ジョギングをはじめとする運動にテーマを特化

(株)ウイングスタイル 「ジョグノート」

「ジョグノート」は途絶えてしまいがちな運動を継続して実施するためのモチベーションを喚起するコンテンツを満載したSNS。サイト上での交流に加え、オフ会として走行会が頻繁に行われるなど、バーチャルとリアルの枠を超えた会員間コミュニケーションを成立させている。今後は広告に頼らないビジネスモデルを目指していく方針だ。

有酸素運動の継続へのモチベーションを提供するSNSサイト

 (株)ウイングスタイルが運営する「ジョグノート」は、ジョギングをはじめとする有酸素運動にテーマを特化したSNSサイトである。
 「ジョグノート」の主な機能は、毎日のジョギングやウォーキング、スイミング、自転車など有酸素運動の実施距離や時間、体重などを入力するだけで自動的にグラフが作成できるマイページ内の「練習記録」。そのほか、友人とメッセージのやり取りをできる機能、コミュニティ機能など、ややもすると途絶えてしまいがちな有酸素運動を継続して実施するためのモチベーションにつながる機能が満載だ。また、ジョギングコースを地図上にプロットし、コース名を付けて、距離やおすすめポイント、コメントなどを登録して、会員間で共有する「みんなで作ろう! ジョギングマップ」も、新しいジョギングコースを探している人や、これからジョギングを始める人に役立つ機能として人気を集めている。
 「ジョグノート」がスタートしたのは2005年12月。同年4月にWeb制作サービスを目的に設立されたウイングスタイルが、エンジニアが趣味で個人運営していたサイトをベースに、自社運営メディアとして開発し、サービスの提供を開始したものである。その背景には、当時は健康づくりやダイエットにおける注目ポイントが、サプリメントや機器などの“モノ”から、“体を動かすこと”に転換しつつあった時期であったことを踏まえ、今後、ジョギングをはじめとする有酸素運動をサポートするWebサイトに対するニーズが高まるであろうという判断があった。なお、ウイングスタイルでは現在、「ジョグノート」のほか、食べることを楽しむコミュニティサービス「CooCom(クウコム)」、ギフト探し専門Q&Aコミュニティ「ギフトエフスキー」の運営なども行っている。

メタボ検診の結果を受けてジョギングを始めた40代男性も

 「ジョグノート」はオープン型のSNSであり、メールアドレスと希望するID、パスワードを入力するだけで、誰でも会員登録することができる。登録後、ニックネームや姓名、生年、性別、運営しているブログのURL、地域などを設定する機能があるが、入力は必須ではない。
 2009年3月現在、登録会員数は約7万5,000人。会員の獲得に当たっては、一部リスティング広告の出稿なども行ったが、大半は口コミによって集まった会員であり、特にジョギングがブームとなり、TVニュースなどでも数多く取り上げられた2008年夏ごろから、会員増加のペースが急上昇したとのことだ。なお、アクセス数は月間240万PV前後に及んでいる。
 性別では男性が70%強、居住地域は首都圏が中心で50%以上を占める。年代では30~40代が中心。同社の調査によれば、2008年4月から始まったいわゆるメタボ検診の結果を受けてジョギングを始めた40代男性なども多く、これらの層はサイトをアクティブに活用する傾向が見られるとのことだ。
 コミュニティーやメッセージ、日記などのコンテンツを通じて会員同士の交流も活発に行われている。そのほか、会員が自ら主催、設定し、期間内の走行距離やカロリー消費量、設定距離の最短到達など、さまざまな観点から、バーチャルで会員間の競争を行うコンテンツとして2008年5月からスタートした「ジョグノートカップ」は、スタートから半年強で延べ500大会以上が開催されており、いずれも数多くの参加者を得ている。また、オフ会としての走行会なども頻繁に行われる一方、リアルなマラソン大会などで同じ参加者から同サイトの存在を教えられて入会する人も多数存在するなど、バーチャルとリアルの枠を超えたコミュニケーションが成立している。

会員間のコミュニケーションを通じ健全な競争意識を喚起

 サイトの運営においては、サイトの目標である有酸素運動を継続して実施するためのモチベーションづくりをいかに実現するかに最も苦心した。結果として大きなカギとなったのは、会員間のコミュニケーションを通じて、健全な競争意識をいかに喚起するかということ。そのために、前述の「ジョグノートカップ」などのコンテンツを追加したほか、マイページの中で友人として登録した会員の運動状況やリアルのマラソン大会へのエントリー状況などを確認できる機能を追加するなどの施策を実施し、成果を上げているとのことだ。
 当初、懸念された「荒らし」については、例えば「1日に2,000km走った」など、明らかに虚偽の情報が登録されるようなケースはあったものの、大きな問題に発展したことはない。コミュニティーへの書き込みや投稿画像などは目視によりチェックしているが、問題がある投稿はほとんどないとのことである。同社ではこの点について、運動することがコミュニケーションの起点となるため、荒らすネタがつくりにくいことや、検索機能はあまり充実させないようにするなど、意識的な「ちょうどよい不便さ」の演出が奏功しているのではないかと分析している。

広告のみに頼らないビジネスモデルを目指す

 「ジョグノート」は現状、基本的には広告型のビジネスモデルで運営されている。バナー広告のほか、例えば前出の「ジョグノートカップ」の冠大会のスポンサーとして、賞品を提供してもらうなどのタイアップを行うケースもある。また、「ジョグノート」の仕組みを期間限定でOEM提供する事業も行っている。
 将来的には、広告収入については現在のレベルを維持しながら、それのみに頼らないビジネスモデルに移行していく意向であり、現在、その実現のためのトライアルを続けている。例えば、2007年9月からスタートした(株)NTTドコモ iモードの公式サイト「ジョグノートモバイル」では、元オリンピックマラソン選手の増田明美氏に監修を依頼。さらにケータイのGPS機能を利用し、アプリを起動して走るだけで、走ったコース、距離、速度、消費カロリーなどが自動的に記録されるなど、付加価値の高い機能を加え、月額210円の有料サービスとして提供している。また、運動や健康に関する講演と走行会を組み合わせた有料イベントなども実施しており、今後も継続していく方針である。さらに、主催イベントでのサンプリング・サービスや、会員を対象とするアンケート・サービスの提供なども行っていく意向だ。
 また、「ジョグノート」内で提供するか、別ブランドを立ち上げるかは検討中であるが、テーマを有酸素運動から運動全体に拡大。外部のトレーナーやフィットネスクラブ運営企業などとの提携により、Web上で、フィットネスクラブのパーソナルトレーナーが行うような、トレーニングの提案・進捗管理サービスなどを利用者に有料で提供することも視野に入れている。同社ではこれらの試みによって、最終的には「ジョグノート」関連の収入の80%程度を、広告以外により確保していきたいとしている。

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走った距離や時間、体重などを入力すると、自動的にグラフを作成する機能がある。


月刊『アイ・エム・プレス』2009年4月号の記事