獲得ポイントを無料プレーとして還元する「PGMヤーテージプログラム」を運営

パシフィックゴルフマネージメント(株)

日本のゴルフ場の5%以上に当たる131ゴルフ場を運営するパシフィックゴルフマネージメント(株)(PGM)。同社では、2008年8月から航空会社のマイレージプログラムを模したポイントプログラム「PGMヤーテージプログラム」を全国的にスタート。2009年1月には「地域共通友の会制度」も導入し、リピーターの獲得につなげている。

「ゴルフのある人生を、一人でも多くの人々へ。」

 「Love Life. Love Golf. ゴルフは、もっと、素晴らしい」というブランドプロミスの下、日本全国でゴルフ場運営事業を展開するパシフィックゴルフマネージメント(株)(PGM)が事業を開始したのは2001年3月のことである。
 当時の日本では、バブル経済の崩壊の影響などから、ゴルフ場の経営破たんが相次いでいた。元々、いわゆる“接待ゴルフ”など、法人利用を収益の柱に据えていた多くのゴルフ場では、景気後退に伴う利用減少に対して有効な施策を講じることができなかったのだ。そして、特にこの時期に会員募集時に集めた高額な預託金の償還時期が訪れたゴルフ場において、償還のための原資がないために経営破たんに追い込まれるケースが続出したのである。
 PGMでは、このようなかたちで経営破たんしたゴルフ場を買収・取得することから、ゴルフ場運営事業をスタートした。事業開始から3年弱の2003年12月には全国40ゴルフ場体制、2005年12月には同95ゴルフ場体制、2007年12月には同118ゴルフ場体制を確立。2009年6月現在では、全国で131ゴルフ場、18ホール換算で157コースの運営を行っている(運営受託、リース運営コースを含む)。これは、約2,400と言われる日本のゴルフ場の5%以上に当たる数字だ。
 PGMのゴルフ場運営の特徴は、「ゴルフのある人生を、一人でも多くの人々へ。」というビジョンの下、多くの人がゴルフに親しめる環境を提供することに注力していることだ。例えば、海外では一般的でありながら、日本では「芝を傷める」ということで禁忌とされていたフェアウェイへの乗用カートの乗り入れを、最先端の土壌学、芝草学に基づくコース管理に基づき積極的に導入。夏場でも快適にプレーができる環境を整え、暑さを避けてプレーを控えていた高齢者などからも好評を博している。また、リーズナブルな料金で、早朝からスタートする「アーリーバード」、午後からスタートする「トワイライト(薄暮)」といったプレー形態も導入。さらに、9ホールのプレー後に昼食を挟む日本独特のプレー形態と異なり、18ホールのプレーを続けて行う「スループレー」なども取り入れ、プレーヤーによる選択の幅を広げている。
 PGMが登場した当時、同社が外資であることから、「安く買い叩いて、高く売る」ことを目的とする、いわゆる「ハゲタカファンド」と見る向きも多く、買収・取得されたゴルフ場の従業員やメンバー会員が抵抗感・嫌悪感を示すというケースも少なくなかった。しかし、同社では、買収・取得したゴルフ場に積極的な投資を行い、ゴルフコースやクラブハウスの改修などを実施。さらに、前述のようなさまざまな取り組みを行うことで、ゴルフ場運営を再生・活性化させたことにより、現在では「PGMグループのゴルフ場になってよかった」という声が、数多く寄せられているとのことだ。
 なお、同社は現在、2004年12月に設立された持株会社、パシフィックゴルフグループインターナショナルホールディングス(株)(PGGIH)の下、不動産管理を行うパシフィックゴルフプロパティーズ(株)などとともに、グループ運営されている。ちなみにPGGIHは、設立わずか1年後の2005年12月には東証一部に直接上場しており、同社の事業が社会に受け入れられていることのひとつの証左となっている。

航空会社のマイレージプログラムを模した“ヤーテージプログラム”を運営

 同社にとって、運営するゴルフ場の稼動率アップは大きなテーマだ。そのための施策としては、コースの改修やメンテナンス、従業員教育の徹底などによって各コースの魅力を高めることが基本であるが、ゴルフ場整備機械の共有など、数多くのゴルフ場を保有・運営することのスケールメリットを活用した施策も展開している。その試みのひとつが2008年8月より全国的に本格スタートした「PGMヤーテージプログラム」である。
 PGMヤーテージプログラムの基本的なシステムは、多くの航空会社が運営するマイレージプログラムに類似したもの。“マイレージ”を“ヤーテージ”としているのは、距離をヤード(Y)で測定するゴルフという競技の特徴にちなんだものである。会員登録で250Y、eメールアドレス登録で250Y、プレーするごとに平日では500Y、土日・祝日では250Yのヤーテージが付与され、最低4,200Yから「無料プレー」として還元される。無料プレーに必要なヤーテージ数は、ゴルフ場のZoneⅠ~Ⅳまでの4つのグレード別に、平日/土・日・祝日、オンシーズン/オフシーズンごとに設定されており、会員は貯まったポイントによって同グループの数多くのゴルフ場の中から、好みのコースを選んで無料プレーを楽しむことができる。なお、入会金、年会費などは一切無料であり、獲得したヤーテージは獲得翌年の12月まで最大2年間有効。「PGMヤーテージプログラム」会員には「PGMカード」が付与され、通常では署名や住所・連絡先などの記入が必要なフロントでのチェックインを、「PGMカード」を提示するだけでサインレスで行えるという特典もある。
 eメールアドレスを登録した会員に対しては、eメールにより特別料金の優待プレー情報や、期間限定・ゴルフ場限定のキャンペーン情報、会員限定のプレゼントキャンペーン情報などを配信している。また、Web上にはプログラム専用ページを用意し、個々の会員が保有ヤーテージ残高などを照会できる仕組みも提供している。
 2009年6月現在、会員数はグループゴルフ場のメンバー会員などを中心に50万人を突破、今後は、さらなる新規会員の獲得に注力していく意向である。

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プロショップの再生事例(上)/「PGMカード」メンバー用(左下)ビジター用(右下)

ゴルフ人口を拡大する試みも展開

 同社のリピーター獲得施策のもうひとつの柱が、2009年1月から本格導入を開始した「地域共通友の会制度」だ。この制度は、全国各地に展開するグループゴルフ場を地域ごとに区分けして組織し、それぞれの地域性を重視した共通のサービスを提供する有料の年次会員制度。プレー料金の割引や友の会親睦コンペへの参加資格など多数のメリットが受けられる。年会費は数千円から数万円に設定されており、多額の費用が必要となるゴルフ会員権購入と比較して気軽に利用できることから、好評を博している。
 同社では、このようなリピーター獲得施策のほか、ゴルフ人口自体を拡大する試みにも積極的だ。例えば、最近増加傾向にあるものの、全体としてはまだまだ少ない女性ゴルファーを拡大することを目的に、女性中心のプロジェクトチームにより、女性が利用しやすい施設の整備や「レディスデー」など女性向けサービスの充実を図るほか、2009年7月には女性向けWebサイト「PGM Angel Golf」を立ち上げ、同社が推奨する全国44カ所のPGMレディス推奨コースの魅力を伝える一方で、女性に適したコースの情報や、コース周辺の店舗・施設などのエリア情報の提供も開始した。また、CSRの観点も含め、子どもにゴルフと触れ合い、楽しんでもらうためのジュニア向けプログラム「PGMジュニアズ」の運営や、視覚障害者にゴルフを楽しんでもらう大会の開催なども実施。さらに2007年からは、日本女子プロゴルフツアートーナメント「ニチレイPGMレディス」の共催も行い、女子プロゴルフ人気の上昇にも貢献している。同社では、今後もこのような試みを通じて、グループゴルフ場運営の活性化、ひいては日本のゴルフ市場の活性化を図っていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年8月号の記事