靴下の卸問屋からSPAへと転身を図り、日本のSPAの草分けとして知られるタビオ(株)。同社がECを推進するに当たって課題としていることは、フランチャイズオーナーの理解を得ること。現在、ECの売上規模はわずかだが、同社では将来的にはECのみで1企業として成り立つ規模にまで成長させようと意気込んでいる。
「お客様の足にやさしい靴下」を追求した結果たどり着いたSPA
日本においてSPAを語る上で欠かせないのが、全国に靴下専門店「靴下屋」などを展開するタビオ(株)である。同社の創業は1963年。大阪で靴下専門の卸問屋としてスタートした同社は、創業当初、玉屋、鈴屋、三愛といった人気アパレルショップに靴下を卸していたが、1984 年に「靴下屋」第1号店をオープン。以来、国内主要都市に「靴下屋」、百貨店に「CHAUSSETTES」を展開し、急速に店舗数を伸ばすと同時に、卸売りを縮小していった。
同社が卸問屋からSPAへ移行した背景には、不易流行をモットーに「お客様の足にやさしい靴下」を追求してきたことが挙げられる。かねてよりオリジナル商品の企画を模索していた同社では、卸事業が軌道に乗ったところで、それまで温めてきた自社商品を製造・発売した。ところが、販売員からお客様に十分な商品説明がなされなかったことから、返品されるケースが相次いだのである。返品してきたお客様に対して1通1通、返事を書いていた同社の越智直正社長は、その時、高品質な商品を作っても、その良さがお客様に伝わらないことに憤りを感じたという。その後、同社では出店に乗り出すと同時に、1990年代にはカテゴリーキラーとしての事業の基盤固めに注力。現在では、「靴下屋」と「CHAUSSETTES」のほかに「Mighty Soxer」「Tabio」「Tabio HOMME」「Tabio GARAGE」「Kurashika」の7ストアブランドを展開し、直営店140店、フランチャイズ137店、計277店舗を保有。うち6店舗を英国に出店している。
同社のコア・ターゲットは中高生とOLだが、店舗の立地に応じてキッズやメンズも取り揃え、ファミリー層にも対応するなど、対象とするお客様の層は幅広い。取り扱いアイテム数は、1ブランド約700品番。複数のブランドで共通の商品があることから、7ブランド合計で約2,300品番となっている。
同社では、フランチャイザーとしてロイヤルティ収入を得るのではなく、フランチャイジーに自社商品を卸し、その商品代金を収入源としている。現在では、売り上げの大半がフランチャイジーおよび直営店によるもので、フランチャイジー以外への卸はほとんど行っていない。
販売情報を全行程で共有するネットワークシステム
同社がSPAの草分けとして国内外の企業から高く評価されている所以は、店頭と工場を結ぶネットワークシステムにある。同社では、売上データの公開をリスクとは捉えておらず、店舗展開に乗り出す以前より、本部で日々の店舗別の販売情報を吸い上げ、染色工場、編立て工場、物流センター、店舗と共有。各工程で必要な素材、生産数量を独自に判断できる体制を整えた。
これにより、店舗からの発注に対して原則として1~2日、物流センターに在庫がなくても1週間で納入することが可能となった。
また、靴下業界では一般的な10足アソート単位の仕入れではなく、売れたものを1足単位で補充できる仕組みを構築。小売店舗にありがちな販売機会の損失と過剰在庫の防止に寄与している。
こうして小売店舗の問題を解決すると同時に、販売員の接客スキルを高めたことにより、例えば「靴下屋」では15坪の店舗で1億5,000万~1億8,000万円/年を売り上げるまでに業績を向上。お客様の満足度も高まり、一時期は落ち込んでいたディベロッパーの評価を回復することもできた。
2007年2月期の総売上高は、110億8,200万円。このうちの97.5%が直営店およびフランチャイズによる売り上げで、残りの2.5%がギフトBOXなどの備品の売り上げとなっている。
タビオ表参道ヒルズ店
オーナーの理解の下にネットと店舗の融合を標榜
同社がECサイトを立ち上げたのは2001年。ファッション誌に掲載された同社の商品を見た読者がインターネットでストアブランドを検索した際、Webサイトがなければ来店に結び付きにくい。また、今後の販売戦略においてインターネットの活用は不可欠であるとの認識から、ECに参入した。
ECの取扱商品はほぼ店舗と同様で、ブランド、商品カテゴリー、サイズ、品番、価格帯で検索できるようになっている。サイト訪問者数は1年間にのべ160万人。購入に結び付く可能性の高い訪問者を獲得するために、バナーやアフィリエイトプログラムを試験的に活用しているが、現時点でのECの売り上げは店舗の売り上げに対してごくわずか。そのため同社では、転換率を高める方法を模索しているところだ。
しかし、同社がECを推進するに当たっては解決しなければならない課題がある。それは、フランチャイズオーナーの理解を得ること。時流をとらえ、本部でのEC推進に賛同しているオーナーもいるがすべてではないことから、今後同社では、より多くのオーナーの理解を得られるよう、じっくり取り組んでいく意向だ。実際に、Webサイト限定のオープン懸賞キャンペーンや靴下に関する用語辞典を見て商品に興味を持ったお客様が来店するケースも見られることから、同社では、インターネットの活用が店舗販売にも役立つことをオーナーに理解してもらえると確信。店舗とネットの融合を目指している。
タビオの自社サイトトップ画面
ECの目標は1企業として成り立つ規模の売り上げを達成すること
今後同社では、前述の通り、ECの売上規模の拡大に努め、将来的には1企業として成り立つ規模にまで拡大する意向。これと同時に、フランチャイジーのサポートにも注力し、同志的結合を深めていきたいとしている。また、海外進出にも積極的に取り組んでいく考え。現在、英国に出店し、英語版のECサイトも展開しているが、今後はフランス、ドイツ、アメリカへの出店も検討中である。
これからも高品質な靴下を作り続けていくタビオ。いつの日か世界中の人々にタビオの靴下が“靴下のグローバルスタンダード”と認識されることを目指している。