ネットの充実、店舗の拡充でチャネルの拡大を推進

(株)千趣会

創立50年を迎える(株)千趣会。同社は、2002年1月から2004年12月までの中期経営計画の一環として、それまでの通販事業の枠組みにとらわれない改革を推進すべく、マルチチャネル化のプ口ジェクトを開始。さらに、2005年1月からスター卜した新3カ年の「中期経営計画」にインターネット・店舗への「チャネル拡大」による売上成長を盛り込むなど、マルチチャネル戦略を本格的に推進している。

2002年度から3カ年計画でマルチチャネル化プロジェク卜を始動

 2005年11月に創立50年を迎える(株)千趣会。同社の会員顧客数は約750万人、カタログの種類は約18種類で、総発行部数は約1億1,950万部を数える。総売上高は約1,471億円で、そのうちカタログ事業(ネット通販含む)は約1,197億円と81.4%を占める。
 同社は、2002年1月から2004年12月までの中期経営計画の一環として、それまでの通販事業の枠組みにとらわれない改革を推進すべく、マルチチャネル化プロジエクトを開設した。そして、2005年1月からは、新たに3カ年の「中期経営計画」をスタート。この計画では、①中核事業の収益力強化、②成長分野への積極投資、③ブランド価値向上を基本方針に掲げているが、中でも②は、20代と40代への「顧客年齢層の拡大」と、インターネット(PC、モパイル)・店舗への「チャネル拡大」による売上成長を実現するため、積極的な投資を行うという内容。これを受けて同社では、今年からマルチチャネル化を本格的に推進している。

2007年には650億円のインターネット売上高を目指す

 同社のマルチチャネル戦略の中心は、インターネット、店舗、カタログの3つのチャネルになる。インターネットに関して、同社がオンライン・ショップを開設し、ネット経由での商品受注を開始したのは1999年10月のこと。以降、順調に売り上げを伸ばし、2004年12月末時点のインターネット会員数は約302万人、売り上げは約369億円を達成した。 2005年1月にスター卜した中期経営計画では、これを2007年12月末までに650億円に増大すると謳われている。インターネットによる売り上げは、ネット経由(カタログを見てネットで注文すること)とネット経由以外(ネット上で商品を選んでネットで注文すること。“純ネット”と呼ぶ)の2つからなるが、650億円のうち半分を純ネットで売り上げる意向だ。
 2003年8月には、Webサイト上に「デジタルカタログ」がオープンした。これは主要カタログ(16種類)の全ページが、発刊と同時に見開きごとに閲覧できるもの。見たい部分を3段階ズームで拡大できるなど、利便性を考えた機能に加え、最新ファッション情報などを随時サイトにアップ。さらに今後は、これまで以上にネット独自の商品開発に注力していく意向だ。
 モバイルからの売り上げは、2001年時点ではネット全体の2%程度だったものが、2004年には24%にまで伸びている。20代前半の女性がターゲットのカタログ『プチベルメゾン』では、“恋するツーハン”をコンセプトに、ファッション、コスメ、雑貨、お菓子、情報などをバラエテイ豊かに紹介。携帯電話からの注文が多い世代であることを意識し、携帯アドレスを見やすく表示するなどの工夫も凝らしている。
 同社では、インターネットを強化することで、年間約1億冊のカタログの発行部数の低減を図る。これまで、年間購入金額が10万~20万円の会員顧客に対して、すべてのカタログを送付していたのを見直し、年齢などでセグメントしながら、最適なカタログを送付していく意向だ。すでに受注コストの削減、カタログ製作コストの削減などの効果が現れているという。

ショッピングセンターへの出店により既存顧客の流出防止を図る

 店舗に関しては、「ベルメゾンマーケット小樽店」「ベルメゾンマーケット蒲郡店」「ベルメゾンマーケット扶桑店」「ベルメゾンマーケット橿原店」のほか、2005年7月に、「ベルメゾンマーケット大垣店」がオープン。さらに、この9月には、20代から30代のファッション感度の高い働く女性を対象にした通販カタログ『ルボンディール』のコンセプトショップ「ルボンディールPFR南青山店」をオープンした。また、店舗展開については、中期経営計画のもとで、ベルメゾンマーケットを2007年12月末までに30店舗に拡大、30億円の売り上げを目指す。
 そもそも同社が店舗展開の推進に乗り出したきっかけは、近年、大規模ショッピングセンターが全国各地に相次いで建設されていることにある。こうした動きを受けて、同社のカタログ通販の顧客が減少傾向に転じたことから、既存顧客の流出防止と新規顧客の獲得を狙って、ショッピングセンターへの出店を始めたのである。その結果、出店による顧客の流出を元の顧客数あるいはそれ以上にまで伸ばすことに成功している。
 ベルメゾンマーケット各店の品揃えについては、衣料のカタログ『私たちの暮らす服』、インテリア雑貨のカタログ『私たちの住まいと雑貨』といった基幹カタログを中心に、現在18種類あるカタログの中から商品をセレクト。店舗の特性によって衣料と雑貨の比重は異なるが、約3,000アイテムを取り揃える。商品の入れ替えは、早い場合には1週間周期で行うなど、お客様に飽きられない店舗作りに取り組んでいる。顧客ターゲットは、同社の主力顧客である30代ミセスを中心に、20代後半から40代のファミリ一層とのこと。
 一方、「ルボンディールPFR南青山店」は、『ルボンディール』の掲載商品を揃えている。同店の特徴は、プライベート・フィッテイング・ルーム(PFR)と呼ばれる予約制の試着室があること。普段手にとって確認することができないカタログ掲載商品を、自分のペースでゆったり自由に試着できる。試着室は全部で3室あり、予約時間は1枠60分。常駐する3名の「コミュニケーター」が、商品説明からコーディネートの提案など、l対1できめ細かいアドバイスを行うことから、1回の客単価は約2万~3万円と、カタログの2倍に達している。

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店舗とWebサイトは力タログと連動しながら、それぞれの顧客ターゲットに合った独自商品も販売。顧客の購買チャネルが多様化する中、それぞれが顧客にとって最適なチャネルになっている

カタログの制作期間を短縮しより鮮度の高い商品をお客様に提供

 同社では、カタログの製作期間の短縮に努めている。これは、カタログとインターネットが連動していることから、より鮮度の高い商品の取り扱いを心掛けている現れだ。中でも、『ルボンディール』は、ファッション感度の高いスタイリッシュな働く女性に向けて発行しているだけに、カタログの企画から製作までを3カ月間で行っている。ほかのカタログに関しても、従来8~12カ月かかっていた製作期間を、現在では半年前後に短縮した。
 また、テレビショッピングに関しては、2003年3月にいったん撤退したが、目下、ブロードバンド時代を見据えて、可能性を研究中だ。顧客の購買チャネルが多様化する中、同社では、企画力を高めてお客様のためにベストなチャネルを展開し、お客様により良い商品をより早く提供していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年11月号の記事