会員数3,500万人、提携企業数60社を目指している。

三菱商事子会社が運営 自らは黒子に徹する

 (株)ロイヤリティマーケティング(LM社)は、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する三菱商事の100%子会社。Pontaは三菱商事が広範囲に及ぶ投資先や取引先との関係を最大限に活用し、消費市場における企業ネットワーク構築を目指して開発したプログラムで、同社の10年間にわたる研究成果が結晶したものと言える。
 LM社が掲げるのは第三世代の共通ポイントプログラム。自社販促を目的とした企業単体のプログラム(第一世代)、ポイント交換をはじめとする企業連合によるプログラム運用(第二世代)の弱点を克服した「専用事業者によるポイントプログラム運営」を特徴とする。同社によると、海外においてはすでに、英国のNectar、韓国のOkcashbag、ドイツのPAYBACK、マレーシアのBonusLinkなどの第三世代が主流になっているとのこと。例えば、イギリス最大の共通プログラムであるNectarの場合、2002年の立ち上げから3年間で、同国全世帯の約半分に浸透しているという。
 Pontaではひとつの会員組織による、ひとつのポイントを用いた加盟企業間の相互送客モデルを確立した。一見するとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)(CCC)のTポイントと同様の仕組みに思えるが、同社では全く異なるビジネスモデルととらえている。
 Tポイントの場合、TSUTAYAの顧客基盤を利用したモデルのため、どうしても同社の色が濃くなりがちである。その点、PontaはサードパーティであるLM社が黒子として運営するため、性別、年代など、さまざまな属性の会員が獲得できるのだという。

すでに17社が参加を表明 目標は3年後に60社に上方修正

 Pontaには3月1日のスタート時点から(株)ゲオ、(株)ローソン、昭和シェル石油(株)、(株)サカイ引越センター、ケンタッキーフライドチキン(千葉県限定)のKFCコーポレーション、自動車保険情報提供のSBIホールディングス(株)、車の総合情報サイトのオートックワン(株)など11社・約1万1,900店舗が参加。ビジネスホテルのルートインジャパン(株)など今後参加を表明している企業を含めると、すでに17社が名乗りを上げている。電子マネーでは、Edyを利用するとPontaのポイントをためることができるサービスも提供する。LM社では加盟企業数の合計で一刻も早くTポイントに追い付きたいとしている。
 現在参加を発表している企業以外にも、Pontaに関心を示す企業は多い。当初の3年で30社は間違いなく手の届く範囲で、同社の達成目標も60社に上方修正された。会員規模に目を移すと、ローソンの「ローソンパス」「マイローソンポイント」会員約1,000万人がPontaに移行するほか、ゲオのレンタル会員が約1,000万人、また昭和シェルも過去には1,200万人の現金会員を擁していたことから、向こう1年間で2,500万人を突破したいと意気込む。
 新規の入会申し込み方法は、加盟企業に配置された申込用紙をLM社に郵送するか、Webから申し込むかのいずれかとなる。

ポイントはリアルタイム処理 約1,300アイテムとも交換可能

 ポイントの付与率は、加盟企業が自由に設定できるように配慮されている。例えばローソンは100円で1ポイント、昭和シェルは1ℓ当たり1ポイントとなっている。ポイントはリアルタイムに付与されるため、ためてすぐに使うことも可能だ。ポイントの原資は原則的に加盟店が負担する。また、ポイントの有効期限は最終利用日から1年間となり、失効したポイントは各社の販促費に充てる考えだ。
 Pontaの特徴としては、家族でポイントを合算できる点が挙げられる。Webからの登録で家族全員のポイントを一元管理できる。この仕組みを構築するのは非常に難しく、簡単には真似ができない、とLM社では自信を見せる。加盟企業にとっては家族全員の購買傾向をつかめるため、マーケティングに有効活用できるなどのメリットがある。
 たまったポイントは1ポイント1円で加盟企業での買い物に利用できるほか、Pontaオリジナルグッズや加盟企業のおススメアイテムなど約1,300の商品と交換が可能だ。
 企業がPontaに参加するに当たっては、加盟料は必要ないが、LM社のサーバーに接続するために、POSのシステム改修が必要となる。Pontaカードの発行はLM社が行い、統一デザインカードの発行コストは同社が負担する。加盟企業が独自デザインのカードを発行する場合は、枚数に応じた手数料をLM社に支払うことになる。カード券面には15ケタのIDが記録されており、ポイント付与は磁気ストライプか裏面のバーコードで行う。

販促、加盟企業間の連携はLM社がコーディネート

 同社ではまず、全国展開している企業を中心にアライアンス・ネットワークの拡大を図る。加盟企業の選定については1業種1社に限定せず、全体のバランスや商圏範囲を見ながら考えていく方針だ。
 CRMに関しては、加盟企業のニーズを踏まえ、会員データやポイントデータにより会員の動きを分析し、潜在顧客の動向を把握することを想定している。また、当該企業に来店しない顧客を絞り込み、その理由をアンケートなどにより確認することも可能だ。
 アライアンス企業が増えれば、ポイントがよくたまりよく使われる店と、全く利用されない店が出てくることが懸念される。この問題については加盟企業側でコントロールするのは非常に難しいため、LM社が販促費の中でバランスを保てるようにコントロールしていく考えだ。
 各種プロモーションは、基本的にLM社がコーディネートする。まずはPontaの認知度を向上するために、加盟企業で配布するパンフレットやDMを用意した。また、加盟企業同士が連携したプロモーションを実施できるようにさまざまな支援も行っていく意向で、加盟企業のPOSから、ほかの加盟企業で利用できるクーポンを出力する仕組みを検討している。
 3月1日からは、スタートを記念して「チャンスどっさり! Pontaまつり!」を開催。ローソン、ゲオ、昭和シェル、千葉県内のケンタッキーフライドチキンでプレゼントがもらえるほか、5月31日までに上記のうち2社を回ると、合計900名に3,939ポイント(ザクザク)が当たる。さらに「Pontaを探せ! ゲーム」に参加すると、合計510名に1,000万ポイントを進呈するなど、認知度のアップと利用促進を図っている。
 まさに順風満帆にスタートを切ったPontaだが、重要なのはこれからだ。まずは先行するTポイントと差別化し、生活・地域に密着した存在として浸透を図らねばならない。いずれにせよ、Pontaの登場により共通ポイント市場の構図が大きく塗り替えられることは、間違いないと言えそうだ。

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オリジナルPontaカード(右下)に加え、加盟企業独自デザインのPontaカードもお目見え。カードの申し込みは店頭の入会申込書かWebサイトから


月刊『アイ・エム・プレス』2010年4月号の記事