中堅企業専任のコンシェルジュによる対応で高い満足度の獲得に成功

日本アイ・ビー・エム(株)

日本アイ・ビー・エム(株)のゼネラル・ビジネス事業では、中堅企業のお客様が気軽に問い合わせることのできる窓口「IBM Express Advantage コンシェルジュ」を開設。専任コンシェルジュによる親切で丁寧な対応を行うことで、高い満足度を獲得している。

中堅企業のIT投資をサポートするためにコンシェルジュサービスを開始

 サーバー、ワークステーション、ストレージ、ソフトウエアの開発・製造・販売からシステムインテグレーション、コンサルティングまで、お客様のビジネスを成功へと導くITサービスを提供している日本アイ・ビー・エム(株)(以下、日本IBM)。同社ゼネラル・ビジネス事業は、2007年4月に中堅企業を対象としたコンシェルジュサービス「IBM Express Advantage コンシェルジュ」を開設した。
 「IBM Express Advantage コンシェルジュ」開設の背景には、多くの中堅企業が抱えるIT導入に関する悩みがあった。
 同社では、2003年より中堅企業専用の製品群「IBMExpress ポートフォリオ(2007年4月よりIBM ExpressAdvantage オファリングに改称)」を提供している。しかし、中堅企業の同社に対するイメージ調査を実施したところ、企業としての信頼性や製品の確かさ、テクノロジーのリーダーシップという点では高い評価を得ているものの、中堅企業にとっては敷居が高いというイメージがあることがわかった。さらに別の調査から、大半の中堅企業はITの導入に関して相談したくても相談する先がないということがわかった。同社には中堅企業向けの製品群があり、スキルと経験も社内に蓄積されている。加えて、全国にスキルを持ったパートナー企業がいる。それなのに、敷居が高いという理由で、そのスキルや経験を利用していただけないのはもったいない。同社のWebサイトには、サーバーやソフトウエアの見積依頼受付など製品別の問い合わせ窓口はあるが、お客様自身で適切な窓口を選択することが難しいケースもある。そこでどのような内容の問い合わせでも気軽に問い合わせていただける窓口を作ろうと考えたのである。

サービス内容は情報提供に限定

 「IBM Express Advantage コンシェルジュ」では、専用のフリーダイヤル(0120-03-9966)とWebフォームおよびeメールを利用して問い合わせを受け付けている。利用の多いチャネルはフリーダイヤルで、全体の約半数に達する。
 サービス内容は、見積依頼の受け付け、質問に対する情報提供、各部門の担当者の紹介に限定しており、同窓口で営業活動や提案活動は行っていない。また、すべての問い合わせに対して、きちんとクロージングがなされたこと、満足のいく結果が得られたことを確認するために、問い合わせから4営業日後にフォローコールを行っている。敷居が高いという理由で同社へのアクセスを躊躇していたお客様から問い合わせをいただいたにもかかわらず、該当部門へ引き継いだ後の対応が不十分であったら、気軽に問い合わせていただき、日本IBMの技術やノウハウを活用してもらおうという「IBM Express Advantage コンシェルジュ」の本来の目的を果たすことができないからだ。
 これらの業務を行うのは、専任のコンシェルジュたち。既存スタッフのほかに新規メンバーを採用し、既存のコールセンター内にコンシェルジュチームとして数名を設置した。
 新規採用において留意したことは、電話応対がきちんとできることと、お客様に親切で誠意ある対応ができることの2点。ITに関する知識は入社後の研修で身に付ければ良いという考えから、マストの項目とはしなかった。
 コンシェルジュとはいえ、同社のそれは非対面でサービスを提供していることから、日々の勤怠や応対品質の管理はコールセンターのリーダーが行っている。
 また、評価はグローバルで共通のIBMの評価基準に基づいて行っているが、同窓口はコンシェルジュサービスであることから、お客様満足度については目標値を他のコールセンターより若干高めに設定している。
 一方、教育や応対履歴の管理は、ゼネラル・ビジネス事業が担当。応対履歴を分析してオペレーションの改善を提案するほか、ターゲットである中堅企業から問い合わせが寄せられているかどうかや、問い合わせ内容の傾向を把握して、次の販促施策に活かしている。

145cs3

「IBM Express Advantage コンシェルジュ」は、IBM製品やサービスに関する質問はもちろん、ITにかかわるさまざまな疑問にも答えてくれる

ほぼ100%に近いお客様が満足と回答

 ゼネラル・ビジネス事業では売り上げ目標を持っているものの、「IBM Express Advantage コンシェルジュ」において売り上げは追求していない。というのは、同窓口のサービスは、“敷居が高い”というイメージを払拭して中堅企業のお客様に気軽に問い合わせていただくこと、そしてコンシェルジュや各部門の担当者とのやりとりを通じて日本IBMを身近に感じていただくことを主眼としているためだ。つまり、情報提供を通してお客様に満足していただくことが第一なのである。
 同窓口では、問い合わせをいただいたお客様に対して行うフォローコールの中で直接、お客様に満足度を尋ねている。選択肢は「大変満足」「満足」「不満足」の3つ。これまでの集計結果を見ると「大変満足」が80%以上で、「満足」と合わせるとほぼ100%のお客様が満足しているという結果が出ている。
 時には、お客様から「大企業でない私たちにも親切に対応してくれる」といった声が聞かれるほか、製品の導入が成約した際には問い合わせを引き継いだ先から「ありがとう」とお礼の言葉が寄せられることがある。こうした声が、コンシェルジュたちの原動力となっているという。

ビデオチャットの導入を検討

 この4月で丸1年を迎えた「IBM Express Advantageコンシェルジュ」。目下の課題は、窓口の認知度を高めてアクセスを増やすことと、満足度を高めることである。現在、雑誌や新聞への広告出稿、ビジネスカードの配布、Webサイトでの告知などあらゆる手段を通じて同窓口の告知を図っているが、認知度を高めるには時間を要する。そこで同社では、今後も継続的に同窓口の認知度向上に取り組む意向だ。
 満足度を高めるための施策としては、コンシェルジュたちの「お客様のために何かをしてあげたい」という初心を維持することに努める考え。具体的には、フォロー研修の際に同窓口開設の目的を繰り返し伝えていくという。これに加えて、お客様のお礼の声や、成約したという結果をコンシェルジュチームにフィードバックすることで、モチベーションの維持・向上を図っていきたいとしている。地道な取り組みだが、同社では日々の積み重ねが重要と考えているのだ。
 前述の通り、現在「IBM Express Advantage コンシェルジュ」はフリーダイヤル、Webフォーム、eメールと非対面のツールでサービスを提供しているが、今後は、ビデオチャットの導入を検討しているという。すでに、米国のIBMコーポレーションのサービスではビデオチャットを利用していることから、同コーポレーションでの実績を参考にしながら、日本の事情に合わせて慎重に進めていく考えだ。お客様にコンシェルジュの顔を知っていただくことで、親近感が生まれることを期待している。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年6月号の記事