“食”に関する話題に絞ることで質の高いコミュニティ作りを目指す

メイプル(株)

B食倶楽部は、「おいしくて、幸せな時間の共有」をキャッチフレーズに、食文化に特化したブログコミュニティサイトとして、2004年11月にスタートした。会員からの紹介がなければ入会することができない制約がある中で、着実に会員数を伸ばすとともに、会員から寄せられる飲食店情報も1,000件を突破するなど、予想以上の成長を続けている。同倶楽部を運営するメイプル(株)は、さまざまなビジネス展開を模索する一方で、コミュニティサイトの制作を受注するなど、着実に収益を上げつつある。

ネット・コミュニティ作りにはブログが最適と判断

 「おいしくて、幸せな時間の共有」をキャッチフレーズに、食文化に特化したブログコミュニティサイトとして、2004年11月11日にスタートした「B食倶楽部」。同倶楽部を運営するメイプル(株)は、2002年5月に、「ひとりひとりを幸せにするITサービスを届けたい」という思いのもとに、「健康」と「観光」をテーマに事業展開する企業としてスタートした。健康関連では、健診結果閲覧&健康の自己管理システム「フェニックスケア」などを開発し、(財)京都工場保健会に提供している。また観光関連では、兵庫県大河内町のモバイル観光ガイドシステムや、歴史街道推進協議会のQRコード付きパンフ連携携帯サイトを受託するなど、着実に実績を上げてきた。
 同社が「B食倶楽部」を開設するきっかけについて、編集長の古瀬幸広氏は、「健康の基本は正しい食事からです。食は観光にも通じるところがあるので、会社として取り組むべきではないか。それから、いま、日本の食がおかしくなっていることを実感していて、みんなで真面目に食を考える機会を持ちたいという思いもありました」と説明する。
 そこで同社では、B食倶楽部を情報発信スペースやある特定のメディアとしてではなく、コミュニティにすることを考えた。つまり、このサイトに参加する一人ひとりが自分の身近にあるとっておきのお店を教え合うことによって、「会員が、豊かになれる」(古瀬氏)という情報共有の精神が込められている。ブログを採用したのも、コミュニティサイトというコンセプトのもと、「選ばれた会員のみにデータベースへのアクセス権限を与えて、フォームに入力していただくという方法もありますが、それでは敷居が高すぎる。その点、ブログは会員みんなが感想を書ける、写真が簡単にアップロードできる、インターフェイスもすごく良い」と、現時点のインターネットのツールの中で最適だと判断したからである。
 B食倶楽部の会員になれば、すべてのサービス(ブログやソーシャルネット)を無料で受けることができる。しかし、ただひとつルールを設けており、「友だちから招待状をもらわないと登録できない」という仕組みになっている。現在、会員数は約500名。年内に、3,000名を目指している。ちなみに、非会員でもすべてのブログを見たり、コメントを書いたり、トラックバックをしたり、登録されている飲食店の検索をすることができる。現在、B食倶楽部に訪れる人数は、1日当たり2,000人を数える。さらに、1日当たりのPVは多い日で2万に上るという。
 2004年11月にスタートしたB食倶楽部では、優良飲食店データベースに登録された件数が、3カ月で1,000件を突破。すでに2,500件に達する勢いだ。この数字に関しては、予想以上と見ている。古瀬氏によると、昨年末までの会員数は100名にも満たなかった。それでも、1日に登録されていくお店の数は約10軒ずつと、今と変わらないペースで登録されていったと言う。「会員1人当たりの情報発信パフォーマンス数値を出すと、ほかの一般的なブログサイトの倍以上でしょう。食いしん坊で、情報発信力の高い人が見つけて、入会してくれています」と分析する。他のWebサイトでブログを書いていた人たちが、食べ物好きが多くてコメントがたくさん寄せられるからと、メインのブログをB食倶楽部に移行するケースも増えてきているという。つまり、「食べ物に関する最もクオリティの高い情報はB食倶楽部にあるという状態を作りたい」という古瀬氏の狙い通りになりつつあると言えるだろう。

影響力のあるコミュニティにするためSNS機能を充実

 また、2005年2月2日から、B食倶楽部はSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)機能を強化し、ブログ「B食LOG」と、会員だけが入れる「B食コミュニティ(Bコミ)」の2本立てとなった。Bコミには、メッセージ、お友だち、ラウンジ、ホームパーティという4つの機能が付いている。
 「メッセージ機能」は、会員に向けてショートメッセージを送信する機能、「お友だち機能」は、会員同士の人脈と付き合いを広げる機能、「ラウンジ機能」は、特定のテーマにそって情報交換できる場である。B食LOG(ブログ)はインターネットに公開されているが、ラウンジは会員のみに公開されているので、安心して会話をし、交流を深めることができるというわけだ。「ワインラウンジ」「立ち飲みLover」「Myレシピ」「ローカルフード万歳!」「おすすめスイーツ」といったラウンジが誕生している。また、ラウンジはテーマを食に限定していないので、宗教美術の会話をするラウンジなどもある。「ホームパーティ機能」は、もっと限定しており、頻繁に顔も会わせるような友だちと会話をするための機能で、主催者に認められた人のみが参加することができ、内容は参加者しか閲覧することができない。
 これらは、影響力のあるコミュニティにするためにはSNS機能を充実させる必要があるという考えに基づき開発されたものだ。

1,000件を超える飲食店情報を携帯電話から検索できるサービスを計画中

 こうしたコミュニティを作り上げることで、どんなビジネスを展開しているのか気になるところだが、現時点では、B食倶楽部を運営するメイプルが、このサイトから直接の収益を得られているわけではない。
 そこで、同社では1,000件を超える飲食店情報をドコモのiエリアやauのEZナビウォークといった携帯電話から検索できる有料サービスの準備を始めている。また、B食倶楽部が地方の酒蔵での試飲会やデパ地下の食品売り場などのイベントのプラットフォームになるビジネス展開も考えている。そして、ラウンジを特定の企業に販売して、会員と企業がコミュニケーションを持てる場を設けることも計画中だ。しかし、これらのビジネスを展開していくには、まず会員数を増やさなければいけない。古瀬氏としては、コミュニティが順調に育てば、ビジネスも後から付いてくると見ている。
 とは言え、B食倶楽部自体がひとつのビジネスモデルとなり、ショールームとしての役割を果たしている側面もある。このほど同社では、キリンウェルフーズ(株)からB食倶楽部のブログ& SNSシステムを使ったコミュニティサイトの制作を受注した。「B食倶楽部のブログサイトを見ていただいたら、これを応用して食事日記を始めて、トラックバックを使って管理栄養士によるコメントを付けるコミュニティサイトを作りましょうと、とんとん拍子で決まりました」(古瀬氏)。4月12日に、「リエータカフェ」(http://www.lieta-cafe.com/)としてオープンする。今後、こうした事業も増えていく見通しだ。
 将来的には、フランスのレストランガイドブック「ミシュラン」のように、B食倶楽部を見た人たちの行動促進につながる評価基準を設ける意向だ。
 B食倶楽部は、利用者のインセンティブを高めることで、ますますコミュニティとしての基盤を強めていくことだろう。

メイプル

B食倶楽部は、「おいしくて、幸せな時間の共有」をキャッチフレーズに、食文化に特化したブログコミュニティサイトである


月刊『アイ・エム・プレス』2005年5月号の記事