ポイントカード不要のサービスで地域をベースとしたポイントプログラムのニュースタンダードを目指す

(株)ぱど

タウン情報誌『ぱど』で知られる(株)ぱど。同社は2009年9月、横浜市でポイントプログラム「ぱどポイントサービス」の試験運用を開始した。その最大の特徴はカード発行が不要なこと。「おサイフケータイ」などを媒体とすることで、中小規模事業者が比較的容易かつ低コストでポイントプログラムを展開することを可能としている。

カード不要のポイントプログラム

 1987年10月、神奈川県横浜市で無料のタウン情報誌『ぱど』を創刊。以後、子会社やフランチャイズ企業による発行を含め、全国各地で『ぱど』をはじめとするさまざまな無料情報誌を立ち上げ、わが国におけるフリーペーパー事業の礎を築いた(株)ぱど。同社は2009年9月、創業の地である横浜市の中心区域(横浜駅、みなとみらい、関内、元町周辺)で、独自のポイントプログラム「ぱどポイントサービス」の試験運用をスタートした。
 このサービスは、単独でポイントプログラムを運用することが難しい中小規模のサービス事業者や小売店に、比較的容易に、しかもリーズナブルな費用でポイントプログラムを提供しようとする試みであり、かつ地域内の複数の加盟店が共同でプログラムを運用することによる、地域振興を狙った取り組みでもある。
 同社は“無料情報誌の出版社”としてのイメージが強いが、実は従来から情報誌以外でも、飲食店や美容室、エステティック・サロンをはじめとする各地域のサービス事業者や小売店の販売促進支援に積極的に取り組んでおり、「ぱどナビ」「ぱどナビモバイル」「ぐるめぱど」などのWebサイトでの店舗情報の掲載と、各店舗の会員を対象にしたケータイメール配信をセットにした「ばど商売名人」サービスの提供などを手掛けてきた。「ぱどポイントサービス」はその流れをくむものであり、特にリピーターの維持・拡大に重点を置いたサービスと言える。
 「ぱどポイントサービス」最大の特徴は、リアル店舗におけるポイントプログラムであるにもかかわらず、新たなポイントカードの発行が不要なことだ。媒体となるのは、今や多くの生活者が保有・携帯している「おサイフケータイ」や「Suica」「PASMO」などの非接触型IC カード。従って、生活者にとっては「ポイントカードでサイフの中がいっぱい」といった事態を避けることができる。しかも、ポイント付与時には特別な登録を必要とせずに「おサイフケータイ」や非接触型IC カードをリーダーにかざすだけでよく、ポイント利用時に初めて「生年月日」「性別」「自宅郵便番号」「職業」「勤務地」といった属性情報を登録する仕組みとすることで、参加へのハードルを下げている。
 なお、ポイント付与率は通常、利用金額100円につき1ポイントで、ためたポイントは1ポイント=1円として、加盟店でいつでも使うことができる仕組みだ。
 「おサイフケータイ」や非接触型IC カードをポイントプログラムの媒体とするシステムは、タイヘイコンピュータ(株)が開発したものであり、同社とぱどは2009年12月、「ぱどポイントサービス」の円滑な運営を目的に、合弁で新会社「(株)ぱどポイント」を設立している。

利用者獲得に苦戦するも積極的な加盟店では着実な効果も

 2009年9月からスタートした、横浜市における「ぱどポイントサービス」の試験運用は当初、加盟店55店舗体制でスタート。その後、徐々に加盟店を拡大し、2010年3月には170店舗が加盟予定。業種については飲食店をはじめ、美容室、リラクゼーション施設、カルチャースクール、各種小売業など多岐にわたっている状況だ。
 サービススタート後は、横浜市内で配布している自社媒体などで告知を実施。QRコードなどを通じて専用サイトにアクセスして利用登録をすると500ポイントをプレゼントするキャンペーンなどを展開、PRに努めたが、特にスタート当初は、利用者獲得が必ずしも順調に進まなかった。同社では、その主な原因を、「加盟店にサービスの意義やメリットを十分に伝え切れなかったために加盟店スタッフの理解が浅く、店頭でのPRが不十分であった」と分析。その後、例えば同社のスタッフが、実際に加盟店のレジに立って利用促進を行ったり、アイドルタイムに訪問して店舗スタッフへのレクチャーを行ったりするなどの施策を展開した結果、利用者獲得ペースは徐々に上がりつつある。
 一方、当初から積極的な取り組みを行った加盟店では、効果が着実に現れ始めている。サービススタート以前のデータがないため明確な比較は難しいものの、ある居酒屋では「次月までの再来店率50%以上」といった成果を上げており、十分な導入効果を得られたと評価されている。
 なお同社では、この横浜での試験運用で得たノウハウを基に、この3月からサービス運用地域を拡大。さらに、前述の「ばど商売名人」との連携を強化し、「ばど商売名人プラス」として提供を開始することとした。

加盟店にコスト以上のメリットを提供

 サービス提供地域は、横浜市について市内全域に拡大するとともに、埼玉県中央地域(さいたま市など)、および大阪府泉州地域(岸和田市、和泉市など)で新たにサービス提供を開始。基本的には各地域ごとのサービスとして展開するが、ポイントの付与・利用は地域をまたがって行うことができる。
 「ばど商売名人プラス」の提供に関しては、特に相乗効果が高いと考えられるポイント保有者に対するケータイメール配信に注力。例えば、来店客に「サンキューメール」を送信することによるファン化促進や、割引をオファーするメールを送信することによる、アイドルタイムの集客強化など。あるいは「ぱどポイントサービス」によって得られた顧客情報に基づく効果的なメール配信を提案することで、加盟店の業績向上につなげていきたい考えだ。
 そのほか、加盟店に対するコンサルティングについても、これまで以上に強化していく。例えば、ほかの加盟店の成功事例やeメール配信のコツ、テンプレートなどを提供する加盟店専用サイトの運営などに加え、同社のスタッフが加盟店を訪問し、きめ細かくフォロー。さらに各拠点にスタッフを配置して、電話によるサポートも強化していく。
 なお、「ばど商売名人プラス」は、初期費用3万5,000円、月額料金2万5,000円(会員1,000人までメール配信無制限)、さらにポイント付与1ポイントにつきユーザー還元用として1円、運営費として1円、合計2円で加盟店に提供するサービスだが、同社としては、今後もシステムの充実化を図るとともに、徹底したコンサルティングやサポートを行うことで、加盟店の利用メリットを高めていく意向である。
 同社の「ぱどポイントサービス」に対する意気込みは非常に高く、その取り組みは『ぱど』の創刊に比肩する“第2の創業”と位置付けられているほど。従って、事業展開の速度も速く、2010年秋までに全国の『ぱど』発行地域でのサービス提供を目指すべく、グループを挙げた準備が行われている。また、店頭オペレーションのさらなる簡易化や、「ポイント○倍セール」のように期間限定でポイント付与率を変更する機能の追加など、加盟店のニーズを満たすシステム拡充も随時進めていく方針である。これらを通じて、地域をベースとした全国規模のポイントプログラムにおけるニュースタンダードとしての地位を確立していく考えである。

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3月からサービス地域を拡大するぱどポイント。おサイフケータイならその場でポイントをためて会員登録も


月刊『アイ・エム・プレス』2010年4月号の記事