パートナーとの協業体制により高度なソリューションを実現

日本オラクル(株)

データベースやミドルウエア、業務アプリケーションを主体とした製品やサービスの提供を行っている日本オラクル(株)。ここ数年では、ピープルソフトやシーベルを買収し、製品ラインナップを広げてさまざまな顧客のニーズに対応。同社の販売チャネルは、基本的に販売店(パートナー、代理店)を通じたB to B to B。パートナー企業との連携体制を強化した営業活動を展開し、 win-winの関係を築いている。

支援プログラムの提供によりパートナーを1,200社以上に拡充

 世界第2位のソフトウエアベンダー、オラクル社の日本法人である日本オラクル(株)。同社では、データベースやミドルウエア、業務アプリケーションを主体とした製品やサービスの提供を行っている。最近では、オラクル社が統合基幹業務(ERP)ソフトウエアのピープルソフトやCRM系ソフトウエアのシーベルを買収したことで、製品ラインナップを広げて顧客ニーズにより幅広く対応する体制を整備している。B to B to Bのビジネスモデルを主体とする同社では、売り上げの大半はパートナー(販売店)経由になり、当然、収益拡大にはパートナーとの良好な関係づくりが欠かせない。2003年には、重点施策のひとつとしてパートナー体制の拡充を打ち出し、独立系ソフトウエアベンダー、SIer、ハードウエアベンダーなど同社製品を取り扱う企業を支援するプログラム「Oracle Partner Network」を組織化。カテゴリー別の年会費制を採用し、各種ライセンスの無償提供や研修への参加などの特典を用意している。
 さらに2004年には、サポートサービスにおいてもパートナーと協業体制を強化すべく、パートナー支援プログラム「サポート・パートナー・プログラム」の提供を開始。これら支援プログラムの拡充によりパートナーは徐々に拡大、既に1,200社以上を数えている。

“顧客フロント”であるパートナーを縁の下でサポート

 これまでパートナーとのネットワークを強化してきた同社は、一方で、2003年から「OracleDirect」を設置し、独自の営業活動を展開してきた。これは、これまでカバーできなかった領域のエンドユーザーに対し、主に電話とWebを使い、低価格の製品や新製品を中心に、提案から見積もり作成までを行う部門である。案件を規模や業種に応じて割り振り、実際の契約はパートナーと行う形を採っている。
 これにより同社は、エンドユーザーのすそ野を拡大しただけでなく、技術者が直接問い合わせに対応することで製品への顧客理解を促進する提案ノウハウを蓄積してきた。また、こうした活動を通じて、データベースが、単なる情報管理ツールからビジネスを創造するツールへと進化する中で、これを構築する費用をコストではなく投資とみる企業が増えていることを把握。そこで、同社製品の組み合わせを最適化するためのソリューション営業を効率的に行うため、パートナーとの連携をさらに強化し、双方からエンドユーザーにアプローチすることが重要だと考えた。
 そこで、2006年から、同部門の営業担当者に産業別の担当制を敷き、各産業のパートナーとエンドユーザーの双方を同一の営業担当者がカバーする体制を整えた。当初は、パートナーを担当するアライアンスビジネス統括本部と連携し、既存窓口を通して協業内容や活動をフィールド営業や販売店の営業担当に理解してもらうことから着手。パートナーは同社以外の製品も広く扱っていることから、そのビジネス・スタイルを崩さない範囲で、パートナーの客先での営業活動を支援する体制であることへの理解に努めた。
 前述の通り、OracleDirectの営業担当者には2006年から、①エンドユーザーへの営業活動、②特定のパートナーへのサポートの2つの役割を持たせた。これにより、エンドユーザーへの提案経験を積み重ね、そこで得た訴求ポイントをパートナーに展開していくという方法で、営業の効率化を2方向から推進している。
 具体的な手段のひとつに、ネットと電話でプレゼンテーションを行う「バーチャル同行訪問」がある(図表1)。エンドユーザーにID・パスワードを付与し、パートナーの訪問営業時にOracleDirectにログインしてもらい、同社の担当者があたかも同席して説明しているかのようにさまざまな質問に答えていく。先方からその場で出た質問や課題などに対して、改めて訪問せずとも即座に答えられる仕組みだ。

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 こうして時間ロスの軽減と質問から解決までの時間差をなくし、商談をスムーズに進めることができる。なお、このような同社営業担当者との協業プロセスを経た案件についても、パートナー商談の成約案件としてカウントされることとなっている。

業務プロセスの可視化により工数の低減に成功

 同社では、営業活動の協業成果を数値化して管理している。そもそも同社の営業活動は、包括的なビジネス・アプリケーションをセットした「Oracle E-business suite」による支援なしには成立しない。「業績管理」「顧客情報管理」「CRM管理」「ビジネスインテリジェンス」「業務プロセス管理」などが搭載された自社システムを実際に使っているからこそ、パートナーの製品理解の促進や、パートナーの活動成果を測定するスコアカードによる業務プロセスの可視化を実現しているのだ。
 「このシステムによって支援を開始してから、契約までの工数が目に見えて減っています」( 同社システム営業統括本部OracleDirect本部長 岩田健一氏)。同システムには、業務系の情報のみならず、ソリューションにかかわるナレッジも蓄積されるため、ナレッジの醸成と足並みを揃えて、パートナーの営業活動が洗練されてきているという感触を持っているようだ。
 一方で難しいのは、パートナーの戦略・目的が同社の方針と必ずしも一致するとは限らないこと。パートナー独自のビジネスプランや強化目標との接点を見出しながら営業活動を展開しないと、結局のところ成果は現れない。目標や方向性について、実施以前に経営レベルで合意がなされないと進展しないケースもあるという。

ソリューションの提案で長期案件の短期化を目指す

 同社の特徴としては、自社製品群の多さから、業務ソフト系で導入していないところはないといえるほど自社製品が現場で浸透していることがある。また、営業体制の確立の効果を裏付けるように、『日経ソリューションビジネス』が年1回実施している満足度ランキングでは、2006年、データベース部門、アプリケーションサーバ部門、基幹業務ソフト部門において1位を獲得した。
 同社が今後注力していく分野のひとつには、CRMアプリケーションの浸透がある。2006年1月に買収したCRMベンダー、シーベルの機能である「リアルタイムデシジョン・エンジン」の中には、目標達成度がグラフィカルに表示される機能があるが、ここに優秀な営業のノウハウを蓄積していくことができる。今後、同製品には、コンテンツの理解を促進する機能や、調査段階・検討段階といったプロセスごとに「いつ、どんな内容を」推奨すべきかのアクションを示す機能が搭載される予定。これにより、パートナーと同社がともに利益を増大できる上に、従来は長期化してしまっていた案件の短期化が期待されている。
 同社は今後も、「See your Business In Our Software」の実現に向け、販売店との協業体制を一層強化し、ソリューションの提供に邁進していく構えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年4月号の記事