2006年12月、東日本高速道路(株)は、三菱UFJニコス(株)との提携により、オフィシャル会員カードとして高速人CARD「E-NEXCO pass(イーネクスコパス)」の発行を開始。同カード会員を対象に、独自のポイントプログラム「E-NEXCOポイントサービス」を展開している。
ドライブサポート関連事業の一環として高速人CARD「E-NEXCO pass」事業を実施
2005年10月、日本道路公団の分割民営化に伴い発足した東日本高速道路(株)(以下、NEXCO東日本)。同社は、東日本全域で営業延長3,428km(2008年1月1日現在)にも及ぶ高速道路の管理運営を中心とする事業を展開する。2006年12月には、UFJニコス(株)(現:三菱UFJニコス(株))との提携により、オフィシャル会員カードとして高速人CARD「E-NEXCO pass(イーネクスコパス)」の発行を開始、独自のポイントプログラム「E-NEXCOポイントサービス」を展開している。
「E-NEXCO pass」は、“非接触型ICカード決済サービス(Visa Touch、またはSmart plus)を搭載したクレジットカード”と“ETCカード”を組み合わせたもの。希望により携帯電話の決済機能の利用も可能である。そして、このカードの最大の特典である「E-NEXCOポイントサービス」は、毎月のカード利用について、通常の利用200円ごとに1ポイント(1円相当)、ETCおよびNEXCO東/中/西日本のSA・PA(一部店舗を除く)での利用には200円ごとに2ポイントを付与し、貯まったポイントを高速道路の通行料金(申請により1,000ポイント=1,000円単位で利用可能)、または、NEXCO東日本のSA・PAでの買い物などの代金(1ポイント=1円相当から利用可能)として利用してもらうというものだ。カード自体の利便性とポイントサービスにより利用者サービスを向上し、ひいては高速道路の利用促進、ETCの利用促進につなげることが「ENEXCOpass」事業の目的となっている。
なお、「E-NEXCO pass」事業は、NEXCO東日本にとって、快適な高速道路利用をサポートするドライブサポート関連事業のひとつとして位置付けられており、事業開発部新規事業課が担当部署となっている。そもそも、民営化前の日本道路公団では、高速道路のインフラ整備・管理関係に主眼が置かれており、ドライブサポート関連については、民間事業者主導で実施されることが多かった。しかし、民営化後については、インフラ整備・管理関係を土台として、民間事業者との積極的な連携によるドライブサポート関連事業を展開しており、高速道路のポータルサイト「E-NEXCOドライブプラザ」を運営したり、旅行会社との共同企画によって周遊型のETC企画割引(一定区間内を固定料金で2日間乗り降り自由)を実施したりするなど、数々の新たな試みを行っているが、「E-NEXCO pass」事業もその一環と言えよう。
ライトユーザーとへビーユーザー双方にメリットのあるサービスを提供
「E-NEXCOポイントサービス」の特徴は、高速道路のライトユーザーとへビーユーザー、双方のメリットを考慮していることだ。
ライトユーザーのメリットとしては、まず、ポイントに有効期限がなく、永久保存されることが挙げられる。これにより、例えば、年数回しか高速道路を利用しない人でも、長期間にわたりポイントを貯め、活用することが可能となっている。そのほか、入会特典としてETC車載器(セットアップ費用込み)を割安価格で提供するサービスも実施(2,000円相当のポイントプレゼントとの選択制)。また、初年度無料となっている年会費や故障時緊急修理などのロードアシスタンスサービス(一定条件まで)も、年1回以上の利用(ETC利用を含む)があれば次年度も継続して無料となる。
一方、ヘビーユーザーのメリットとしては、年間(1~12月)の利用額が30万円を超えると、年間獲得ポイントの20%を上乗せするシステムが挙げられる。また、「E-NEXCOポイントサービス」とは別に、高速道路各社が共同で提供している料金還元制度である「ETCマイレージサービス」と併用できることも、ヘビーユーザーにとってはありがたい仕組みであると言えよう。
「E-NEXCO pass」は、非接触型ICカード決済サービスを搭載したクレジットカードとETCカードを組み合わせたもの
5万人を目標に会員を募集
NEXCO東日本では、「E-NEXCO pass」の初期(2008年3月まで)の会員数目標を5万人に設定。SA・PAでのポスター掲示、パンフレット配布のほか、「ENEXCOドライブプラザ」を中心に、リスティング広告、アフィリエイト広告など、Web上での告知も実施。さらにレーシング仕様のキャンペーンカー「高速人CAR」を製作し、自動車関連のイベントやサーキットなどでのPR活動を行うなど、会員募集に努めている。その結果、これまでのところ、ほぼ目標に近いペースで会員が集まりつつあるという。
会員の属性は、性別では男性が約85%。年代別では30~40代が中心で、60%前後を占めている。入会を機に新たにETCサービスを利用するという会員は30%程度で、約70%はそれまでに利用していたETCカードからの切り替えである。なお、ETCカードの送付時に「ETCマイレージサービス」の利用申込書(既利用者には登録カード変更依頼書)を同封していることから、会員の「ETCマイレージサービス」併用率は高く、60~70%に達している。
月当たりのカード稼働率はこれまでのところ、非常に高い。また、非接触型ICカード決済機能の利用者のSA・PAでの客単価も現金決済客と比較して約1.5倍に達するなど、高速道路という限られた範囲でのメリットを追求したカードだけに、会員の利用意識は比較的高いようだ。
利便性向上とドライブサポート機能の強化により会員数25万人を目指す
「E-NEXCO pass」事業はスタートから1年強の段階であり、まだまだ多くの課題を抱えている。
現状における大きな課題として挙げられているのが、SA・PAにおける自動販売機・食券販売機への非接触型ICカード決済機能の導入だ。現在同社のSA・PAでは、ガソリンスタンド・タバコを除く、売り上げの約4割が自動販売機・食券販売機によるものとなっており、これらについて、非接触型ICカード決済機能を付加すれば、カード会員の利便性は大幅に向上する。同社のSA・PAは183カ所、無人休憩箇所を含めると297カ所にも上るため一朝一夕にはいかないが、徐々に導入を進めていく方針である。
また、ドライブサポート機能の強化も大きな課題だ。現状では、会員との定期的なコミュニケーション・ツールは特に用意されておらず、不定期でキャンペーン情報などを送付している程度であるが、今後は「ENEXCOドライブプラザ」などをベースに、定期的な情報提供を行うことも検討している。また、ETC企画割引など、各種新サービスについても会員へ積極的に告知し、利用促進を図っていく意向だ。
これらの実現により、将来的には会員数25万人を目指していく。