(株)ファミリーマートでは2007年からTポイントアライアンスに参加し、「ファミマTカード」を発行。他の提携企業でクーポンを発券するなど、新規見込客の集客にもこれを積極的に活用している。このほか2009年10月からは、独自の「ロイヤルカスタマー優遇システム」もスタートした。
Tポイントアライアンスを活用し幅広い業種からさまざまな顧客を集客
国内外の店舗数1万5,709店舗と、コンビニエンスストア業界第2位の実績を誇るファミリーマート。同社では2007年4月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)(以下、CCC)が運営する日本最大の共通ポイントプログラム「Tポイント」への参加を表明。同年11月から「ファミマTカード」の発行を開始した。
Tポイントのメリットは、これまで自社カードで行っていた顧客囲い込みに加え、ほかのアライアンス加盟店から見込客を集客できる点だ。同社ではそれまで、「ユピカード」「ファミマカード」など自社限定のカードを発行してきたが、自社単独での展開ではサービスの広がりに限界を感じていた。これに対し、Tポイント・アライアンス加盟店は全国67社、3万609店舗。会員数は3,420万人と、日本総人口の26.8%に当たる(2010年1月現在)。TSUTAYAの会員を中心に若年層のホルダーが多く、同社の顧客との親和性が高い一方で、同社が比較的弱いと認識する高齢・シニア層が中心の加盟店もある。
「ファミマTカード」は18歳以上の場合、基本的にクレジットカード機能付きカードへの申し込みが必要となり、18歳未満はクレジット機能のないカードへの申し込みとなる。そのため、ほかのばら撒き型のポイントカードなどに比べ、入会者がファミリーマートの利用見込みが高い層に限定されるのが特徴だ。2010年1月現在、ファミマTカードの会員数は約274万人となっている。
ファミリーマート店舗では、100円で1ポイントのTポイントがたまり、1ポイント=1円として利用することができる。このほか、同カード会員限定のサービスも豊富で、例えば「今お得」ショーカードの付いた商品は、同カードの提示で一般割引価格よりもさらに安く購入できる。また、毎週火曜日と土曜日には、特定の対象商品を購入すると100円につき2ポイントが加算される。
ロイヤルカスタマー優遇システムを導入 クーポン発券やポイント付与で差別化を図る
同社では2009年10月に、「ロイヤルカスタマー優遇システム」をスタートした。同システムはCCCのリコメンドシステムとファミリーマートのPOSレジを連動させ、会員の利用状況に応じたポイントを付与、クーポンを発券するというもの。
同社ではファミリーマートでの購入頻度(F)と来店金額(M)から、会員を「お得意様」「ミドル」「ライト」「休眠」などと定義し、各会員グループに最適なサービス展開を目指している。昨年末には同会員のうち9月度の購入金額と来店回数が一定以上の会員を対象に、男性には弁当の割引券を、女性には飲料の割引券をPOSレジで発券した。結果、同店のヘビーユーザーである「お得意様」の中でも、クーポン発券者の購入率が高かったという。
また、同カード会員が期間中にWebでエントリーを行い、期間中に50ポイントをためると、ポイントが2倍になるキャンペーンを実施。結果、期間中の参加者はファミリーマートでの購買頻度がアップした。今後は単発的なDM発送など、普段Webを利用しない会員でも気軽に参加できる形式も導入していく。
今後はロイヤルカスタマー優遇システムの精度を高め、クーポン発券などの販促面での活用にとどまらず、商品開発などを含むマーケティング活動全体に活用していく構えである。
TSUTAYAで来店実績のない顧客に向けファミリーマートのクーポンを発券
Tポイントアライアンスを活用した販促施策では、同店への来店実績のない見込客を店舗へ集客する取り組みを行っている。例えば、TSUTAYAの店頭では、休眠顧客やまだファミリーマートに来店したことがない見込客に対し、POSレジでファミリーマートの割引クーポンなどを発券している。クーポン発券はCCCのマスターで制御でき、個々の会員のその他の提携店における購買実績に応じ、割引金額や割引率などの細かい設定も可能だ。通常、チラシを配布した場合、来店率が3%あれば効果があると言われているが、TSUTAYAで配布したクーポンのファミリーマートでの利用率はこれを大きく上回っている。また、CCCのリコメンドシステムで会員をセグメントできるため、発券対象を絞ることでコスト削減にもつながっている。
このほかTSUTAYAとは、性・年代によりターゲットを絞った共同での取り組みも実施。例えば、ファミリーマートのオリジナル商品である「SweeTs+」とTSUTAYAの女性客をターゲットにしたDVD商品を両方購入すれば、抽選で賞品が当たるキャンペーンを行った。ガソリンスタンドのENEOSとの取り組みでは、ファミリーマートのPB商品のミネラルウォーターをリニューアルした際、ENEOSにて無料引換券を裏面に印刷したレシートを配布してもらう一方、同社ではENEOSのキャンペーンを店内放送などで告知した。最近では同社が弱いとしている高齢・シニア層に対して、(株)アルペン運営のゴルフ5にチラシを設置してもらうなどの取り組みを行った。
ファミマTカード(上)とポイントプレゼント対象のお弁当チラシ(下)
ポイント原資の負担額は想定通りCRMの精度アップを目指す
なお、Tポイントアライアンスに参加する場合、Tポイントの原資はポイント付与企業が負担する仕組みになる。そのため、同社でもポイントの付与ごとにCCCへポイントの原資を支払っている。Tポイントの付与コストなどの原資負担が重荷になってくる懸念もあるが、ファミリーマートでは、現時点ではほぼシミュレーション通りのポイント付与・交換になっているとしている。
同社では「休眠や離反は常に発生するため、例えどんな策を打ったとしても、極端に稼働率が変わることはない」と考えている。現状、システム導入前と比較して、会員の稼働率にそれほど大きな変化はない。ただ、会員の維持・育成のために手を打たなければ、顧客離れが進行してしまう。そういった意味ではTポイントアライアンスに参加することで、これまで単独ではできなかった施策を打つことができるため、一定の成果を感じている。
いずれにせよ、同社のCRM施策はまだ始まったばかりである。徐々にではあるが顧客データも整備され、施策の精度も高まってきている。今後もロイヤルカスタマー優遇システムを活用した会員の維持・育成と並行して、Tポイントアライアンスを利用した見込客の集客を積極的に展開し、ビジネスの活性化に取り組んでいきたいとしている。