こだわりの商材と積極的なメルマガの活用で不況下でも過去最高益を実現

セレクチュアー(株)・アンジェweb shop

セレクチュアー(株)が運営する「アンジェweb shop」は、国内最大のインターネット・ショッピング・モールである楽天市場インテリア部門において、9年連続Shop of the yearに選ばれている。顧客層を強く意識した商品群と、ネット専業でありながら細やかな気配りに満ちた応対がリピーターを呼び、今年度は過去最高益を記録する見通しだ。

テスト・マーケティングの成功によりネット通販に参入を果たす

 国内最大手のインターネット・ショッピング・モールである楽天市場インテリア部門において、9年連続Shop of the yearに輝く「アンジェweb shop」を運営するセレクチュアー(株)。同社は、Yahoo! ショッピングや自社サイトでもネット・ショッピングを展開、2008年度の売上高は約17億8,000万円に達している。サイトごとの売上高構成比では、楽天が90%、Yahoo! が9%、自社サイトが1%程度とモールが大勢を占めているが、ここ1年で自社サイトが2倍に伸びており、伸び代を感じているとのことだ。
 同社のルーツは、1930年に京都市西陣で創業した(株)ふたば書房であり、当初は書籍・文房具を扱っていた。1993年には、新規事業としてインテリア・ライフスタイルショップのリアル店舗「アンジェ」をオープン。以降、関西圏を中心にリアル店舗のみでビジネスを展開してきたが、ITバブル絶頂期の直前に当たる2000年、インターネット人口の飛躍的な伸びを受けて、ネット・ショッピングの試行を開始した。
 具体的には、同年の3月と4月、Yahoo! オークションにふたば書房で取り扱っていた文房具とアンジェで取り扱っていた雑貨を出品。あくまでテスト的な出品だったにもかかわらず結果は良好で、それぞれ50万円ほどの売り上げを達成した。これを受けて、同社ではインターネットが新たな販売チャネルになり得るとの確信を持ち、EC事業部を立ち上げ。アンジェブランドを扱うサイトを同年7月には楽天市場に、2002年12月にはYahoo! ショッピングに開設した。その後2005年には、このEC事業部のみを切り離すかたちで独立させ、ネット通販を専業とするセレクチュアーを設立、2008年10月には自社サイトによる通販もスタートさせている。

圧倒的多数を占める女性顧客に“きままな暮らし”が実感できる商品を

 同社ではインテリア雑貨を中心に、家具、洋服、バッグ、アクセサリー、キッチン雑貨、フード、キッズ・ベビー用品など、約1万8,000アイテムを取り扱っており、そのうち15%ほどがオリジナル商品となっている。また、複数のペルソナをつくり顧客層を絞り過ぎないことに注意するなど、ネット通販専業らしい間口を広げた営業戦略を展開している。
 顧客の男女比は15:85で女性が多くを占めており、コアな年齢層は30代だが、25~50歳ぐらいの女性に広く支持されている。また、商品のコンセプトは“きままな暮らし”。手の届く範囲の価格でありながら、それを目にするだけで毎日が楽しくなるような商品の提供を心掛けているとのことだ。そのため、商品の価格帯は80円から8万円までと幅広いものの、1品当たりの平均価格は約6,500円と低めに抑えている。
 同社はネット通販専業ということもあり、注文はすべてサイト経由で受け付けている。それぞれのサイトから入る受注情報は、サポートセンターで一元管理しており、在庫の有無などから商品お届け予定日を確定した後、物流センターへ出荷指示を出す。決済方法には、クレジットカード、代金引換、代金前払いの郵便振替、銀行振込、セブン-イレブン決済があり、このうち、クレジットカードと代金引換が大半を占めている。
 また、返品・交換についてはケース・バイ・ケースで対応しており、お客さま都合による返品・交換は、サポートセンターまでの片道の送料を負担していただいているとのこと。返品・交換の理由は、現物に触れられない通販にはつきものの、色・形が思っていたモノと違うというものがほとんどである。全体の取引に対する返品・交換率は、件数ベース5%程度で推移しており、この数年あまり変化は見られない。

新規顧客獲得と既存顧客のリピート促進にメルマガを積極活用

 新規顧客獲得のために注力しているのが、メルマガである。具体的には、同社の主力サイトである楽天市場のユーザー対象の、プレゼント企画「楽天スピードくじ」を配信、アプローチ可能なeメールアドレスの取得に努めている。現在のところ、1回の配信で8万~10万件の有効なeメールアドレスが得られているとのことだ。
 メルマガは、既存顧客からのリピート促進策としても積極的に活用している。中でも高レスポンスを誇っているのは、優良顧客向けに送信している“秘密のメール”。これには大きく分けて2種類あり、ひとつは希少性の高い限定商品を案内するもので、もうひとつは普段は絶対に割引しない商品を特価で提供するものである。
 この“秘密のメール”は、RFM分析に基づいて送信されている。案内する商品ごとに提供できる数量が異なるため、抽出条件もその都度変わるが、最上位と位置付けている約500人と、その下のクラス2,000人程度に送られることが多いようだ。
 現在、同社の顧客数は約60万人に達しており、客単価は8,000円ほどとなっている。また、昨年度の売上高は約17億8,000万円だが、今年度はこれを若干下回るものと見られる。ただし、営業利益は過去最高を記録する見込みであり、長引く不況下でも業績を伸ばし続けている“元気企業”と言えるだろう。同社ではこの要因として、商品ごとの想定売上額に応じてサイト製作時間を変えるなど、業務のシステム化を推進してきたこと。また、スタッフのスキルアップが実現したこと。さらに、マスメディアへの露出増により認知度が向上したことの3点を挙げている。
 同社が課題として上げているのが、クレームの撤廃である。この1年間では、前年比80%のクレーム削減という成果を上げているが、これは問題の優先順位付けを行って対処したこと、クレーム担当者の中に目覚ましい活躍を見せたスタッフが現れたことが大きな要因と見ている。同社ではこのようなスタッフを高く評価する一方、“人”に依存し過ぎるのは危険として、さらなる業務のシステム化を進め、今後も「クレームゼロ」を目指して体制を整備していきたいとしている。
 また、ショッピング・モールの集客には限界が見え始めたという認識の下、今後は自社サイトの強化を推進していく意向である。具体的には、新しい「買い物カゴ」のシステム導入を計画しているのだ。現在のところ、いったん買い物カゴに入れても購入に至らないケースが50%ほどあるという。これが単なる心変わりによるものであれば手の施しようがないが、間違ってインターネット・ブラウザを切ってしまい再来店できないなどの理由であれば、新たな買い物カゴを提供することで、購入率が大きく上がると予想できる。同社では、この買い物カゴの変更を含む大規模なリニューアルを今年6月ごろには行い、自社サイトによる売上高を大きく増加させていくとしている。

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月刊『アイ・エム・プレス』2010年3月号の記事