Twitterを積極的に活用し動画サイトとのクロスメディア・プロモーションを実現

ソフトバンクモバイル(株)

国内で携帯電話事業を展開するソフトバンクモバイル(株)では、2009年11月に開催された新機種発表会の実況中継にTwitterを導入。自社内外のサイトでの動画配信とTwitterサイトでのテキスト配信を組み合わせたクロスメディア・プロモーションを展開し、当日は多数のフォロワーを獲得した。

新機種発表会における新たなコミュニケーション・ツールとしてTwitterを導入

 携帯電話事業会社としてのスタートは遅かったが、先進性のある機種ラインナップとサービス提供が好評を博しているソフトバンクモバイル(株)。近年においては、契約純増数が26カ月連続トップを記録するなど、目覚ましい躍進を遂げている同社だが、その要因のひとつは豊富な機種ラインナップにある。2009年11月10日に開催した冬春モデルの新機種発表会においても、22におよぶ新機種を発表した。
 同社では年3回程度の新機種発表会を開催。過去には、自社サイトからの動画配信に加え、ニコニコ動画やYouTubeといった外部の動画投稿・共有サイトを使って、その模様を生中継してきた。しかし、平日の日中に開催される発表会をリアルタイムで閲覧できないユーザーからは、何とか別の手段で受信できないかとの要望が寄せられており、同社ではかねてから新たなチャネルを模索していた。
 そんな中、米国での認知度が高く将来性が見込まれ、また、同社の主力商品であるiPhoneとの相性も良いTwitterに注目。テキストにより新機種発表会の模様を中継すると同時に動画サイトのURLを表示する、クロスメディア・プロモーションの開始を決定した。
 この決定は2009年の夏前のことであったが、当時はTwitter自体が日本ではまだまだ米国ほどには普及しておらず、同社においてもこれに精通した者はいなかった。そのため、会社名でのアカウント取得に先駆けて担当者の個人名でのアカウントを取得、“習うより慣れろ”でその使い勝手を体験するとともに、その文化に親しんでいった。

複数のアカウントで情報を補完しつつ不慣れなフォロワーには利用方法の啓もうも

 こうしたプロセスを経て、2009年の冬春モデルの新機種発表会でTwitterを導入することを決定。同社マーケティング・コミュニケーション本部Web企画推進室が中心となり、準備を進めていった。
 Twitterは、場所や時間に縛られずにツイート(つぶやき)を書き込み、双方向のコミュニケーションを取ることができるものだが、1回のツイートが140文字以内に制限されているため、正確な情報提供よりもゆるいつながりを楽しむことに向いているツールであり、また、そこにこそ面白さが潜んでいる。
 同社担当者は、自らもTwitterに親しんでいくうちにこのことに確信を持ち、新機種発表会では複数の公式アカウントを使い分け、それぞれに役割とキャラクターを持たせることとした。企業として最も犯してはならない過ちは、誤った情報を発信することなので、①正確無比な情報を発信するキャラクターは絶対不可欠である。②1回140文字という制限があるので、①の情報を補完するキャラクターも必要である。しかし、そればかりではTwitterの面白さが演出できないので、③親しみと楽しみを感じてもらうキャラクターも必要である。そこで同社では、新機種発表会の3週間前に、①は企業の顔として「SoftBank」、②はアシスタントの「Norika_a」、③は同社の人気キャラクターである“白戸家のお父さん”の「WhiteFamily0103」と、3種類のアカウントを取得するとともに、自社WebサイトではTwitterによる生中継がある旨を告知、準備を進めていった。
 また、日本ではまだまだTwitterに慣れておらず、今回の新機種発表会が初めての利用というフォロワーも多数に上るのではないかと予測した同社では、フォロワーに対する啓もう活動も展開した。つまり、ただ単にツイートを見て情報を得るだけなら必要ではないが、意見などを書き込みたい場合には「アカウントの取得」と「フォロー」が必要であること。さらに、3つのキャラクターの掛け合いを楽しみたいときには「リストの作成」を行えば、公式アカウントのツイートがほかのツイートに埋もれてしまわないことを周知したのである。

Twitterの“炎上”対策を用意して新機種発表会に臨む

 新機種発表会までの具体的な準備は、さまざまな状況に対処できるスクリプト作りから始まった。同社のイベントにおいては何らかの“サプライズ”が仕掛けてあることが多く、また、それを楽しみにしている同社ユーザーも数多い。しかし、今回初めて導入したTwitterは、さまざまな通信機器・環境から、短い文章で書き込むという特性があるため、時として信じがたいスピードで話題が展開し、アッという間に“炎上”などということも起こり得る。リアルタイムに進行する発表会場で、突発的な事態に対処することは難しいため、あらゆる事態を想定したスクリプトの作成にはかなり骨が折れたとのことである。
 当日は、発表内容をTwitterに書き込む担当者を含めて7人体制で臨んだが、懸念していたような事態は起こらず、2時間弱の発表会は無事終了した。今回発表会開催時のフォロワー数は、「SoftBank」が約5,800人。「Norika_a」は約1,200人。「WhiteFamily0103」は約5,500人であった。
 また、同社ではフォロワーについての正確な情報はつかめないとしながらも、そのツイート内容から、例年、新機種発表会に注目している“リピーター”が多かったのではないかと推測している。このことから、動画サイト以外からの情報提供を求めていた同社ユーザーに対して、一定の効果はあったと評価している。
 さらに、Twitter導入の効果測定については、初回ということもあり難しい面があるが、今回発表会でのキーワードとなる“Wi-Fi(ワイファイ)”の、さまざまなソーシャルメディアへの出現率の高さなどから、その有効性はある程度確認できたとしている。
 なお同社では、フォロワーの望まない一方的な宣伝は極力排除したいという考えから、発表会以後はほとんど書き込みを行っていない。例外的には、新機種発売日の店頭におけるお客さまの反応や、新たにスタートするテレビCMの案内に使用した程度である。同社では、このTwitterに対する基本姿勢を変えるかどうかは未定としながらも、より有効な活用方法については模索を続けることにしている。
 「アジアNo.1インターネットカンパニー」を目指す同社グループにおいて、Twitterを活用しないという選択肢は存在せず、これからも折を見てさまざまな場面での導入を目指していく意向である。

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Twitterでも生中継された新機種発表会のもよう

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Twitterでも話題となった“Wi-Fi”端末各種


月刊『アイ・エム・プレス』2010年2月号の記事