2002年4月の設立以来、インターネット環境の進展に即応した「外国為替保証金取引(FX)」の取引システムを提供し、急成長を遂げた(株)外為どっとコム。同社はケータイ・サイトにも対応した「バーチャルFX」「FX検定」を運営し、専門性の高い金融商品の基本的な知識と正しい情報を提供することで、リスクコントロールがしやすい金融商品であることをアピールする。その取り組みと効果について聞く。
FXを専業にした商品提供が強み
1998年の外為法改正により、従来、銀行でしか行うことができなかった外国為替業務が解禁され、それに伴って登場した投資商品が「外国為替保証金取引」、通称FX(Foreign Exchange)などである。個人投資家の資産運用手段として注目を集め、近年急速に成長している。(株)外為どっとコムは2002年4月の設立以来、インターネット環境の進展に即応したFXの取引システムを提供してきた。現在、口座数は30万件、預かり保証金総額も1,031億円を超えるなど、4年連続業界1位を記録するまでに成長している(※2008年9月現在)。同社が手掛ける個人向け外国為替保証金取引事業は、オンラインで提供している外国為替取引のサービスで、金利差収益を貯める中長期運用型の「ネクスト総合口座」と、手数料無料で為替差収益を追求する短期トレード型の「FXトレード口座」と、目的に合わせて選べる2つの口座を用意している。また、「ネクスト総合口座」では、1,000通貨からの小口取引が可能。1万円程度からFXを始めることができることも、初心者の人気につながっている。
※外国為替保証金(証拠金)取引業界における「口座数」「預かり資産」の2部門。期間2008年3月までの4年間。
模擬トレードサイトを提供し顧客化を促進
もともとPCをメインにFX取引業務を開始した同社がケータイ・サイトに取り組み始めた背景には、携帯電話の高機能化と顧客のライフスタイルの変化がある。
携帯電話のインターネット機能の発展はライフスタイルに合わせて24時間、どこに居てもさまざまな情報入手を可能にした。それに伴い、いつでも身近にある携帯電話を活用してFX取引に必要な最新情報を入手したいという顧客のニーズも生まれた。したがって、ケータイ・サイトの活用に取り組むことは潜在顧客の開拓にもつながるため、同社は興味・関心をもってもらうためのサイトと実際の取引に必要になる情報を提供するサイトの2段構えでサイトを運営している。
興味・関心を持ってもらうための代表的なサイトが、2002年10月から開始したバーチャルFX(モバイルにも対応)である。これは同社の外貨ネクストの模擬トレードサイトとして運営しており、これからFX取引を始める入門者に外為マーケットや外国為替取引の感覚に親しんでもらうのが目的だ。最大の特徴は実際の為替レートを用いながらゲーム感覚でFX取引ができるということで、ゲームに実際のリアルタイムレートを採用したのは業界初の試みだという。同サイトの内容は、仮想の元金500万円を期間内にいくら増やせるかを競うというもので、リアルタイムのレート、多機能の取引システムなど、限りなく本番に近い環境で実践さながらの取引を体験できる。参加費は無料で、3カ月ごとの優勝者(期間内に資産を一番増やした方)にはNissanのスポーツカー、フェアレディZがプレゼントされる。
現在、同サイトの会員登録者は100万人を超え、実際の取引を始める前の実践練習として活用されている。
金融商品イメージの向上を図る「FX検定」
同社は為替取引に必要な情報提供のほかに、学習コンテンツにも注力している。その中で初心者向け入門編にあたるコンテンツが、2008年11月からPC、ケータイで展開している「FX検定」だ。これは、検定を作る! 検定で遊ぶ! 検定で学ぶ! 検定でブログパーツ!」をコンセプトにした、“オリジナル検定共有コミュニティ―けんてーごっこ”のサイト内に開設したもので、為替に興味、関心を持ってもらうための第一歩として、FX取引の基礎知識を楽しみながら学べるコンテンツになっている。これは社名やサービスの訴求以外で潜在顧客とのコミュニケーションを図ることが狙い。情報不足によってFX取引に不安感を持つユーザーや、FX取引への理解度を測りたいユーザーを対象にしているサイトだ。
同社がケータイ・サイトを活用したプロモーションに積極的に取り組む背景には、基本的な知識と正しい情報を提供することで、業界のネガティブなイメージを変えたいという狙いもある。同業界内では実際に顧客資金を無断で流用する事件が発生するなど、商品イメージに不安感が伴っていることを憂慮。そこで、正しい商品情報を与え、金融商品としては小回りも利き、リスクコントロールがしやすい魅力のある商品であることをアピールする手段として、PCを含むケータイ・サイトの活用に乗り出した次第だ。
また1998年の外為法改正に対する認知も一般的には浅いことから、身近なケータイ・サイトを活用すればFX取引の認知も向上するものと見ている。「FX検定」をきっかけにFX取引に関心をもった潜在顧客のために、同社はFX取引に関する無料セミナーも積極的に開催。FX入門者に手厚い働きかけを行っている。
現在、同社の取引件数に占めるチャネル別構成比はPCが約85%、携帯電話が約15%であるが、一連の取り組みの効果として、携帯電話による取引件数の増加傾向が表れているという。また、現在、取引をする顧客の中心世代は30~40代であるが、最近のセミナー参加者は30歳前後の主婦や女性が増加傾向にあり、セミナー参加者が顧客予備軍であることを考えると、今後、顧客層に世代の変化が表れるのではないかと見ている。
情報提供ツール「外為アプリ」
同社では、「FX検定」「バーチャルFX」を経て、実際のFX取引を行う顧客に向けて、情報提供ツール「外為アプリ」を提供。これは取引を始めるにあたって必要なレートやポジションの状況、指標発表結果を瞬時に確認するなど、取引に必要な情報提供ツールとして位置付けられているサイトだ。同サイトからはリンクをたどって取引に移行することも可能になっており、取り扱い全通貨ペアのチャートは1分・5分・60分・日足の4種のタイムスパンと移動平均・MACD・RSI・ボリンジャーバンドの4種のテクニカル指標とを組み合わせて表示させることができる。また一般的には専門色の強い画面になるところを、見やすいカジュアルな感覚の画面づくりを意識している。
同社では今後の展開として、モバイルでの取引を安価で効率的、かつスピーディーに行うためのスペックの向上、FX取引に必要なデータを面白く見せるようなコンテンツの開発を推進していくという。また、同社は携帯電話の進化がさらに加速することを念頭に、FX取引の取引時間を選ばない自由度と取引内容の機動性の高さをマッチングさせるようなサイトづくりを目指していく意向だ。
「外為アプリ」「バーチャルFX」「FX検定」のトップページ画面
参考資料:矢野経済研究所『2008年版 外国為替証拠金取引の動向と展望』