ケータイで保険の見積り・契約から事故・故障発生連絡まで対応

チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド日本支店

チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド日本支店では、ダイレクト事業本部が取り扱う「スーパー自動車保険」において、見積り・契約から保険料の支払い、事故・故障発生の連絡までをすべてケータイ上で完結できる体制を整えている。今後もケータイがコミュニケーションの主流となる時代に備えて、取り組みを継続していく意向だ。

QRコードとGPS機能の活用で事故・故障発生連絡受付を円滑化

 スイスに本拠を置くチューリッヒ・ファイナンシャル・サービシズグループの一員として1986年に設立され、自動車保険、バイク保険、傷害保険のダイレクト販売を中心とする業務を展開するチューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド日本支店。同社ではダイレクト事業本部が取り扱うリスク細分型自動車保険「スーパー自動車保険」において、見積り・契約から保険料の支払い、事故・故障発生の連絡までをすべてケータイ上で完結できる体制を整えている。
 同社が自動車保険ビジネスにおけるケータイの活用への取り組みを本格化したのは、日本支店オープンの20周年に当たる2006年。最初に取り組んだのは、QRコードとGPS機能を活用した事故・故障発生連絡の円滑化であった。
 自動車保険が実際に利用されるのは、事故・故障発生などのアクシデントが発生した時だ。その場合、保険証券などに記載されている連絡先に電話をかけて、必要な情報を伝えることが求められるのだが、そもそも保険証券はダッシュボードの奥深くにしまわれていることが多く、アクシデントで動転しているドライバーにとっては、電話番号を探し出して電話をかけるという作業は簡単なことではない。
 さらに、事故処理や修理が必要な場合には、事故・故障発生地点も伝えなければならないが、旅行時などでは土地勘がなく、“自らが今どこにいるか”を正確に把握できないケースも少なくない。
 このような状況に対応して同社が開始したのが、QRコードとケータイのGPS機能を活用した事故・故障発生連絡の受付システムである。
 このシステムでは、まず自動車保険の契約締結に伴い送付する保険証券にQRコードが埋め込まれた携帯用の「CAREプラスカード」とZステッカーを同封。Zステッカーについては車両に張ってもらう。そして、事故・故障発生時には、このQRコードをケータイのバーコードリーダーで読み取ることで、同社の専用サイトに接続。そこで「GPS緊急通報」ボタンを選択して、専用アプリをダウンロード・起動、さらに「通報内容」から「事故」「故障」「パンク」「バッテリー異常」「落輪」「ガス欠」「その他」を選択すると、ケータイのGPS機能により、位置情報が同社に連絡される。その後、「GPS緊急通報」ボタンとは別に用意されている「電話する」「メールする」ボタンを通じて、同社コールセンターの「緊急ケアデスク」に連絡することで、円滑な事故・故障発生連絡ができる仕組みだ(GPS機能がないケータイを利用した場合は「GPS緊急通報」ボタンは表示されない)。
 ここで特筆すべきは、GPS機能によって正確に特定された事故・故障発生地点の情報が、同社が各エリアで提携しているロードサービス事業者に伝達されることにより、連絡からロードサービスの到着までの時間を短縮化していることだ。さらに、ケータイの写メール機能を活用して、事故状況の写真も送付できるので、必要な機材を持参することも可能となり、より迅速な対応を行うことができる。
 営業担当者が存在しない直販型の自動車保険に対しては、事故・故障発生時の対応に不安を持つ人も少なくないようだが、同社ではこのような取り組みにより高い顧客満足度を実現しており、2007年7月にJ.D.パワーアジアパシフィックの「自動車保険事故対応満足度調査」で1位を獲得するなど、客観的にも高い評価を獲得している。

ケータイサイトで保険契約を完結できる体制を整備

 このように、事故・故障発生連絡の円滑化から始まった同社自動車保険ビジネスにおけるケータイ活用であるが、現在ではその分野は、見積りから契約、継続手続き、保険料の支払いなどにも広がっている。
 そのきっかけとなったのは、同社のケータイサイトがau〔KDDI(株)〕の公式サイトとなったことだ(現在ではNTTドコモ、ソフトバンクでも公式サイトとなっている)。同社がQRコードとGPS機能を活用した事故・故障発生連絡システムを構築後、auとの協力関係も深まり現在提供中のサービスを開発するに至ったが、スタートしてみれば予想を上回るアクセスがあった。そこで2008年12月、2002年から行っていたケータイによる自動車保険の継続手続きに加えて、日本で初めて、見積り・契約、対象車両入れ替えの受け付けなどを行えるサイトに進化させたのだ。その後、2009年4月にはauと(株)三菱東京UFJ銀行の出資によるモバイル銀行である(株)じぶん銀行との提携により、auユーザーに限られるものの、保険料の決済もケータイ上で行えるようになっている。
 サイトへの誘導施策としては、SEOやリスティング広告のほか、新聞・雑誌広告にQRコードを掲載するなどの施策も行っている。その結果、ケータイサイト経由の契約は、ケータイサイトに対する投資金額に十分見合うものとなっており、今後もサイトの充実化への取り組みを継続していく意向だ。

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突発的な事故のときもケータイでZステッカーのQRコードを読み取るだけ(上)。見積りや契約もケータイだけで完結(下)

ケータイがコミュニケーションの主流となる時代に備えて取り組みを継続

 同社では、契約継続の案内なども一部ケータイメールで行っているが、ケータイのeメールアドレスはPCのアドレスと比較しても変更される傾向が強いことから、送信不能となり、結局は紙DMによる連絡を行わざるを得ないというケースも少なくないとのこと。しかし同社では、エコロジーの観点からペーパーレスに取り組んでおり、最新のアドレスを常時把握する方法の検討なども行っていく意向だ。
 そのほか、ケータイの活用における恒常的な課題としては、機種依存問題を意識している。自動車保険という商品の性格上、特に事故・故障発生時対応においては機種によって対応が制限されることは許されないという認識から、各キャリアから随時発売される新機種すべてについて動作確認作業を行い、必要があればサイトの改良などの措置を講じている。
 同社では、特に若年層における固定電話契約の減少や“PC離れ”などの現状から、将来的にはユーザーとのコミュニケーションにおいてケータイが占める割合がさらに高まるものと予想している。その時に備え、同社では今後も試行錯誤を継続することで、業界内でのアドバンテージを維持・拡大していく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年1月号の記事