コンビニエンスストア「am/pm」を展開する(株)エーエム・ピーエム・ジャパンでは2007年9月、「大人の食育」の普及・啓蒙活動として展開している「カラダにキブンにイイコトクラブ」の活動のひとつとして、「あなたとつくるクラブメニュー」キャンペーンを実施。顧客から募集したメニューアイデアに基づく商品開発を行った。開発商品はいずれも好調な売れ行きを示し、また、食文化の多様化の進展など、新たな気付きがもたらされる結果となった
「大人の食育」をテーマとする活動の一環として顧客参画型のキャンペーンを展開
顧客の期待を上回ることで感動を生み出す「感動創造」を企業理念として、関東、関西、九州を中心にコンビニエンスストア「am/pm」約1,150店舗を展開する(株)エーエム・ピーエム・ジャパン。同社では2007年9月、「カラダにキブンにイイコトクラブ」の活動のひとつとして、「あなたとつくるクラブメニュー」キャンペーンを実施した。
同社では、「am/pm」で販売する商品について、保存料・合成着色料の不使用、原材料の徹底管理、アレルギー原因素材全25品目の表示など、23種類178項目にわたる「あんしん二重丸基準」を設け、この基準を満たした商品をオリジナルブランド「あんしん二重丸」商品として販売するなど、安心・安全を重視している。「カラダにキブンにイイコトクラブ」は、このような同社の姿勢を象徴する活動として、2007年4月に発足した活動だ。
クラブの大きなテーマは「大人の食育」。医学博士や料理研究家など、食関連の専門家との連携により、①“おいしさと健康のコラボレーション”を実現する「専門家の太鼓判」、②産地・生産者と協力して国産食材、③有機食材、国産のオリジナル雑穀ブレンドなどを活かした商品開発を進める「イイコトこだわり食材」、④環境にやさしい容器・包材を積極的に採用してCO2を削減するなど、地球環境に配慮した取り組みを行う「イイコトfor EARTH」といった活動を通じて、30~40代の“大人”をメインターゲットに、“食べることを大切にすること”と“おいしい食べものをつくってくれる人を応援する”というコンセプトの普及・啓蒙を進めている。
「あなたとつくるクラブメニュー」キャンペーンは、この活動に顧客も参画してもらうことを狙って企画されたものだ。同社では例えば、レシートにQRコードを印刷するなど、携帯電話から簡単にアクセスできるかたちの「お客様アンケート」を実施したり、電話、eメールにより顧客からの意見・要望・クレームを受け付ける専用のお客様窓口「あんしんセンター」を設置・運営したりするなど、顧客の声の活用に積極的に取り組んでおり、このキャンペーンは、そのような同社の姿勢の現われとも言える。
データベース登録顧客を中心に告知
「あなたとつくるクラブメニュー」キャンペーンの具体的な内容は、顧客から①お弁当・おにぎり・お寿司、②麺、③サラダ・スープ、④サンドイッチ・パン、⑤デザートの5カテゴリーの中で、「カラダにキブンにイイコトクラブ」のコンセプトに見合うメニューのアイデアを募るというもの。対象は未発表のオリジナル作品で、必要事項は「商品のコンセプト」「使用食材」「メニューのイラストもしくは写真の送付・添付」とし、9月4日から30日にかけて、Web、FAX、ハガキでの応募を受け付けた。最優秀賞(1名)、優秀賞(2名)、佳作(2名)を設け、採用されたメニューアイデアを基に実際に商品を開発し、「カラダにキブンにイイコトクラブ」商品として発売することとした。
告知については店頭のほか、「am/pm」で使用できる電子マネー「Edy」利用者を対象とするメンバークラブ「club ap(クラブエーピー)」の会員など、同社のデータベース上に登録されている顧客へのeメールなどにより実施。マス媒体を利用した告知は、コスト面を考慮し、行わなかった。
実際の応募数については公表していないが、ほぼ想定通りであったとのこと。例えば携帯音楽プレイヤーやゲーム機などを賞品とするプレゼント・キャンペーンなどと比較すれば少なかったものの、賞品が最優秀賞でもディナー券2万円分、優秀賞ではホテルランチ券5,000円分、佳作では「Edy」3,000円分にとどまり、賞品によって応募者を集めるかたちではないキャンペーンとしては十分に満足できる結果であったようだ。また、応募されたメニューアイデアのレベルについても、玉石混交ではあるものの、全体としては予想より高かったとのことである。
応募されたメニューアイデアに対しては、まず社内のマーチャンダイジング担当者による一次審査、料理研究家・藤野嘉子氏を交えた二次審査を実施。「カラダにキブンにイイコトクラブ」のコンセプトとの合致性や品質管理上問題がないかどうかを考慮した商品としての実現性、斬新性などを検討し、最優秀賞と優秀賞に該当する3作品を選考した(佳作は該当作品なし)。そして、その後応募者も交えて実際の商品開発を実施し、2008年1月、最優秀賞の調理麺「豆乳キムチラーメン」、優秀賞の【とれたて膳】「豚塩麻婆豆腐丼」、【とれたてキッチン】「カジキマグロのトマトカレー」を実際に発売することとなった。
「豚塩麻婆豆腐丼」(左上)、「カジキマグロのトマトカレー」(左下)と「豆乳キムチラーメン」(右)
キャンペーン開発商品はターゲット層に受容され好調な売れ行きを示す
キャンペーンによって開発された商品は、各カテゴリーの中で、いずれも同社の基準の中でのAランクの中位から下位に当たる比較的好調な売れ行きを示した。また、アンケートの結果によれば、実際に購入した顧客の満足度も高く、特に「カラダにキブンにイイコトクラブ」のターゲット層と考えている30~40代で高い再購入意向が示されており、この点については十分に満足できる結果であったとのことである。また、購入者では、「am/pm」全体の顧客分布と比較して、女性の割合が高かったということであり、顧客層の拡大にも役立ったようだ。
さらに、応募されたメニューアイデアの中には、最優秀賞の「豆乳キムチラーメン」をはじめとして、プロでは思い付かないようなユニークなものが多かったことなどから、地域というレベルではなく、家庭というレベルで食文化が多様化していることに気付かされ、商品開発の参考になったという点も成果のひとつとして評価されている。
外部組織を通じて食に対する興味度・関与度の高い生活者との連携を図る
このような成果を受けて、同社では今後もこのような取り組みを進めていく方針を示しており、特に食関連の外部組織・団体に属するような、食に対する興味度・関与度の高い生活者との連携を深めていく意向だ。
前述のように同社では「カラダにキブンにイイコトクラブ」の活動の中で食関連の専門家との連携を行っているが、これらは内容の深さはあるものの、連携相手が特定少数に限られることから、場合によってはマンネリ化しかねないという懸念もある。一方、「あなたとつくるクラブメニュー」キャンペーンのような取り組みは、幅広い層とのコラボレーションが可能であり、バラエティに富んだ成果を期待できるが、時間が掛かり、また、当たり外れが大きいというデメリットも否定できない。
このような状況から検討されているのが、食関連の外部組織・団体との連携だ。このような組織・団体を通じて、食に対する興味度・関与度の高い生活者との連携が実現できれば、内容的な深さを確保しつつ、多様性やスピード感を求めることも可能となる。既にいくつかの組織・団体のピックアップなども進めているとのことであり、今後、どのようなかたちでのコラボレーションが実現するか注目されるところである。